
『栗原三佳』の検索結果
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妻のユニフォームでダンクコンテストに挑戦した藤髙宗一郎「めっちゃ楽しかった」栗原三佳のユニフォーム「マジのやつです」 週末に行われたBリーグオールスターのダンクコンテスト。ここで爪痕を残したのが大阪エヴェッサの藤髙宗一郎だ。リーグ屈指のアスレティック能力を武器に、リーグ戦でもたびたびダンクを決める藤髙だが、『魅せるダンク』の採点制となるダンクコンテストには不利を承知での出場。ここで「僕は大阪人やから何かしないといけない使命感があったので」と『仕込み』を行った。 ダンクコンテストでライバルとなったのはマーキース・カミングス(名古屋D)とギャビン・エドワーズ(千葉)。彼らに勝つために、藤髙は登場するなり手にした包みから『忖度まんじゅう』を取り出して大河正明チェアマンを始めとする審査員に配った。『忖度まんじゅう』はエヴェッサのパートナー企業が作っており、新しい大阪土産として猛烈プッシュ中。オールスターでPR効果は満点だったに違いない。 藤髙の仕込みは2段構えだった。ダンクに入るかと思いきや、おもむろに大阪のユニフォームを脱ぐと、中に着ていたのは『トヨタの24番』。遠目からだとデザインが似ているため「田中大貴?」と観客の頭には「?」が浮かんだが、藤髙が振り返ってアピールする背中のネームは「KURIHARA」。一昨年に結婚した栗原三佳の、トヨタ自動車アンテロープスのものだ。 藤髙は「これはマジの奥さんのやつです」と、レプリカではなく本物であることを明かす。確かにサイズは合っておらずピチピチだ。「ダンクコンテストでユニフォームを着たいと相談して、向こうのチームのフロントに確認を取ってもらって。そしたら『是非使ってください』と言っていただいたので。上だけでなく下のズボンまで貸してもらえました(笑)」 女子日本代表のシューターとしてリオ五輪で爽快な活躍を見せた栗原は、トヨタ自動車では旧姓で、日本代表では藤髙の登録名でプレーしている。彼女が所属するトヨタ自動車アンテロープスはノリの良さが特徴で、公式戦でもベンチメンバーは会場を盛り上げる。Wリーグのオールスターでもトヨタ自動車のメンバーが様々な『仕込み』に全力投球だった。 藤髙も「Wリーグのオールスターで『U.S.A』を踊ったりしていましたよね。ああいうのを見て、僕も何か準備しなきゃと思いました」と、妻のチームにインスパイアされていた。 #Bリーグオールスター惜しくも決勝進出ならずでしたが迫力あるダンクを披露しました💪#大阪エヴェッサ #藤髙宗一郎 pic.twitter.com/2sqlh6ON9B— 大阪エヴェッサ (@osakaevessa) 2019年1月19日 「つかみはOK」からリバースダンクを決めた藤髙に対し、審査員からは「10」の評価が並ぶ。ただし、こちらも場の流れを理解していた森矢カンナさんが贈賄に怒りの「6」評価で敗退。それでも藤髙のサービス精神はダンクコンテストを大いに盛り上げた。 「素直にめっちゃ楽しかったです。忖度まんじゅうも笑ってもらえましたし。ダンク自体はそんなにレベルの高いものではなかったので、今回は60点ぐらいの出来ですね。また機会があったらチャンレンジしたいし、次は優勝したいです」と藤髙は言う。 藤髙にはダンクコンテストの常連として、仕込みもダンクも年々レベルアップさせて外国籍選手と渡り合い、上回る存在になってもらいたいものだ。今回のダンクコンテストではギャビン・エドワーズが、チームメートの富樫勇樹のアシストを受けて優勝のダンクを決めた。「来年は夫婦での出場を」と願うファンはきっと大いに違いない。 Bリーグオールスターのダンクコンテスト、「マジのやつです」という奥様のジャージー(ピッチピチ)でぶちかました藤髙選手。忖度まんじゅう不発で優勝を逃しましたが、来年はソウさんのアシストでダンク決めて優勝しましょう!https://t.co/2UHoIXR5nW pic.twitter.com/LxjhIZniSZ— バスケット・カウント (@basket_count) 2019年1月20日2019/01/21Bリーグ&国内
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皇后杯準決勝、盤石の強さを見せたJX-ENEOSがトヨタを撃破し決勝へ駒を進める大崎と渡嘉敷、インサイドの優位が目立ったJX-ENEOS皇后杯の準決勝第1試合、JX-ENEOSサンフラワーズとトヨタ自動車アンテロープスが対戦した。Wリーグでは9連覇中の『女王』JX-ENEOSに対し、その長い連勝を止めるなど『対抗馬』として競っているトヨタ。トーナメントでの『一発勝負』は、フタを開けてみればJX-ENEOSの一方的な展開となった。立ち上がりから1分半で、JX-ENEOSは大崎佑圭のオフェンスリバウンドからの得点、渡嘉敷来夢のバスケット・カウントで5-0とリード。しかもこの時点でトヨタはセンターの森ムチャが個人ファウル2つ。JX-ENEOSは大﨑と渡嘉敷のインサイドの強みを最大限に生かして得点を重ね、トヨタの得点を大神雄子のミドルジャンパー1本のみに抑え、開始5分で15-2と突き放す。トヨタはインサイドを打開して流れを呼び込むべく強引なドライブで仕掛けるも、これがオフェンスファウル連発という結果に。宮澤夕貴が3ポイントシュートを決め、その直後にスティールからのワンマン速攻も決める連続得点で24-4と20点差を付けた。第1クォーターの終盤からトヨタはセカンドユニットが踏ん張り、安間志織のゲームメークでようやく得点が動き出すも、JX-ENEOSは崩れない。37-23で迎えた後半、大神が強引なドライブを仕掛けバスケット・カウントの3点プレーをもぎ取り、続いてはリングにアタックすると見せかけてのプルアップジャンプシュートで得点してチームを引っ張る。第3クォーター残り3分45秒、三好南穂の3ポイントシュートが決まったところで39-49と10点差に。アクシデントにも動じず、トヨタに何もさせない完勝劇このタイミングでJX-ENEOSは司令塔の吉田亜沙美をケガで欠いていたが、アクシデントにも動じなかった。宮崎早織がポイントカードの代役をきっちりと務め、渡嘉敷との連携からハイポストに上がっての大﨑のミドルシュート、ベースライン沿いへのドライブからねじ込む宮澤のレイアップが効果的に決まって、第3クォーターを終えて61-43と再び突き放す。最終クォーター、トヨタは栗原三佳を入れて3ポイントシュート攻勢で挽回を図る。しかしJX-ENEOSは20点前後のリードを保ちながらも大﨑が「トヨタには3ポイントが決まり出したら10点20点はすぐ取り戻すチームなので、全く油断しませんでした。入るシュートもありましたが、私たちが打たせていた部分もあります」と振り返ったように、緩みは全く見せない。逆にタフショットを打たせてはリバウンドから速攻に転じてリードを広げ、78-52で完勝した。9得点17リバウンド、インサイドの柱として存在感を見せた渡嘉敷来夢は言う。「あと40分なのでしっかりと皇后杯に向けてやってきたことを全部出し切って勝ちにいきたいと思います」皇后杯決勝は明日、11時ティップオフとなる。2018/01/06Bリーグ&国内
