山本麻衣

昨シーズンの控え待遇から今シーズンは持ち前の得点力でオフェンスの軸に

Wリーグのファイナル第2戦が4月18日に行われトヨタ自動車アンテロープスが87-71で快勝。前日の第1戦に続く連勝で、昨シーズンに続いてのリーグチャンピオンとなった。

司令塔の山本麻衣は、第1戦で第4クォーター終盤に2本のビッグショットを沈めるなど15得点7アシスト2スティールの活躍で74-69での逆転勝利に導いた。第2戦でも第2クォーターにリードを2桁に広げて前半を迎える大きな助けとなる3ポイントシュートを2本決めると、富士通に流れがいきかけた第3クォーターに8得点を挙げて試合の主導権を引き戻すのに大きく寄与するなど要所で得点をマーク。最終的に19得点3アシスト1スティールを挙げ、プレーオフMVPを受賞する活躍ぶりだった。

振り返れば昨シーズンの山本は、現在ドイツでプレーする安間志織の控え待遇で昨年のファイナルでは第1戦が10分20秒の出場で2得点2アシスト、第2戦は7分49秒の出場で5得点に留まっていた。しかし、今シーズンは名実ともにトヨタ自動車の中心選手の1人となった。

「本当に2連覇できたことをうれしく思います。去年とはメンバーが違う中、最後にはみんなでチームとなって勝ち切れたことがうれしいです」。こう優勝の喜びを語った山本だが、1年前とは立場が大きく変わった中で勝ち取った優勝だけに、より自身が貢献できた思いも強い。

「昨シーズンはベンチからで、スタートの安間さんの負担を軽減できたらと思っていました。今シーズンはスタートで引っ張ってできたので実感はすごくあります」

山本麻衣

練習の成果を試せるチャンスを得たことで大きくステップアップ

元々、山本は1対1からの打開力に優れる非凡な得点力が魅力で、この持ち味は東京オリンピックを筆頭にした3×3の国際大会でも存分に発揮されていた。その上で今シーズンは、司令塔としてゲームメークにも磨きをかけた。今回のファイナル2試合でも、自ら仕掛けるだけでなくアドバンテージのあるインサイド陣に効果的にパスを供給していた。この部分こそ今シーズン、自身がさらなる成長へフォーカスしていた部分だ。

「シュートを打つことは自分の中では得意ですが、今シーズンはパスを重視して状況判断のところで成長しなければいけない。強みを忘れずに判断の中にパスを加えることも取り組んでいました。まだまだですが、試合を重ねるごとに少しは成長できたと思います」

3×3での東京オリンピック予選で出場権を勝ち取ってのオリンピック本番、そこから5人制代表に選出されてのアジアカップ、2022年ワールドカップ最終予選にWリーグと今シーズンの山本はフル稼働だった。ただ、このタフなスケジュールを乗り切ったからこそ得られたものはある。山本は言う。

「オリンピックからずっと代表活動が続いたことに加え、トヨタ自動車でもスタートでプレーさせてもらって経験をたくさんできたことで自信に繋がりました。自主練でやっていることを試せるチャンスをいろいろな場所で与えてもらえました。そこでの経験はこの一年間、自信になったところです。今後も成長しなければいけない部分はたくさんあるので、そこは今まで通りコツコツと積み上げて良い結果が出せるように頑張っていきたいです」

山本にとって大きな飛躍を遂げた2021−22シーズンだが、これから束の間の休息を挟み、すぐに今秋に行われるワールドカップのメンバー入りに向けた戦いが始まる。そこでの競争に勝ち抜き、大会出場を果たして得られた経験は彼女のさらなる成長に繋がっていく。これからがより楽しみとなる山本のプレーオフでの躍動ぶりだった。