文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

ネイミックとバチンスキー、対照的なスタッツと貢献度

アルバルク東京は前節、トロイ・ギレンウォーターの退場処分が決定打となってシーホース三河との接戦を落とし、連勝が7でストップ。さらにはコートにつばを吐いたとしてリーグから4試合の出場停止処分を受けたギレンウォーターを契約解除とした。予想外の激震に見舞われた状況で、ホームの代々木第二体育館に名古屋ダイヤモンドドルフィンズを迎えた。

そんなA東京を救ったのは、チームに残る2人の外国籍選手だった。まずは立ち上がり、ディアンテ・ギャレットが相手の注意を引き付けてアウトサイドへ展開。これを受けてフリーになった正中岳城が2本の3ポイントシュートを立て続けに決め、さらには竹内譲次のアシストを受け開始4分弱で3本目の3ポイントシュートを決めて流れに乗る。

ディフェンスでも高い位置からプレッシャーをかけて速攻の機会を与えない。名古屋Dも運動量や激しさでは負けていなかったが、竹内、田中大貴、ザック・バランスキーとタフショットもねじ込む決定力の差が出た。

外国籍選手オン・ザ・コートがA東京「1」、名古屋D「2」となった第2クォーター、ジェロウム・ティルマンに加え218cmと長身のジョーダン・バチンスキーを同時にコートに送り込む名古屋Dに高さのミスマッチを突かれてリードを失うも、ハーフタイムに伊藤拓摩ヘッドコーチから檄を飛ばされたというA東京は、後半になると攻守両面でよりアグレッシブにプレーし、流れを引き戻す。

ギャレットは次々とドライブで仕掛けるが、そこからスマートにプレーしすぎて自らの得点が2と伸びなかった前半とは違い、強引なまでのリングへのアタックで得点を重ねていく。第3クォーターはフィールドゴール6本中5本、フリースローも2本いずれも決めて12得点、第4クォーターも9本中5本を決めて10得点をマーク。チームとして攻め手に困っても、預ければ得点にしてくれるギャレットの働きでリズムが生まれ、リードを広げていった。

チームプレーの面でもA東京が一段上だった。その差は前節まで『第3の男』だったアンドリュー・ネイミックとバチンスキーの出来に表れた。名古屋Dも前節で故障したジャスティン・バーレルを欠く状況。その代役として28分と今季最長のプレータイムを得たバチンスキーの13得点11リバウンドに対し、ネイミックは16分半の出場で5得点9リバウンドとスタッツでは見劣りがする。3つのダンクに加え、田中大貴のレイアップを背後から叩き落としたバチンスキーのような派手さもなかった。

しかしネイミックは、守備では竹内やバランスキー、攻撃ではギャレットを的確にサポートしつつチームタスクを遂行した。バチンスキーはスタッツ上ではターンオーバー2だが、インサイドに早いパスを入れられるとファンブルを連発。チャンスメークにはほとんど貢献できなかった。

名古屋Dの敗因はギャレットを止められなかったこと

それでも石崎巧がペースを立て直し、ティルマンと張本天傑の試合を通じての奮闘もあり、名古屋Dも終盤まで競り続ける。残り1分を切り、ティルマンが5本目の3ポイントシュートを決めて84-89と5点差。ここでファウルゲームを選択せず、3ポイントシュートを警戒するA東京の守備の間隙を縫って切り込んだ石崎の2点シュートで86-89と1ポゼッションに詰め寄った。

さらには張本がしつこい守備でギャレットのシュートをついに落とさせ、リバウンドをバランスキーに抑えられるもすかさずスティールに成功……と見えたが非情にも張本のファウルという判定。抗議するもジャッジは覆らずに万事休す。チーム一丸で戦ったA東京が90-86で勝ち切った。

敗れた名古屋Dの指揮官レジー・ゲーリーは最後のジャッジを「残念だった」と悔やむも、「エナジーをたくさん出し、良い姿勢で臨んだ」とチームのパフォーマンス自体には一定の評価を与えた。敗因はギャレットを止められなかったこと。「5人でも止められなかった。全体的にうまいし、NBAのような『長さ』があるので、彼がボールを持っている時に1対1で止めるのは難しい」と完敗を認めている。

そのギャレットは「第1クォーターはオープンマンがいたのでどんどんさばいて、逆に第4クォーターになれば1対1の状況が多かったので自分でしっかりフィニッシュした」と自らのプレーを振り返るとともに、難しい状況のチームを声援で支えてくれた2449人の観客に感謝の気持ちを述べた。

敗れた名古屋Dだが、こちらもケガをするまで全試合スタメン出場を続けてきたバーレルを欠きながらも、最後まで競った戦いができた。笹山貴哉はインサイドの起点が弱くなったことは認めながらも、外の選手がうまく切り崩して形を作れたことは収穫だと語る。

問題はギャレット対策。5日の第2戦に向けて「ギャレットが来るとなると構えてしまって、相手のリズムでやらせてしまうことになるので、こちらから仕掛けていってギャレットに先手を取らせない、プレッシャーをかけて相手のリズムを崩すという守り方をします」と笹山は言う。

A東京と名古屋D、ともに大黒柱のセンターを失っての第2戦は14時10分にティップオフ。