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アジアを制した女子日本代表を指揮するトム・ホーバス、最終的な目標に「オリンピックの金メダル」を設定「チームはスターティングメンバーだけじゃない」9月23日、アジアカップ『優勝祝賀会』が行われ、3連覇の偉業を成し遂げた女子日本代表が集結した。ヘッドコーチを務めるトム・ホーバスは選手たちと再会し、「2カ月も経ったけど、まだ喜びがある。みんなの顔を見て、良いチームだなって」と、感慨深げな表情を見せた。今回のアジアカップではWNBAに参戦中の渡嘉敷来夢が招集から外れ、大会期間中にキャプテンの吉田亜沙美がケガをするなど、フルメンバーで試合に臨むことができなかった。だが、その危機を若手がチャンスとして受け止め、それぞれの役割をこなすことでリオ五輪のチームからさらにステップアップして見せた。「今回は渡嘉敷も出てない、吉田もケガ、栗原(三佳)もいなかった。ウチの若い選手にはすごく良い経験になって、優勝してから自信を手にしたと思う。だからこれからはもっともっと強いチームになる」と、トムコーチもこれからの伸びしろに期待を寄せる。トムコーチはアジアカップの激闘を振り返るにあたり、「準決勝は藤岡(麻菜美)、決勝は水島(沙紀)」と活躍した選手の名前を挙げたが、『チーム』を強調する姿勢はブレない。「いつも言うけど、チームはスターティングメンバーだけじゃない。そこは毎日練習中から言っているし、今大会は全員を使った。ベンチメンバーもみんな良い仕事をした」『惜しかった』で終わるのと、『勝ち切る』のでは、その試合から得ることができる経験値は違ってくる。そういう意味で接戦をモノにしてアジアの頂点まで勝ち進んだ今回の経験は大きな財産となる。「準決勝もギリギリ、決勝戦も1点差のゲーム。こういう経験は必要。ワールドカップはそういう自信を持って行ける。今回の経験は大きい」「ワールドカップでメダルを取り、オリンピックで金メダル」次の目標は来年8月に開催されるワールドカップ。トムコーチは「メダルの色は関係ない。とりあえずメダルを取りたい」と世界の3強に割って入るつもりだ。ここでメダルの色にこだわらないのは、その先にある2020年の東京オリンピックで金メダルを見据えているからだ。「今回はアジアカップで優勝した。ワールドカップでメダルを取ったら、次のステップはオリンピックの金メダル。まだやったことがない高い目標を達成したい。難しいと思うけどできると私は信じてる。選手たちも信じてると思う。良い準備をしたい」以前に語っていたのは「オリンピックでメダルを取りたい」であり、『金』とは公言していなかった。だが結果を残すこのチームに手応えを感じ、目標はさらに明確になった。そして、『思考は現実化する』という理論で選手を鼓舞している。「もしオリンピックのメダルの色は関係ないって言ったら中途半端になる。金メダルが目標となれば、選手たちもスタッフも毎日うまくならないと絶対に達成できない。選手たちも金メダルを取りたいと信じてなかったらできない」Wリーグはワールドカップを見据えた代表選考レースにWリーグの新シーズンが間もなく開幕する。その注目ポイントの一つがワールドカップに向けた代表メンバー争いだ。経験のあるリオ組、勢いのあるアジアカップ組、そして新たに代表入りや代表復帰を目指すメンバーが多数、この競争は過去に類を見ないレベルの高さだ。トムコーチは代表候補はまだ決まっていないとしながらも、若手の育成が大事だと説いた。「代表に入らなくても練習に参加させたり、若い選手にはチャンスをあげないと。特に高田(真希)、渡嘉敷、大崎(佑圭)の下の若いビッグマンが大事」競争はインサイドプレーヤーに限らない。リオで活躍しながらアジアカップに招集されなかった栗原や本川(紗奈生)は代表復帰を目指しているし、若い世代の台頭は今回のアジアカップ参加メンバーに限らない。しかし、この状況はヘッドコーチにとってはありがたい話。「競争が必要だし、高いレベルが何人もいるのは良い問題。最後は難しいけど、それが私の仕事」とトムコーチは代表争いの激化を歓迎している。オリンピックを見据え、来年のワールドカップへ向けた準備がこれから始まる。リーグ戦の開幕は10月7日。国内の争いで総合力が底上げされ、その結果が代表に還元されるはずだ。2017/09/25日本代表
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3連覇を目指すアジアカップが開幕。日本、オーストラリア、中国の3強激突か!? アジアのライバルたちを探る3連覇を目指すとともに若手の底上げを目指す大会にトム・ホーバスヘッドコーチの下でアジア3連覇を目指す『アジアカップ』がインドのバンガロールにて開幕した。この大会は2年に一度開催される『アジア選手権』が名称変更したもの。今大会からは男子同様にオセアニアのオーストラリアとニュージーランドを加えて争われることになる。これまではアジアの上位3チームにワールドカップ(前回まで世界選手権)の切符が与えられていたが、オセアニア勢が加わった今大会からは、アジア4位までがワールドカップに出場できる仕組みとなる。日本は2013年大会から、吉田亜沙美、大﨑佑圭、髙田真希、渡嘉敷来夢らが安定した働きを披露し、走力とディフェンス力で頭一つ抜け出た状態でアジア2連覇を達成している。今大会も優勝候補であることは間違いない。ただ、これまでの2大会と違う点はエースの渡嘉敷来夢が不在なことだ。前回はオリンピック予選を兼ねていたことからも、WNBAを中抜けしてアジアの戦いに参戦したが、今大会はWNBAの活動に専念することとなった。また、リオ五輪で活躍したシューターの栗原三佳は指を骨折、2015年からスタメンを務める本川紗奈生も足に故障を抱えた状態で今大会は不選出。昨年、リオで躍進したスタメンからは3人が外れることとなった。5~6月あたりまではホーバスHCも「このチームは若い。海外遠征に行くたびに、移動の後の試合で力の出し方が分からずに内容が悪い」、「若い選手にトラベリングやミスが多い」など、若手の経験不足を指摘していた。しかし、渡嘉敷やケガ人が参戦できない状況となって、指揮官は腹をくくったのである。「渡嘉敷が不在でも、吉田や大﨑、髙田がいることで安定感はある。それよりも、東京五輪に向けては若いインサイドを育てていかなくてはならないし、競争させなければならない」との覚悟で、河村美幸、赤穂さくらといった若手のインサイドを抜擢。また栗原と本川に変わるウイングの選手として水島沙紀と馬瓜エブリンを、ポイントガード吉田の後釜として藤岡麻菜美を選出。計5名の新しい顔ぶれが日本代表として、アジアの舞台を踏むことになった。今大会は渡嘉敷の穴を埋める大会ではない。チャレンジの大会なのである。リオ五輪が終了し、来年にワールドカップを迎え、そして2020年に向かっていくことを考えれば、今年こそが新しいことをトライするに適した年なのである。渡嘉敷不在の中でアジア3連覇を狙い、若手育成と選手層の底上げを図る大会が幕を開けた。日本、中国、オーストラリアの『3強』という勢力図今大会は、他国にしても日本と同様の傾向にある。若手育成とチーム再構築に充てているのがFIBAランキング4位の強豪オーストラリアだ。昨年、リオ五輪で日本と大接戦を演じたのは記憶に新しいが、そのメンバーから今大会に参戦しているのは4名しかいない。長年オーストラリアの中心として活躍したペニー・テイラーが引退。205cmのエリザベス・キャンページ、主力のエリン・フィリップスは今大会不参加であり、まさに試行錯誤のメンバーで臨んでいる。それでも、ローラ・ホッジス、マリアンナ・トロといった主力を擁し、37歳のベリンダ・スネルを再招集するなど、手強いメンバーは健在。2年前のU-19ワールドカップで銅メダルを獲得したときのエース、20歳のアランナ・スミスの台頭もあり、高さとしぶとさではやはり厄介なチームだ。また中国はここ数年若返りを進めながら着実に力をつけてきた。今回は主力が健在ながらも、さらに若返らせる人選をぶつけてきた。昨年のリオ五輪出場メンバー7名に、ロンドン五輪に出場した27歳のフォワードが復活。計8名の五輪経験者を揃えたばかりか、昨年U-18アジア選手権の優勝に大きく貢献した18歳、201cmのリー・ユェルーが加わり、選手層が厚くなっている。どこの国もチーム構築期である今大会。選手層と経験値から言っても、オーストラリアと中国、そして日本の3カ国が優勝候補と見ていいだろう。日本はBグループで1、2位になることで、準々決勝ではAグループ3、4位と戦うことができ、さらにはグループ1位になることで、準決勝の相手にはAグループ1位が予想される中国を避ける組み合わせになる。そのためには、オーストラリアとの決戦が最大のヤマ場となる。戦力ダウンの韓国からは確実な1勝をそして、オーストラリアとの決戦の前に立ちはだかるのが、大会2日目に対戦する韓国だ。今大会の韓国は確実に叩かなければいけない相手である。韓国は長きにわたり中国とともにアジアの覇権を争っていたチームだが、ここ数年は世代交代が進まずに戦力ダウンが著しい。昨シーズンのWKBL最高殊勲選手であり、1、2番を兼務するポイントゲッターのパク・ヘジンと、シューターのカン・アジョンをケガで欠いている今大会もチーム作りに苦悩がうかがえる。韓国代表のヘッドコーチの話によれば、「2人はインドに連れてきてはいるものの、ゲームに出せるような状態ではない」と言う。また、ここ数年パワフルなプレーを展開していたインサイドのヤン・ジヒも現役を引退しており、この3人が不在となると戦力ダウンが否めない。要注意人物であるフォワードのキム・ダンビやイム・ヨンヒは健在。期待の19歳、195cmのパク・ジスは順調に育ってはいる。日本の選手たちも「決して油断はしない」と口にもしている。だが、選手層の薄さから見て、韓国は確実に1勝をもぎ取りたい相手である。今大会は同時期に開催しているU-19ワールドカップでも妹分のU-19日本代表が連日好ゲームを展開している。その裏では、U-19ワールドカップへの参加資格がありながらも、A代表が参戦するアジアカップを選んだライバルたちがいることも追記しておきたい。先に紹介した中国のリー・ユェルー、韓国のパク・ジスはA代表のスタメンに抜擢されているティーンエイジャー。また、オーストラリアにも20歳の新星、アランナ・スミスも成長している。そういった意味では、やはり日本も若い血を入れて活性化することは必要なのだ。インドの地で3連覇を狙い、そして選手層を底上げする大会になることを大いに期待したい。2017/07/24日本代表
