田口成浩

文=鈴木健一郎 写真=バスケット・カウント編集部、B.LEAGUE

田口成浩はこの夏、7シーズン在籍した秋田ノーザンハピネッツを離れて千葉ジェッツへと移籍した。新天地での開幕を翌日に控えた昨日、さぞや気合いに満ちているだろうと声を掛けると、気持ちの良い笑顔とともに「気楽です!」という答えが返って来た。秋田の中心選手でありチームの顔だった彼にとって、移籍はキャリアの大きな分岐点だ。それでも「ワクワクしかないです」と言える心境について、田口に語ってもらった。

「プレッシャーよりも楽しみという気持ちになっています」

──開幕を控えて「気楽です」と言える選手もなかなかいないと思いますが、その真意は?

気楽と言ったらおかしいですけど、ワクワクしかないです。それはやっぱり秋田から出たことが大きくて、自分のことにフォーカスして、自分の役割だけを全うするんだ、という気持ちだからです。そこはすごくシンプルですね。

──Bリーグ初年度と2年目は、そんな心境ではなかったということですよね?

全然違いますね。初年度はbjリーグとNBLが一緒になって、その感謝と楽しみと同時に、「どうなるんだろう」という思いがありました。開幕戦で栃木ブレックスに勝ったんですけど、最後は思ったような結果が出ないシーズンでしたが、やっぱり開幕時点では「bjの俺らでもやってやるぞ!」という意気込みが強かったです。

2年目はB2に降格した後で、楽しい気持ちはありませんでした。1年でB1に上げると宣言して、自分で自分にプレッシャーを掛けていました。キャプテンとして、地元選手として、背負うものが大きかったからこそ不安もありました。絶対にプレーオフに行き、勝たなきゃいけないと、開幕の時点でそればかり考えていました。

──それが今は全く異なる心境で、ワクワクしながら開幕を待っているわけですね。

そうです。チームを背負う、地元を背負うことを2年間やってきて、自分だけじゃ勝てない経験をしてきました。キャプテンとしてチームを一つにまとめなきゃいけないと、自分より仲間のこと、後輩たちをどう引っ張るかを考えていて。それが今は自分が後輩の立場というか、まとめられる側に回っています。考えなきゃいけないこと、やらなければいけないことはすごく明確なので、プレッシャーよりも楽しみという気持ちになっています。

田口成浩

「躊躇せず打つことにフォーカスしています」

──アーリーカップや海外遠征も含め、プレシーズンで良い準備はできましたか?

プレシーズンは富樫(勇樹)がいない状態でやってきましたが、収穫はちゃんとありましたし、もちろん課題もたくさん出ています。そこはチームの感覚をつかむ意味で充実したものだったと思います。やっぱり最初は不安なことやうまく行かないこともありましたけど、今は「よし、大丈夫だ」という気持ちに変わっています。

──始動の時点では千葉のスタイルの理解も浅かったと思いますが、その理解も深まり、どんな役割を求められるかも明確になったと思います。田口選手に求められている役割は何ですか?

オフェンスではシュートを打つことです。基本的にはフィニッシュするためのパスをチームが自分に回してくれると思うので、その時に躊躇せず打つことにフォーカスしています。

相手の状況を見てドライブだったりプルアップも狙っていきますが、基本的には3ポイントシュートが期待されていると思っています。そこで良い状況判断をしていくことはもちろんですけど、チームは3ポイントシュートを打たせるためのプレーをすると思うので。

昨シーズンまではピック&ロールなどいろんなことを経験させてもらいました。それをやるシチュエーションも出てくるとは思います。ただ今シーズン、自分の中で心を整える言葉は「欲張らない」なんです。このチームにはスペシャリストがたくさんいるので、そこに入って自分の良さを出して、目立って、チームに貢献するには、やっぱり自分の得意なプレーをすべきだと思っています。「シュートが入っているから違うプレーも」と欲張るのではなく、常に自分の仕事をしていきたいです。

田口成浩

「やりたいのは『存在感を見せること』です」

──なるほど。それではディフェンス面ではどんなプレーを見せていきたいですか?

出たからにはプレータイムに関係なくハッスルして、少しでも相手を苦しめるディフェンスをするつもりです。「田口が出たら流れが変わったな」とか「ここを田口が繋いだな」と思ってもらえるプレーですね。そこは数字に表れないですが、それをやるのが自分の役割なので。常に全力で、気持ちを込めてやれば、見ている方にも伝わると思っています。スカウティングをして自分も相手を研究して特徴を掴んで、マッチアップしている相手には絶対にやらせないつもりです。

──秋田ではチームリーダーで、シューティングガードでは一番手の選手でしたが、千葉に来たらそうはいきません。プレータイムを勝ち取るチーム内競争での手応えはいかがですか?

そこは結果次第で、まだまだ読めないです。調子の良し悪しもあるし、相手との組み合わせもあると思います。石井(講祐)さんや原(修太)と比べられることはあるでしょうが、それは見ている人たちが思うことで、自分は自分のやるべきことを常にやって、あとは結果がどうなるか。チーム内競争はありますけど、同じチームですし、求めているのはチームが勝つことですから、お互いにリスペクトしながらやっています。千葉はスペシャリストの集団なので、自分もスペシャルな部分を出したいと思います。

そんな中でも違いを見せる意味でやりたいのは「存在感を見せること」ですね。同じ3ポイントシュートでも同じディフェンスでも、「田口、やったな!」って、会場を一つにするムードを作るようなシュートであったりルーズボールだったりリバウンドだったり。数字では同じ1であっても、大きな1になるプレーをしたいです。そこは自信を持っている部分なので、誰かと比べるんじゃなく、自分らしいプレーでチームを盛り上げていきたいです。

──いよいよ開幕、しかも1試合だけ先出しの開幕戦で注目されます。準備はバッチリですか?

もちろんです。絶好調ですよ。って、僕はいつ聞かれても「絶好調」って答えますけど(笑)。

──篠山竜青選手はこの開幕戦について「おいさーだけは聞きたくない」と話していました。

ホントですか(笑)。ウチが勝てば、もしかしたらあるかもしれないです。シーズン一発目の試合で「おいさー」やりたいですね。頑張ります。