「気持ちを込めたプレーをするのは純粋に楽しかったです」
琉球ゴールデンキングスは1月19日に行われた天皇杯のクォーターファイナルで信州ブレイブウォリアーズに91-67で勝利した。この試合、信州は主力5選手が沖縄遠征に帯同しなかったが、一方の琉球も3名が欠場。さらに新型コロナウィルスへの陽性者が出たことで1月3日を最後に実戦から遠ざかっていた。また、隔離生活が解除されチーム練習ができたのは数回とゲーム勘、コンディションに大きな不安を抱えての試合だった。
だからこそ、桶谷大ヘッドコーチは「試合勘がないので3ポイントシュートが入らない。トランジションで走れない想定をしていました」と本来のバスケットボールができない状況を予想して試合に臨んでいた。
だが、この予想は良い意味で裏切られる。琉球は立ち上がりから効果的に3ポイントシュートを決め、ディフェンスリバウンドからのトランジションを繰り出すことで試合開始から10−2と先行。これで流れをつかむと、第1クォーターで2桁のリードを奪いそのまま自分たちのペースで試合を進めて快勝した。
「3ポイントシュートはインサイドアウトでパスが出てのもので、シューター陣も撃ちやすい。選手たちはキングスのバスケットボールを思い出しながら、自己犠牲でやってくれたと思います」
指揮官はこう選手たちを称えた。そして大事な出だしの良い流れをチームにもたらしたのが岸本隆一で、第1クォーターに3ポイントシュート2本成功を含む7得点をマーク。試合全体でも12得点3アシスト2スティールと、攻守でしっかり役割を果たしている。
久しぶりの実戦が、新型コロナウィルスの感染防止対策で無観客での開催。この状況は岸本にとっても様々な思いが去来するものだった。「間隔が空いていたので早く試合をしたいと思っていましたが、会場に観客の皆さんがいないことでモチベーションがなかなか上がりきらない。複雑な気持ちで試合に入ったと思います。それでもバスケットの試合で気持ちを込めたプレーをするのは久しぶりの感覚で純粋に楽しかったです」
「離れていても同じ気持ちを共有できることを信じて」
ただ、このいつもと違う中でも琉球は、岸本の3ポイントシュート6本中3本成功を含め、チーム全体で外角シュートが確率良く入っていた。「シュートは水物と言われますし、不安の方が大きかったです。今日はあまり自分自身のシュートタッチには期待していなかったので序盤、今村(佳太)と共に連続で入っていた時は、個人的にラッキーという感覚でした」
こう率直な思いを明かした岸本は、次の覚悟を持って試合に臨んでいたと続ける。「今日の試合は、練習ができていない、コンディションが整っていないと言い訳がいくらでもできる状況だったと思います。だからこそ、一人ひとりが責任感を持って、プレーする雰囲気を作りたい思いでした」
琉球にとって天皇杯のベスト4進出はチーム初となるが、「初めての準決勝進出はうれしいですが、まだ実感はないです」と岸本は語り、何よりも試合を行えたことへの安堵感が先に来ていた。「今日という日を迎えられるかというところから2022年が始まりました。まずは試合が行われたことがうれしく、気分が上がる出来事でした」
また、致し方ないとはいえ無観客ゲームは「試合が終わって勝った後、一緒になって喜んでくれる方が目の前にいないのは何のためにやっているのかという感覚にもなります」と苦しい気持ちを吐露する。しかし、だからこそファンとの絆を強く意識してコートに立つ。「離れていても同じ気持ちを共有できることを信じて、今の状況で僕たちのベストを尽くしていきたいと思っています」
今週末の島根スサノオマジック戦は中止となっている琉球だが、来週は26日にアウェーで信州戦、さらに29日と30日もアウェーでの秋田ノーザンハピネッツ戦が控えている。このタフな日程を乗り切るためには、チームに勢いを与える岸本の活躍が鍵となってくるはずだ。