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[新婚インタビュー]藤高宗一郎との結婚を発表した栗原三佳が語る「夫婦ともどもプレーヤーとして成長していきたい」バスケ界にうれしいビッグニュースが舞い込んだのは5月16日。藤高宗一郎(サンロッカーズ渋谷)と栗原三佳(トヨタ自動車アンテロープス)の2人が、自身のインスタグラムを通じて結婚していたことを発表したのだ。4月には間宮佑圭(JX-ENEOS)が結婚して大﨑姓になることを発表し、バスケ界ではおめでたい話が続いているが、今回はトッププレーヤー同士の結婚のために、驚いたファンも多いことだろう。実は、2人は大阪生まれで高校時代からの知り合い。藤高は名前から「ソウ、ソウちゃん」と呼ばれ、栗原も「爽快シューター」から取った「ソウ」がコートネーム。呼び名まで同じ2人はまさしくバスケ界の『爽やか夫婦』だ。栗原が所属するトヨタ自動車の清野英二部長は「結婚した栗原や大﨑選手には女子バスケ界の新しい道を作ってほしいし、結婚して子供を産んでも、日本代表で活動する生き方を支援していきたい」とエールを送っている。付き合って3年でのゴールイン。ここでは妻である栗原三佳の結婚への思いと今後についてのインタビューをお届けする。なお挙式の時期は未定であり、このオフはシーズン中に骨折した指の完治に向けて、治療に専念する。藤高宗一郎(サンロッカーズ渋谷/1991年10月11日生まれ、25歳/大阪商業大学高→関西大学出身)栗原三佳(トヨタ自動車アンテロープス/1989年5月14日生まれ、28歳/大阪薫英女学院高→大阪人間科学大出身)高校時代からメル友、互いを「ソウ君」「ミカ」と呼ぶ――ご結婚おめでとうございます。電撃の結婚発表だったのですが、2人の馴れ初めから聞かせてください。2人とも大阪出身で、私の後輩とのつながりで知り合って、高校時代からメル友としてちょこちょこ連絡取るような間柄でした。でも2人で食事に行くようになったのは私がトヨタに入ってからで、向こうが大学4年くらいだったかな。付き合いだしたのは3年前くらいです。――Instagramには「シーズン後が終わって落ち着いたら報告したい」とありましたが、入籍はいつしたのですか?昨年の12月23日です。当分、挙式をするのは都合がつかないので、入籍だけ先に済まそうということになりました。入籍を12月23日にした理由はとても単純で、2人のオフが同じで、一緒に婚姻届けを出しに行ける日がこの日でした(笑)。1月はオールジャパン、2月から4月まではリーグが佳境になってプレーオフで忙しくなってしまう時期だし、5月に入ると、その時は代表活動がどうなるか読めなかったので。あとは、今後のことを考えると、記念日は休日のほうがいいかなと思って。――藤高選手のどんなところに惹かれたのでしょうか。誰にでも親切で優しいところですね。2つ下ですけど、たまにどっちが上なのか分からないくらいしっかりしています。自分の考えをしっかり持っている人なので、プレーヤーとしてだけでなく、いろんな面で支えてくれます。メイ(大﨑佑圭)のところも年下ですしね。……ああ、恥ずかしい。こういうインタビューって慣れないですね(笑)。――慣れないところ、まだまだ質問は続きます(笑)。選手同士の結婚にファンは驚いていましたが、周囲の反響が大きかったのでは。ファンの方からはたくさんお祝いメッセージをいただきました。ありがとうございます。付き合っていることは隠していなかったけど、オープンにもしていませんでした。身近な人には付き合っていることを報告していたので、知っている人は知っている感じでしたね。婚約が決まってチームに報告した時は、どういう反応になるか不安だったんですけど、みんな喜んでくれて、本当にこのチームで良かったなあと思いました。特にベックさん(ヘッドコーチ)はハグして祝福してくれて、すごくうれしかったです。――ちなみに、『ソウ』がニックネームな2人ですが、お互いに『ソウ』と呼んでたりして?ないない。それはないです(笑)。私は「ソウ君」、彼は「ミカ」と呼んでます。「バスケを辞めへんから、構ってあげられへんけどええの?」――結婚して選手生活を続けていくことについては、お互いどう理解しているのでしょうか。彼は「選手としてやりたいところまでやればいい」と言ってくれています。私ももちろん彼を応援しています。結婚しても選手として続けたいとはずっと思っていました。海外では結婚して選手として続けていくのは普通のことなのに、日本ではそういう考えがあまりなくて遅れていましたよね。日本代表で海外遠征に行くと、試合会場に子供を連れてきているママさん選手がいて、そういうのを見るといいなあと思っていました。――チーム所在地の関係上、離れて生活をしていますけど、さみしくないですか?プロポーズされた時に「まだバスケを辞めへんから、すぐ一緒に住まれへんし、構ってあげられへんけどええの?」と私からは言ってあって、そういうのを条件にした結婚だったんです。離れての生活はお互い承諾の上ですね。――2人だと当然、大阪弁で会話をするわけですよね(笑)。2人だと大阪弁丸出しですね(笑)。――清野部長は「ママさん選手としてオリンピックに出てほしいし、チームとして支援する」と言っていました。今のところは、子供を産んでから選手としてプレーするかは考えていないのが正直なところですが、そういう選手が増えたらいいなという思いはあります。子供を産んで続けるかどうかは、その時に決めればいいことだし、選手として頑張れる状況であれば続けたいという考えです。メイもそうだけど、私たちのように結婚して続ける選手が増えたら、年齢層が厚くなるのでいいことですよね。――オリンピックでは藤高選手の応援が励みになったのでは。はい。オリンピックに出たことは彼も喜んでくれたし、彼の家族も応援してくれて本当に励みになりました。リオと日本は12時間の時差がありましたが、電話したり、ラインで連絡し合ったり。オリンピックで指を骨折したときも、リハビリで試合に出られない時も彼に元気づけてもらったので、乗り越えることができました。「夫婦ともどもプレーヤーとしてもっともっと成長したい」――結婚発表後、今後の生活スタイルは変わりますか?今まで通りです。千葉と名古屋で距離はありますが、彼が住んでいるところに行ったり、一人暮らしをしている私の家に彼が来たり、行ったり来たりの生活は変わらないですね。――今後、登録名はどうなりますか。できれば私は旧姓でプレーを続けたいです。FIBAの大会に出る時はパスポート名の登録になりますが、Wリーグはパスポート名ではないので、せっかく栗原で覚えてもらったので、日本では栗原でいこうかなと思っています。まだ迷っているところはあるのですが、希望は栗原姓です。――今季は日本代表候補に入りながらも、骨折した指の治療とリハビリのため、日本代表を辞退しています。現在の回復具合はいかがですか。それが……結構、時間がかかっています。オリンピックで指の剥離骨折、クォーターファイナルでも再び指を骨折してしまい、シーズン中にかなり無理をしたみたいで。今は完全に治すことだけを考えてリハビリしています。――結婚報告をしたところで、あらためて選手生活や日本代表への思い、ファンの方へメッセージを聞かせてください。