文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

ベテラン竹田の投入で序盤の悪い流れを断ち切り、反撃へ

横浜ビー・コルセアーズは開幕5連敗を喫したが、その後は5勝2敗と調子を上げている。開幕節で連敗したサンロッカーズ渋谷に、前節はアウェーで2連勝し、チームとブースターの士気は高まった。NBL王者にして中地区の首位を走る川崎ブレイブサンダースを相手に、チームの真価が問われる対戦を迎えた。

ところが、立ち上がりは川崎の圧力に押されて一方的な展開に。川崎のエース、ニック・ファジーカスがいつもどおり淡々と得点を重ね、さらには守備でもジェイソン・ウォッシュバーンにほとんど仕事をさせない。インサイドにボールを入れられず、川崎の守備ブロックの外でパスを回すことはできるが、3ポイントシュートを打つほどの時間と距離の余裕は与えてもらえない。そんな状況下、試合開始から6分で4-20と大差を付けられてしまう。

ここで青木勇人ヘッドコーチは竹田謙を投入。ベテランを入れてチームを落ち着かせるとともに、ボールのないところでの動きを竹田に求め、人もボールも動かす流れを作った。シュートタッチの良い川崎はその後も篠山竜青と辻直人が3ポイントシュートを沈めて得点を伸ばすが、横浜もオフェンスが回り始め、川村卓也の2本の3ポイントシュート、そしてウォッシュバーンにも初得点が生まれて盛り返し、16-28で第1クォーターを終える。

第2クォーターに入ると、セカンドメンバーに切り替えた川崎がペースダウン。横浜は外国人オン・ザ・コート「1」の状況でウォッシュバーンとジェフリー・パーマーを交互に起用したものの、川村と細谷将司は引き続き使って追い上げる。アグレッシブに動いてリズムを生み出していた竹田が、第2クォーター序盤にファウルトラブルに陥りベンチに戻ったのは誤算だったが、それでもディフェンスを引き締め、素早くフィニッシュまで持ち込む攻めで得点を重ねていく。

第1クォーターはリスクの少ないパスを回し、ショットクロックがなくなってタフショットを打たされていたが、第2クォーター以降は早い段階から仕掛けて、チャンスと見れば多少強引にでもシュートを狙った。同じタフショットでも『打たされる』のと『打つ』のでは全く違う。ファジーカスとライアン・スパングラー、川崎の外国籍選手2人は強力だが、2人同時にプレーする第1クォーターに比べれば圧力は少ない。ウォッシュバーンとパーマーに当たりが始め、試合の流れは横浜へと移っていく。

勢いに乗る横浜、土壇場で勝負強さを見せる川崎

そして、引き続き両チームとも外国人オン・ザ・コート「1」の第3クォーター、横浜の歯車がガッチリと噛み合う。ハーフタイムを挟んでトランジションのスピードをさらに上げると、受け身に回った川崎はターンオーバーを連発。ウォッシュバーンとファジーカスのマッチアップは形勢逆転、このクォーターでウォッシュバーンは8得点を奪うとともにファジーカスの得点を3に抑えた。

残り5分19秒、細谷が思い切ったドライブインから難しいレイアップを沈めて46-45とついに逆転する。すぐにファジーカスの得点で再びリードされるも、その直後にはウォッシュバーンが決めて再逆転。ここから横浜がリードする展開となり、62-56で第3クォーターを終える。川崎の失速はセカンドチームが横浜の勢いに飲み込まれたのが原因だが、オン・ザ・コート「1」の時間帯を支える曲者、ジュフ磨々道がケガで不在だったのも大きい。

こうして迎えた最終クォーター、横浜の勢いは衰えない。川崎のインサイドは再びファジーカスとスパングラーの強力タッグとなったが、ウォッシュバーンもパーマーも自信を持って挑みかかり、結果を出した。川崎のオフェンスが勢いを取り戻す中、横浜も負けじと高確率でシュートを決めて6~8点のリードを保ち続ける。

