デビン・ブッカー

「サンズから出してやらないといけない」とまで発言

ウォリアーズのドレイモンド・グリーンが『Inside the NBA』に出演。『バブル』で再開となったNBAについて現役プレーヤーの視点でコメントする中で絶好調のサンズに触れ、エースのデビン・ブッカーを絶賛した。

「ブッカーのプレー、サンズの試合を見るのは素晴らしいね。ウチに連れていきたいぐらいだよ」とグリーンは言う。「今の状況は彼のキャリアにとって良いものではない。高いレベルでバスケットボールをするチームで、優勝のためにプレーすべきだ。彼はそれに値する選手だし、サンズから出してやらないといけない」

長らく低迷が続くサンズにとって、この10日間は過去数年で最も素晴らしい時期となっている。チームはシーズン再開から4連勝、ブッカーはこの4試合で平均28得点を記録。グリーンが称賛するのも当然だが、「サンズから出してやらないといけない」とまで言ってしまっては、サンズの関係者やファンの怒りを買うのは明らかだ。

グリーンはこれまでも歯に衣着せぬ発言を繰り返してきた。自分の考えを話すことで敵を作るのを恐れないタイプだが、今回はタンパリング(不正干渉)の恐れがある。昨年オフにはクリッパーズのヘッドコーチ、ドック・リバースが「これまでに見た選手の中で、レナードがジョーダンに最も似ている」と話しただけでリーグからタンパリングと見なされた。ラプターズに初優勝をもたらしたカワイ・レナードにクリッパーズが興味を持っていたのは明らかで、獲得に動く意図を直接的に語ったわけではないが、クリッパーズには5万ドル(約540万円)の罰金処分が科されている。

グリーンがこれを知らないはずはない。タンパリングになると司会者にとがめられたグリーンは「かもね」と笑い飛ばしている。2016年の西カンファレンス決勝、サンダーと対戦したウォリアーズは大苦戦の末に『GAME7』に競り勝ってファイナル進出を決めた。この試合の直後、グリーンはサンダーのエースだったケビン・デュラントに電話をかけたと報じられている。その数週間後にデュラントはウォリアーズとの契約を決めた。

ウォリアーズは昨シーズンまで5年続けてNBAファイナルに進出したが、今シーズンは黄金期を支えたケビン・デュラントやアンドレ・イグダーラ、ショーン・リビングストンが退団し、ステフ・カリーとクレイ・トンプソンを含む主力に故障者が相次ぎ、15勝50敗とリーグ最下位に低迷。『バブル』のシーズン再開から外された。

『王朝』の再建に向けて今オフの編成が重要になることは間違いない。勝ち続ける間、カリーもクレイもグリーンも年齢を重ね、チームは新たなエネルギーをもたらす選手を必要としている。ブッカーは喉から手が出るほど欲しい戦力だろう。

サンズはブッカーと長期契約を結んでいるが、エース級の移籍が当たり前になった今のNBAでは、契約で選手を縛る力は弱い。どれだけ契約を残していても、選手が「出たい」と明言すれば出さざるを得ない状況へと追い込まれてしまう。

ブッカーは、自分をエースとして認めてくれるサンズが今のリーグで最も好調なチームへと成長したことに満足しているはずで、グリーンの称賛も素直に受け止めて感謝するだろう。ただ、サンズは別だ。直接的にブッカーの退団には繋がらないにしても、グリーンが投げ入れた小石が波紋を起こし、今の好調なチームにネガティブな影響を及ぼすと考えれば、不快でしかないはずだ。