東京オリンピックまで続けられるかは分かりませんが、日本代表でトム(ホーバスHC)にバスケットを教わりたいし、もう一度、あの舞台に戻りたい思いがあります。今は指を完治させることが優先なので、リハビリを頑張ります。私はシーズン中に彼のプレーをあまり見ることができないのですが、ダンクが魅力的ですし、選手目線ですけど、あれだけ跳べるのは本当にうらやましいです。ファンの方にはそんな彼のプレーを見に行ってほしいし、夫婦ともども、プレーヤーとしてもっともっと成長していけるように頑張りますので、今後も応援よろしくお願いします。発表して1週間経ちましたが 本当にたくさんの人たちからお祝いのメッセージを送っていただいてとても嬉しいです!いいね!もたくさん来てて嬉しい限りです!✨ メッセージをひとつひとつ返せずごめんなさい♀️でも何度も繰り返し読ませて頂きました! そしてそして なによりこの報告の反響に本人たちがかなり驚いております(笑) そこまでわーッとならんと思ってたけどわーッとなりました(笑) インスタを通じてもっとバスケが好きな人、ファンでいてくれてる人と交流して感謝の気持ちを伝えていけたらいいなと思っています。 夫婦仲良くやっています(笑) どこかで私たちを見かけましたら気軽に声をかけてくださいね。 私は実は人見知りな所がありまして…笑 初めての人とかが苦手なんですがそういうところも改善していきたいです(笑) これからもくだらないことなど更新していきますがどうぞお付き合いくださいSou24さん(@24.sou)がシェアした投稿 - 2017 5月 23 1:40午前 PDT2017/05/25Bリーグ&国内
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[寿]サンロッカーズ渋谷の藤高宗一郎とトヨタ自動車の栗原三佳が結婚「いたしましたというか昨年に結婚してました・笑」昨日、バスケ界では『ロイヤル婚約』にも匹敵する、うれしい結婚のニュースが届いた。サンロッカーズ渋谷の藤高宗一郎とトヨタ自動車アンテロープスの栗原三佳が、互いのSNSで結婚したことを報告した。栗原は3月でWリーグのシーズンを終えており、この一連の日本代表には参加せずにケガをした指の完治に向けリハビリ中。藤高が所属するSR渋谷は先週末にチャンピオンシップのクォーターファイナルで敗れてシーズン終了。2人ともシーズンを終えたということで発表の運びとなった。大阪出身の2人、栗原が2歳上の『姉さん女房』となる。皆様にご報告があります。 私事ではありますが、昨年末に栗原三佳さんと結婚致しました。 本拠地が違うので、一緒に居られる時間は少ないですが、お互いに支え合い、切磋琢磨し、これからも精進して参りますので、夫婦共々これからも応援よろしくお願いします!soichiro fujitakaさん(@ssou39)がシェアした投稿 - 2017 5月 16 4:35午前 PDT報告です?? 私ごとですか、この度、藤高宗一郎さんと結婚いたしました。 いたしましたというか昨年に結婚してました。笑 シーズン中ということもあり、お互いが落ち着いての報告しようと思っていて、報告が遅くなって申し訳ありません。 今、私は治療に専念しまだ病院にいる時間が長く、辛いこともたくさんありますが、いつも支えてくれて元気をもらってます。彼には感謝してます。 本拠地が違うので別居も続きますし、なかなか一緒に過ごす時間もたくさんあるわけじゃないですが、私たちらしく家庭を作れたらと思ってます。 どんなときも理解してくれ協力してくれる家族、チーム、バスケ関係のみなさまにはとても感謝しています。 まだまだ至らない未熟な二人ですが温かく見守っていただけたら幸いです。 プレーヤーとしてもっともっと成長できるようお互い精進していきます。どうぞこれからもよろしくお願いします。 #結婚いたしました #これからもよろしくお願いしますSou24さん(@24.sou)がシェアした投稿 - 2017 5月 16 4:35午前 PDT4月には女子日本代表で栗原とチームメートだった間宮佑圭が結婚を発表し、大﨑佑圭と名前を変えた。1年前はリオ五輪に向けて猛特訓の日々だったが、それから1年でスターターのうち2人が結婚。大﨑と同じくInstagramでの発表になったのも『時代』を感じさせる。藤高はプロ3年目、Bリーグ初年度のシーズン、60試合中57試合とほぼ全試合に出場したものの先発定着は果たせず、終盤戦にはプレータイムを減らしてしまった。チームもチャンピオンシップ『8強』止まりであり、来シーズンの藤高にはさらなる飛躍が求められる。栗原にとっても苦しいシーズンだった。リオ五輪の初戦で右手親指の付け根を剥離骨折、痛みをこらえてプレーし続けて結果を残したが、大会後は長いリハビリを強いられた。一度は復帰を果たすも、今度は2月中旬に左手の中指を骨折。万全ではない状態でWリーグのファイナルまで進んだものの、JX-ENEOSの前に敗れている。チームは大きく成長しての準優勝だったが、栗原にとってはキャリアで最もキツかった1年かもしれない。お互いに支え合う伴侶を得た来シーズンは、大きな飛躍に期待したい。2017/05/17Bリーグ&国内
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【リオ五輪、その後】栗原三佳(トヨタ自動車)度重なるケガの試練と向き合いながら『自分の仕事』をやり切ったシーズンクイックリリースから放たれる3ポイントシュートを武器にリオの舞台で躍動した栗原三佳。3ポイントの確率は51.1%(全体3位)、平均12.7点、リバウンド5本と高いスタッツを記録し、20年ぶりとなる五輪ベスト8に大きく貢献した。しかしその活躍の裏では、初戦のベラルーシ戦にて右手親指の付け根を剥離骨折するアクシデントに見舞われていた。リオで躍動したシューターは、痛みと戦いながら五輪の舞台で3ポイントを決めていたのだ。リハビリに努めて復帰をしたのは11月下旬。だが、ケガの試練は一度では終わらなかった。2月18日、クォーターファイナル1戦目のトヨタ紡織戦で、今度は左手の中指がパックリと折れてしまう解放骨折のアクシデントが栗原を襲った。処置によってプレーを続行できたことは幸いだったが、万全とは言えない状態の中で、4年ぶりのファイナルを戦わなければならなかった。ここでは5つのキーワードをもとに、ケガを乗り越えたシーズン、そしてオリンピックで得たことについて語ってもらった。KEYWORD[1]Wリーグファイナル4年ぶりのファイナル、善戦しても勝つのは難しかった「新人の時以来のファイナルでしたが、思ったよりもプレッシャーなくやれたというのが終わってみての感想です」「JX-ENEOSは強かったです。1戦目、2戦目と良い形でディフェンスができたのですが、3戦目はチームみんなの動きが良くなくて抵抗できませんでした。自分自身のことで言えば、クォーターファイナルとセミファイナルでは仕事を果たせて、チームをファイナルの舞台に連れていくことができましたが、それがファイナルとなると、勝利に導くのは難しかったです。そんなに悪い内容だとは思ってないのですが、ファイナルでどう戦うべきかを考えさせられました。ファイナルで勝つ難しさを経験したので、これを次につなげたいです」KEYWORD[2]5位から準優勝への躍進選手たちで話し合い、対応力がついたシーズン「この1年、チームはすごく成長しました。昨シーズンからベックさん(ドナルド・ベックヘッドコーチ)が来て、私たちにいろいろと教えてくれましたが、去年はベックさんのバスケットをやることに必死なだけで終わってしまいました。今シーズンは少し余裕が出てきたのか、決められたことをやるだけでなく、そこからどうやって対応していくかをみんなで話し合い、自分たちでアレンジしてやれるようになりました。それがファイナルまで来ることができた要因です。トヨタはディフェンスのチームですけど、ディフェンスではコートに出た選手が積極的に動けるようになったし、チームの底上げが感じられました。1年を通して成長できたので、来年はさらに成長する姿を見せられると思います」KEYWORD[3]オリンピックとその後絶好調だったオリンピックとその後のモチベーション「オリンピックは調子が良くて、プレーしていてすごく楽しかったです。