立ち上がりは圧倒的な実力差を見せられて沈黙した横浜ブースターだが、そこから踏み留まって押し返し、逆転する試合展開に大いに盛り上がる。残り5分58秒、細谷がフワリと上げたボールをウォッシュバーンがリングに叩きつけるアリウープで観客は総立ちに。3447人を集めた横浜国際プールが最も沸いた瞬間だった。

ところが、ここからが川崎の本領発揮だった。北卓也ヘッドコーチは試合後に「あの差であれば、2回か3回の攻撃で取り戻せる。相手にシュートは入れられていましたが、こちらのシュートも入っていたので静観できる」と、この状況を振り返る。逆境に立たされた時こそ、川崎は強い。

残り4分34秒、ベンチから戻った辻にすぐさま3ポイントシュートを決められると、さらにはセカンドメンバーで唯一好調で、そのままコートに残っていた藤井祐眞のこの試合15点目となるレイアップで74-73と1点差に詰め寄られる。その後、細谷がフリースロー2本を得るが、それまで5本中4本を決めていた細谷が、この勝負どころで2本とも落としてしまう。その直後に辻に再び3ポイントシュートを決められ、74-76と逆転を許した。

辻の3ポイントシュート・ショーの次はファジーカスだった。ウォッシュバーンの激しい当たりをモノともせずシュートを沈め、バスケット・カウントのワンスローも確実に決められ、76-79と3点差に。その状況で『劣勢』を『敗色濃厚』に変えてしまったのがパーマーだった。ファジーカスへのファウルの判定を巡る小競り合いの中でテクニカルファウルを宣告され、川崎のフリースローが2本から3本に。さらに川崎ボールでの再開に。残り1分20秒、1ポゼッション差の接戦で、痛すぎるミスだった。

スリリングな試合に北ヘッドコーチ「よく逆転してくれた」

それでも横浜はあきらめず、ミスを犯したパーマーのスティールから追いかける。残り31秒、オフェンスリバウンドをチームで必死に拾って作ったセカンドチャンス、川村が3ポイントシュートをねじ込み、81-83と再び1ポゼッション差に持ち込む。しかし、反撃もここまで。残り4秒で最後の攻撃機会を得るも、ブザーとともにパーマーが放った3ポイントシュートが外れて試合終了。最終スコア81-83、横浜にとっては悔しい悔しい敗戦となった。

横浜の青木ヘッドコーチは「出だしでイニシアチブを取られたが、そこから自分たちのリズムを取り戻し、後半には優位に立てる時間帯もあった。自分たちの強みを出せたこと、ディフェンスもしっかり守り、リバウンドを川崎と競ることができたことは評価できる」と、善戦に光明を見いだそうとした。

ウォッシュバーンがゲームハイの26得点を記録するも、川崎は25得点のファジーカスと20得点の辻が重要な局面で勝負強さを発揮し、一度は追い込まれながらもしっかりと勝利をモノにした。青木ヘッドコーチは「勝負どころでスコアラーの2人をマークしたのですが、警戒した中でその上を行かれた」と振り返る。

一方、劇的な逆転勝利を収めた川崎の北ヘッドコーチは「たくさんのお客さんの前で、見る人にとってはスリリングな試合になった。ヘッドコーチとしては『終盤よく逆転してくれた』と思います」と安堵のコメント。それでも、前述のとおりビハインドを背負う展開になっても「静観できる」と余裕があったことを強調する。「横浜さんは40分近く出ている選手も何人かいたので、このままではいかないだろうと」。ヒヤリとしたのはファジーカスが4つ目の個人ファウルを犯した第4クォーター残り3分26秒、71-74と負けていた時点だけとのこと。「この時だけはタイムアウトを取ろうか考えました」と振り返る北ヘッドコーチだが、結局タイムアウトを使ったのは逆転後の残り31秒、最後のポゼッションでどう攻めるかの確認だけだった。

40分フル出場の川村に続き、39分11秒のプレータイムで、誰よりも速く、たくさん走った細谷は、「出だしの部分でアドバンテージを取られてしまったのは改善しなくてはいけない。改善策は試合の中で分かってきたので、そこは明日また違った展開にしたいです」と、第2戦に向け気持ちを入れ直した。

第2戦は今日、同じく横浜国際プールで14時ティップオフとなる。