ヨーロッパ遠征の時から相手より速く走ってシュートを打つ練習をしていたので、リオでもガンガン走れました。そこにリュウさん(吉田亜沙美)が打ちやすいところに面白いようにパスをくれるんですよ。初戦のベラルーシ戦で最初のスリーを打ったときにリキみなく打てて、そのシュートも『入るかなー』という感じだったのが入ったので『これはイケる』と思いました。練習と同じことができるから余計に楽しくて、自信に満ち溢れてプレーしていたというか、アドレナリンが出ていましたね(笑)」「そんな楽しかったオリンピックが終わると、『これからどうしよう……』という思いが募ってきました。目標という目標が今すぐにはできないし、Wリーグではこのままの調子でいかないことはわかっていたので、どうやって気持ちを上げていこう……という感じで日本に帰りました。さらに帰国後、オリンピックで痛めた指を検査をしたら、剥離骨折だと診断されたので、ますますどうしようという気持ちになりました。これも試練だと受け止めて、リハビリに専念するしかなかったです」KEYWORD[4]ケガの試練壁にぶつかってきた経験値で試練を乗り切る「リハビリ中はオリンピックで得た自信がどこかに行ってしまい、振り出しに戻った気がしていました。『シュートの感覚さえ戻れば、オリンピックで得た経験は生かせる』。その一心でリハビリをしていましたが、神様に『まだまだ頑張りなさい』と言われているような苦しい毎日でした」「11月末に予定より早くに復帰することができましたが、年内のゲームは本調子には遠かったです。最初はベンチスタートでしたが、ウチはみんなが試合に出て役割を果たすチームなのでスタメンにこだわりはなく、出た時間に自分の仕事をやろうと思って臨みました。オールジャパンあたりからシュートタッチが戻ってきて、徐々にチームに馴染んでスタメンに戻り、クォーターファイナルとセミファイナルで、ようやく大事なところで仕事ができました」「今シーズンは骨折に始まり、骨折に終わったシーズンでしたが、何とかやれ切れたのは、自分にできることを探し、自分の仕事をやることを意識したから。私のトヨタでの役割は3ポイントだけではないので、ドライブをしたり、チームのチャンスを作るために動いたり、何よりディフェンスとリバウンドを心掛けました。リバウンドが取れるということは動けていることなので、そこからペースをつかんでいくんです」「私自身、シュートが当たらないときにディフェンスとリバウンドを頑張ることは、スランプだったオリンピック予選(2015年アジア選手権)で学んだことです。今までも何度か壁にぶち当たってきましたが、そのたびに気持ちを切り替え、自分にやれることを見つけてきました。そういう経験があったので、オリンピックでもシュートの調整ができたし、ケガをしても調子を戻すことができたんだと思います。完璧ではなかったですけど、自分の役割をやり切れたことをこれからの自信にしていきたいです」KEYWORD[5]日本代表日本代表として頑張りたい思いは持ち続けている「日本代表に選ばれたい気持ちは持ち続けています。そこの気持ちは切れてないです。でも東京オリンピックはと聞かれれば、そこまでは考えられないです。日本代表に選ばれるためにはリーグで結果を出さないといけません。今シーズンはケガをしてしまったので、それでも認めてもらえるようなプレーをしなければいけない、と思いながらやっていました。でも考えすぎてしまうとダメなタイプなので、そこだけにこだわりすぎず、自分の仕事をしっかりやって選れることがいちばんだと思っています」「それで選ばれなければ潔く身を引きます。東京を目指して若い子を育てていかなきゃいけないことも理解しています。まずは指を完治しなければならないので、少し休んでからまた気持ちを新たにチャレンジですね」2017/04/18Bリーグ&国内
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にわかファン時評「彼方からのエアボール」第10回:W最終決戦は栗原さん以外も見どころ満点、驚きと発見の玉手箱や~「シュッとした栗原さん」と「雄々しい雄子」さんを眺めて3月12日に国立代々木競技場第2体育館で行われたWリーグ プレーオフ・ファイナル第3戦、JX-ENEOSサンフラワーズ×トヨタ自動車アンテロープス。取材者にあるまじきことかもしれないが、私は当初、ずっと栗原さんだけを見ているつもりだった。昨年7月の日本vsセネガル(国際強化試合)で初めて栗原三佳のプレーを知った私は、リオ五輪の活躍もテレビで見て、すっかりファンになっていたのである。だって、3ポイントシュートを決めるときの栗原さんほどシュッとしたアスリートが、他にいるだろうか。私に言わせれば、「シュッとした」という形容句は栗原さんのためにあるようなものだ。あれ以上シュッとしたら、たぶんジャコメッティの彫刻作品になってしまう。いわば彫刻寸前なのだから、人間としては究極のシュッとした姿であろう。残念ながら、この試合の栗原さんはあまり活躍できなかった。彼女だけ見ていると、どんだけボールのないところで走っているのかがよくわかって感心したものの、JX-ENEOSのキャプテン吉田亜沙美にしつこく追い回されたりなんかしたこともあって、3ポイントシュートは8分の1と低調。第3クォーターにはJX-ENEOSの渡嘉敷来夢と衝突した際にどこか痛めたらしく、ベンチで過ごす時間も長くなってしまった。もっとも、あれは渡嘉敷のほうがダメージが大きかったけどね。床に倒れた渡嘉敷の巨体をスタッフ6人がかりで担架に乗せるシーンも、かなり見応えがありました。しかしこの試合には、栗原さんの他にも、私の目を奪った選手がいた。この連載を継続的に読んでくれている人はおわかりだと思うが、私には、まず選手のヘアスタイルに注目する癖がある。琉球ゴールデンキングスの波多野和也(アフロ)、千葉ジェッツの富樫勇樹(テッカテカ)に続いて私が放っておけなかったのは、言うまでもなく、トヨタの大神雄子だ。あのヘアスタイルを見てから「トヨタの1番て誰?」とメンバー表を確認したら、名前が「雄子」だったので、ひどく感動した。栗原さんが究極の「シュッとした」なら、こちらは究極のボーイッシュである。あれ以上ボーイッシュにしたら、たぶん瀬戸内寂聴になってしまう。いわば出家寸前なのだから、まあ、ある意味で究極といって差し支えないだろう。バスケットボールには「部活っぽさ」がよく似合うその大神、プレーも雄々しかった。「雄々しい」という表現も昨今はポリコレ的にどうなんだという話になるんだろうが、なにしろ親御さんのつけた名前が雄子なんだから「雄々しい」でよかろう。特に、28-56のダブルスコアで迎えた第4クォーター、序盤から立て続けに決めた4本の3ポイントシュートは圧巻。75-51という最終スコアだけ見ればワンサイドゲームだが、9連覇中の王者JX-ENEOSに食らいつき、最後まで倒すことをあきらめなかった大神の迫力が、この決戦を引き締めてくれた。大差で負けた試合後も、大神率いるトヨタは清々しかった。泣いたりうなだれたりすることなく、みんなで輪になって声を上げるルーティーンを笑顔で連発。Wリーグ優秀選手の表彰の際も、よそのチームの表彰選手を取り囲んで盛り上がっていた。もしかしたら、負けたチームが表彰式でキャーキャーとはしゃぐ姿を苦々しく感じるスポーツファンもいるかもしれない。別の競技の話だが、サッカーでは、98-99シーズンの欧州チャンピオンズリーグ決勝でマンチェスター・ユナイテッドに大逆転負けを喫したバイエルン・ミュンヘンのマテウスが、準優勝メダルを首から外したのが話題になった。「あれこそ戦う人間のあるべき姿」と称賛する声が多かったと記憶している。でもトヨタの皆さんだって、負けて悔しくないはずはない。それでも明るく振る舞う姿を見ていたら、やっぱりアスリートは爽やかなのが一番だよな、と私には思えたのだった。そう思えるのは、バスケには「部活っぽさ」がよく似合うせいかもしれない。前々回のこのコラムで書いたとおり、昨年のウインターカップのときも、高校バスケの「スラムダンク風味」が私には楽しかった。勝っても負けても、選手たちが成長すればそれでいい。私自身、親として息子が中学・高校のサッカー部で勝ったり負けたりしながら逞しくなる姿を見てきたので、そういうのにグッときちゃうんですよ。バスケはそれを大事にしたほうがいいと思う。『にわか』が気付いたバスケの真髄「出だしが大事」見事にシーズン無敗で9連覇を達成したJX-ENEOSのほうも、試合後のインタビューや記者会見では、スラムダンク的な部活っぽさが感じられた。これを最後にチームを去るヘッドコーチのトム・ホーバスは、まさに安西先生を思わせるような包容力とカリスマ性の持ち主だ。あの優しい目と柔和な口調で「練習が足りているか自問自答しなさい」なんてことを言われ続けたら、私だって〆切を守る立派なライターになってしまうかもしれない。その薫陶を受けた吉田や間宮佑圭も、口を揃えて「トムのバスケ」をいかにやり切るかを考えていたという。これだけチームが強いと気の緩みも生まれそうなものだが、ヘッドコーチの下で「昨日より今日、もっといいバスケをやる」という目標がモチベーションを支えた、という宮澤夕貴の言葉も印象に残った。ちなみにこの試合で自分の成長を感じたのは、選手たちだけではない。「にわか」の私も、バスケファンとして少しは見る目が肥えてきたようだ。というのも、私は第1クォーターのティップオフから数分間で、「JXは試合の出だしに勝負を懸けてきたな」と思った。いや、最初にそんな気配を感じたのは、試合前のウォーミングアップだ。やたら激しくダッシュをくり返して、息ゼーゼーハーハー、汗ダラッダラになっている吉田の様子に、ただならぬ覚悟を感じたのである。実際、のっけから凄まじく集中力を高めたJX-ENEOSは、強烈なディフェンスでトヨタの攻撃を封じ込め、わずか3分弱のあいだに7-0とした。振り返ってみれば、その時点で勝負はついていたともいえるだろう。で、試合後の会見では、感想を求められたヘッドコーチのホーバスが開口一番、「今日は出だしがすごい大事だと思っていたけど、ジャンプボールに負けたでしょ。今シーズン2回目ぐらいだから、ちょっとショックだった(笑)」とのコメント。ジャンプボール取られてヘコむぐらい立ち上がりに懸けていたことがわかったので、私は記者席で大きく頷きながら、「オレもちょっとわかってきたじゃないか」とニマニマしていたのだった。ま、誰が見てもそうなんでしょうけどね。JX-ENEOSを去るホーバスさんは、次に女子日本代表監督になられるとのこと。私も彼の言葉を追いかけながら、2020年までには「にわか」の肩書きが外れるよう、選手たちと共に成長していきたいと思った次第であります。いつまでもヘアスタイルばっか見てるわけにもいかないし。にわかファン時評「彼方からのエアボール」第1回:最初で最後のNBL観戦第2回:バスケは背比べではなかった第3回:小錦八十吉と渡邊雄太第4回:盛りだくさんの『歴史的開幕戦』に立ち会う第5回:吉田亜沙美がもたらした「大逆転勝利」第6回:フラグなき逆転劇と宇都宮餃子第7回:杉並区民の『地元クラブ』探し、今回は井の頭線ぶらり終点下車第8回:ウインターカップとスラムダンク的自己啓発第9回:Bリーグ初のALLSTARはバスケの『余興的エンタメ性』が炸裂!2017/03/15Bリーグ&国内
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渡嘉敷来夢の負傷退場にも揺るがず、JX-ENEOSがファイナルでトヨタに3連勝、シーズン無敗の『完全優勝』を達成足を使ったディフェンスでトヨタの攻め手を封じるWリーグのプレーオフ・ファイナル第3戦。ここまでトヨタ自動車アンテロープスの粘りに遭いながらも、第1戦を84-53、第2戦を74-63で勝利したJX-ENEOSサンフラワーズが、この試合では相手の時間帯を作らせず75-51と大勝。レギュラーシーズンからファイナルまで全試合に勝利する『完全優勝』を果たした。立ち上がり、吉田亜沙美、岡本彩也花、間宮佑圭と立て続けにJX-ENEOSが得点。開始3分足らずで7-0とし、トヨタに最初のタイムアウトを使わせた。この第1クォーターは17-5というスコア以上にJX-ENEOSが圧倒。足を使ったディフェンスでどんな揺さぶりにも対応してズレを作らせず、トヨタ得意の3ポイントシュートを決してフリーで打たせない。そしてリバウンドを確保しては速攻に転じた。トヨタは6本の3ポイントシュートがすべて外れ、フィールドゴール率13.3%と散々。逆にJX-ENEOSは47.1%とイージーシュートのチャンスを作り出し得点を重ねていった。第2クォーターは馬伊娜と森ムチャのインサイドが踏ん張ったことにより、JX-ENEOSのリバウンドでの優位性は薄れたものの、足を使った激しいディフェンスは継続。宮澤夕貴のシュートが当たり始め、ベンチスタートの宮崎早織も2本の3ポイントシュートを決めて38-19とダブルスコアで前半を折り返した。修正力でトヨタを上回り、試合を重ねるごとに盤石にここまで順調すぎるほど順調だったJX-ENEOSだが、ここでアクシデントに見舞われる。第3クォーター残り8分半のところで、栗原三佳とスクリーンプレーの際に衝突した渡嘉敷来夢が側頭部を強打。脳震盪で動けなくなってしまい、結局この後はコートに戻ることができなかった。高さと強さでゴール下の『番人』としての役割を果たしていた渡嘉敷は、後半開始早々に早くも10リバウンドを記録しており、その離脱は大きな穴になるかと思われた。ところが代わって入った石原愛子がリバウンドに得点にと大活躍。さらには3番にコンバートされた宮澤が4番に戻ってプレーしたこともあって渡嘉敷の穴を埋め、トヨタに付け入る隙を与えなかった。第1戦と第2戦では、敗れはしたものの果敢な戦いぶりで自分たちの時間帯を作ったトヨタだったが、試合のたびにアジャストしてくるJX-ENEOSを相手に持ち味を発揮できない。第3クォーター終盤には56-23と33点もの大差が付いた。それでもトヨタはあきらめない。第4クォーターに入り、大神雄子がギャンブル的に放つ3ポイントシュートを次々と沈め、11-0のランで差を詰める。だが、第4クォーター開始時点で28点という差は大きすぎた。JX-ENEOSは司令塔の吉田が、体力的な限界を強靭なメンタルで抑え込みつつゲームをコントロール。残り2分半、69-44と25点差として勝利を決定付けた。MVPの吉田「『もっともっと』の気持ちを忘れずに」『女王』JX-ENEOSをさらに一段階強いチームへと引き上げたヘッドコーチのトム・ホーバスは「選手たちは本当に良くやってくれました」と感謝を述べた。そのホーバスは女子日本代表監督への転身が決まっており、今日がJX-ENEOSを率いる最後となった。ファイナルMVPに輝いたのは吉田亜沙美。「今日は熱い気持ちで、出だしからJX-ENEOSのバスケットができました」と語る。「ディフェンスもしっかり我慢して、ローテーションだったりリバウンドから走るというバスケットをファイナルの舞台でやれたことをうれしく思います。結果的に9連覇となりましたが、トムのバスケットを全員でコートで表現できたことがうれしいです」と、シーズン最後のパフォーマンスを振り返った。『完全優勝』のシーズンを締めくくった試合を吉田はこう語る。「今日はすごく良いゲームができましたが、トムのことなので『もっともっとできる』と言うはずです。なので、この『もっともっと』の気持ちを忘れずに、これからも成長していきたいと思います」2017/03/12Bリーグ&国内
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トヨタ自動車アンテロープスの果敢な攻守にリズムを狂わされるも、JX-ENEOSサンフラワーズが『女王』の貫禄でまずは1勝激しい当たりで渡嘉敷を封じ、攻守に走るトヨタが大健闘Wリーグのプレーオフ・ファイナル第1戦が行われた。レギュラーシーズン全勝の『女王』JX-ENEOSサンフラワーズと、レギュラーシーズン20勝7敗で2位のトヨタ自動車アンテロープス。試合前の予想ではJX-ENEOSの優位は揺るがなかったが、試合は思わぬ立ち上がりを見せる。トヨタはスピードと運動量でJX-ENEOSを上回り、攻守ともにアグレッシブなプレーを見せる。JX-ENEOSとしては極めて珍しいことに、相手の勢いに押されてしまう展開に。エースの渡嘉敷来夢は馬伊娜や森ムチャの激しい当たりに苦しみ、司令塔の吉田亜沙美もいつものアグレッシブさを出せない。トヨタは第1クォーターから目まぐるしくメンバーを入れ替えて運動量をキープする。間宮佑圭がポストプレーとゴール下のシュートで繋いでリードを保つが、トヨタの作戦勝ちという面が強い序盤だった。それでも第2クォーター終盤、渡嘉敷に当たりが出始める。2度のオフェンスリバウンドを奪う波状攻撃でジャンプシュートを決めると、ゴール下の合わせでイージーシュートを決めて34-24と点差を2桁に広げる。ただ、流れがJX-ENEOSに傾くと思われたところで、栗原三佳のこの試合2本目の3ポイントシュート、その直後には久手堅笑美のワンマン速攻が飛び出し、36-29。トヨタの善戦が目立つ前半だった。同じアーリーオフェンスで両チームの明暗が分かれる第3クォーターもトヨタの踏ん張りが目立つ展開からスタートする。スクリーンプレーや素早いパスワークにもしっかりと足を使って食らい付き、集中を切らすことなくズレを埋めてイージーシュートの機会を与えない。水島沙紀が3ポイントシュートを決めれば直後のポゼッションで岡本彩也花が決め返すなど、両者一歩も引かない攻防に。その均衡を崩したのは吉田のタフショット気味のジャンプシュートだった。46-43と1ポゼッション差に迫られたところで、それまで無理にシュートを選択せずパスに徹していた吉田の一発が飛び出すと、ここからはトヨタ以上の厳しいディフェンスで失点を許さず、13-0のランで一気に突き放す。トヨタも最後に持ち直して59-49と10点差で最終クォーターに入るが、ここからJX-ENEOSが再び走る。ビハインドを埋めようと攻め急ぐトヨタが慌ててミスをするのとは対照的に、ここからは『守って走る』JX-ENEOSのバスケットを展開した。リバウンドを取っては走り、ターンオーバーを誘っては走る……ここで点差が一気に開いた。残り4分20秒、近藤楓がようやくこのクォーター最初の得点を挙げた時には71-51と20点差に。勝敗が決し、両チームが控えメンバーへと切り替えた後もJX-ENEOSの勢いは止まらず、この最終クォーターのトヨタの得点をわずか4に抑え、終わってみれば84-53と31点差を付けて大勝した。殊勲の間宮「相手は関係なしに、自分たちのバスケを」トヨタのヘッドコーチ、ドナルド・ベックはシュート成功率の低さを敗因に挙げた。「JXは弱点のないチーム。勝つためには完璧な試合をしなければならないところでシュート成功率が40%では勝てない。前半も後半もオープンシュートを打てていたが、それをしっかり決めないと」トヨタの2ポイントシュートの成功率は37%(46本中17本)で、52.7%(55本中29本)のJX-ENEOSとは大きな開きがあった。ベックHCは言う。「これはコーチは修正できません。ウチには良いシューターがいるので、自信を持って打つことです。JXに勝つにはシュートの確率を絶対に上げなければいけない。明日も熊本に移動して練習しますが、しっかり打ち込んで準備します」JX-ENEOSのキャプテン、吉田亜沙美は「前半すごく重いゲームでしたが、ディフェンスを我慢して7点差まで持っていけたのが勝因です」と試合を振り返る。大きなランで圧倒した後半ではなく、悪い流れの中でもリードを保ち続けた前半の『我慢』を勝因と言うところが吉田らしい。「後半しっかり切り替えて、私たちのゲームがやれました。第2戦では前半から、今日の後半のようなバスケットをして、JX-ENEOSらしいバスケットをしたいです」その前半の苦しい時間帯に攻守でチームを支え、結果的に両チーム最多の17得点を挙げた間宮は「ハードにやろうとは意識していました」と、ファイナルらしいゴール下での激しい攻防について語る。予想以上の苦戦は強いられたが、勝ち切ったことでの自信が間宮からは感じられた。「後半には外角のシュートも来たし、オフェンスの動きもスムーズになって、自分たちのバスケができたと思います。第2戦は相手もアジャストしてくると思いますが、そういうのは関係なしに、自分たちのバスケットが自然と出て来たら勝利は見えてくると思います。それを忘れずに自分たちでしっかりやっていきます」ファイナル第2戦は10日(金)、熊本県総合体育館で行われる。2017/03/08Bリーグ&国内
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WリーグファイナルはJX-ENEOSとトヨタの激突! 渡嘉敷来夢「自分たちのバスケを」大神雄子「堂々と戦いたい」Wリーグのプレーオフもいよいよ大詰め。プレーオフのセミファイナルでは、JX-ENEOSサンフラワーズがデンソーアイリスを連勝で破り、トヨタ自動車アンテロープスはシャンソンVマジックとの第3戦までもつれる激闘を制した。ファイナルは5戦3先勝方式。以下の日程で行われる。第1戦 3月 8日(水)19時試合開始 佐賀県総合体育館第2戦 3月10日(金)19時試合開始 熊本県総合体育館第3戦 3月12日(日)15時30分試合開始 代々木第二体育館第3戦 3月14日(火)19時試合開始 代々木第二体育館第3戦 3月16日(木)19時試合開始 代々木第二体育館トム・ホーバス「今シーズン一番良いバスケをやりたい」昨日、ファイナルに向けた記者会見が行われ、両チームのヘッドコーチと選手が出席した。9連覇を目指すJX-ENEOSの指揮官トム・ホーバスは「大事なのは最初のゲーム。そこに勝ったら次のゲーム。レギュラーシーズンで全勝したことなんか考えていたらダメ。昨日より良いバスケをやろう、と選手には言っています」と語る。慢心はないが、自信はある。ファイナル進出を決めた試合の後、「レギュラーシーズンより一つ上に行ったと思う」と語った指揮官は、「ファイナルでは今シーズン一番良いバスケをやりたい」と意気込んだ。JX-ENEOSのエース、渡嘉敷来夢はこう語る。「リーグ戦はJXらしいバスケットができる時もあれば、あまり内容が良くない試合もありましたが、セミファイナルではJXらしいバスケができた。ファイナルでも自分たちのバスケができるよう、あらためて気を引き締めてファイナルに臨みたい」ドナルド・ベック「狙うのはもちろん優勝です」一方でトヨタのヘッドコーチ、ドナルド・ベックは「日本に7年いるが、男子も含めて一番良いプログラムをやっている、見習うべきチームがJX。私のコーチキャリアの23年間で10回目のファイナルになりますが、その中でも最も難しいチャレンジになります」とJX-ENEOSをまずは称えながらも、自らが育て上げたチームにも自信を見せた。「去年は5位のチームですが、大きな選手の加入があったわけでもないのに、既存の選手がハードワークをこなしたおかげでファイナルまで来ることができました。ケガ人も多くいましたが、そういう状況の中を戦い抜いて今ここにいます。狙うのはもちろん優勝です」トヨタを文字通り引っ張って来た大神雄子は「クォーターファイナルから3戦目までもつれ込んで戦ってきて、大事なゲームを何とか勝ち切って、ここまでたどり着いたチームです」と自分たちを表現する。「一つだけJXに勝るとしたら、ファイナルは少なくとも3戦まであって、私たちは3戦を戦ってきていることかなと。コンディションを整えるのが先決ですけど、堂々と戦いたいと思います」JX-ENEOSとトヨタがファイナルで激突するのは2013年以来4年ぶり。それでも、その前は4年連続で対戦していた『お馴染みのカード』が帰って来たことになる。『女王』JX-ENEOSが連覇を9に伸ばすのか、それとも激戦を勝ち抜いてきたトヨタがアップセットを果たすか。注目の第1戦は8日(水)19時試合開始。すべての試合がNHK-BS1で生中継される。2017/03/03Bリーグ&国内
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[CLOSE UP]栗原三佳(トヨタ自動車)右手骨折の重傷を負いながらリオで輝いたシューター、試練を乗り越えて完全復活へリオ五輪初戦で骨折、痛みをこらえて3ポイントを決めていたトヨタ自動車アンテロープスの栗原三佳は、Wリーグ後半戦からの巻き返しを狙っている。リオ五輪中に起きた右親指の剥離(はくり)骨折から5カ月あまり。すでに術後のリハビリを終え、11月下旬から復帰しているが、これまではシュート感覚がつかめずに万全とは言えなかった。年末のリーグ戦で試合感覚を慣らし、オールジャパンで手応えをつかみ、ようやく、「復帰の第一段階まできました」と言えるようになったのだ。昨年夏、栗原はリオの地で躍動した。日本代表は予選ラウンドでベラルーシ、ブラジル、フランスから3勝を挙げ、アトランタ五輪以来、20年ぶりとなる決勝トーナメント進出を果たした。栗原はその躍進の中心として、トランジションの速い展開からクイックモーションの3ポイントシュートを要所で決めて日本を勢いに乗せた。その躍動感は『爽快シューター』からとった『ソウ』のコートネームそのもの。アベレージ12.7点(チーム2位)、3ポイント51.1%(チーム1位、全体3位)、リバウンド5本(チーム2位)という貢献度を見せた。ただチームとしては、オーストラリア戦で金星を逃したことや、トルコの老獪さにやられことなど、試合テンポの調整や駆け引きについてはツメの甘さも目立った。多くの宿題を持ち帰った日本代表は、Wリーグでそれぞれの課題に取り組みながらプレーしている。吉田亜沙美、間宮佑圭、渡嘉敷来夢を擁するJX-ENEOSサンフラワーズは今まで以上の強さでオールジャパンを制し、髙田真希(デンソー)は得点とリバウンドで1位をひた走り、本川紗奈生もシャンソン化粧品のエースとして奮闘。三好南穂(シャンソン)、町田瑠唯(富士通)、近藤楓(トヨタ)は3ポイントシュート成功率で1~3位を占め、長岡萌映子(富士通)と宮澤夕貴(富士通)はフォワードしてプレーの幅を広げるシーズンになっている。だが、負傷してしまった栗原だけは夏から前に進めずにいた。信じられないことに栗原の負傷は、10本中6本もの3ポイントシュートを決めてチームを勢いに乗せた初戦のベラルーシ戦で起きたものだ。あれから5カ月。2次ラウンドからスタメンに返り咲いた栗原三佳の復帰はどう進められてきたのか。「オリンピックで得た自信も振り出しに戻ってしまいました」8月7日のベラルーシ戦、ディフェンスでダブルチームに行った時にアクシデントは起きた。相手との接触で指を引っ張られ、激痛とともに、右手親指の付け根の靭帯と骨は引き裂かれてしまった。「ものすごい激痛でしたが、良い流れが来ていたので交代してほしいとは言えなかったし、自分の活躍で勝利をもぎ取りたかったので、必死にゲームを続けていました」試合後にエコーを撮ったものの腫れがあまりにもひどかったために骨折と判明できず、『重度のつき指』という認識で、超音波や電気治療を受けながらプレーしていた。大会中の練習では、うまくキャッチができない栗原に対してチームメートはバウンズパスを出す気遣いを見せ、極力シューティングを控えて本番に臨んでいた。それでも試合になれば、走り回ってはガード陣からドンピシャのパスを受け、確率の高い3ポイントシュートを決めまくった。激痛をこらえた原動力はどこにあったのだろうか。「オリンピックが楽しくて仕方なかったです。誰よりも速く走ってパスをもらって打つ練習はヨーロッパ遠征からしていて、リオでも私が走ったところにリュウさん(吉田)がパスをくれるから思い切り打てました。練習と同じことができるから、打てば打つほど自信になっていましたね。痛くてもアドレナリンが出ていたみたいです(笑)」栗原はオリンピック前年のアジア選手権で極度の不振を経験している。打てども、打てども3ポイントが入らず、気持ちよく決まったのは大差がついた中国との決勝での1本のみ。シュートが入らなかったことより、大会中に状態の悪さを修正できなかった反省が残った。「キャッチしてシュートを打つことしかできなかったから」というバリエーションの少なさを反省し、次のシーズンには様々なボールのもらい方や打ち方の研究をして臨んでいる。その結果、試行錯誤した3ポイントシュートの確率は前年より落ちたものの、シュートバリエーションは増え、クォーターファイナルでは平均17.67点、リバウンド8.33本と高いスコアを残している。そうした試練を乗り越えて迎えたオリンピックだっただけに、さあこれから、というところでの負傷はダメージが大きかったのだ。「いろいろと壁にぶち当たりますよね。今はオリンピックで得た自信も振り出しに戻ってしまいました。神様に『まだまだ頑張れ』と言われているみたいです……」震える声を絞り出してそう語ったのは12月上旬のことだった。トヨタ自動車が前進するには栗原のシュート力が不可欠復帰後、調子がなかなか上がらなかった原因の一つに、指を開く可動域が狭くなっていたことがある。特に今の時期は寒いこともあり、右手を念入りにマッサージしないと親指の付け根のところが引っ張られて、手のひらがうまく開かないという。そうした苦労を重ねながらも、オールジャパンでは復調の兆しを見せた。母校との対戦となった初戦の大阪人間科学大戦で、後半に突き放す連続3ポイントシュートで調子をつかむと、準決勝のJX-ENEOS戦では15分のプレータイムで4本中3本の3ポイントを決めている。そんな中で見えてきたのは、3ポイントだけにこだわらないことだ。栗原は走ってシュートチャンスを作るタイプのため、リバウンドやドライブにも絡める脚力がある。オリンピックでの平均5本のリバウンドは渡嘉敷に次ぐチーム2位。「シュートがダメな時こそ、リバウンドやディフェンスで貢献しなきゃいけないということは、不調だったアジア選手権で学びました」と原点に立ち返っている。リバウンドに絡めるかどうかは栗原の好不調のバロメーター。事実、2次ラウンド2試合目のシャンソン戦では9リバウンドと奮闘。そして、待望の当たりがやってきた。5本の3ポイントを決めてチームを勝利に導いたのだ。今シーズンのトヨタは、栗原とともにオリンピックに出場した近藤楓が安定し、近藤と同期の水島沙紀が台頭してきた。栗原不在でもその穴を感じさせなかったのは、同じポジションのこの2人が奮闘していたおかげでもある。しかし、今のトヨタは思いのほかスコアが伸びない。今チームが欲しているのは、苦しい時間帯にこじあけるような打開力や、たたみかける爆発力であることは明らか。それはまさしく、栗原の役目なのだ。「オリンピックで痛みの中でシュートを決めたことは自分の貴重な経験になっているので、リバウンドを取ることからしっかりやって、あとは這い上がっていくだけです」プレーオフに向けてのもうひと踏ん張り。今こそ栗原三佳の力が必要な時だ。2017/01/23Bリーグ&国内
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今度の『ポイントガード対決』は吉田亜沙美vs町田瑠唯、Wリーグは今週金曜開幕!JXと富士通の開幕戦(10月7日)はすでに全席ソールドアウト今週金曜の開幕を前に、Wリーグが会見を開き、全12チームのヘッドコーチとキャプテンが登場した。リオ五輪での女子日本代表の素晴らしい戦いぶりは記憶に新しい。10月7日に代々木第二体育館で行われる富士通とJX-ENEOSのチケットはすでに完売と、『リオ効果』がはっきりと表れている。各チームのヘッドコーチとキャプテンが新シーズンに向けた抱負を述べる中、やはり注目されるのはリオ五輪チームでキャプテンを務めた吉田亜沙美だ。JX-ENEOSサンフラワーズはWリーグ8連覇中。当然のように優勝が期待されるが、昨シーズンのファイナルの相手である富士通レッドウェーブとの開幕戦を前に油断はない。吉田は言う。「富士通さんは素晴らしいチームなので、私たちも油断をせずに相手がどこであれJXのバスケットを40分間やることが大事だ。ディフェンスからブレイクという『走るバスケット』をやり、そしてアップテンポな展開に持っていくことがキーになります」対する富士通のキャプテンは、リオ五輪では吉田に次ぐAKATSUKI FIVEの第2ポイントガードを務めた町田瑠唯。2年連続でファイナルに進むもJXの壁を越えられずにいる富士通だが、若いチームだけに伸びしろはまだある。町田は言う。「去年のチームは波が激しくて、悪い時に個々になってしまうところがあったので、悪い時こそしっかりチームとして一つになって全員で戦っていけるようにしたいです」栗原三佳と近藤楓が所属するトヨタは、王新朝喜を擁する三菱電機コアラーズと対戦。髙田真希のいるデンソーは、本川紗奈生と三好南穂のいるシャンソンと戦う。その他、各地で金曜ナイトゲームから日曜まで計12試合が行われる。リオでもらった勇気と感動を各地のアリーナで再び与えてくれることを期待するとともに、リオ五輪に出場しなかった選手たちも大いに刺激を受けているはずで、その刺激をコート内でしっかりと見せてもらいたい。Bリーグのみならず、女子の熱い戦いにも注目したい。10月7日(金)19:00 富士通 vs JX-ENEOS @代々木第2体育館19:00 羽田 vs 山梨 @港区スポーツセンター10月8日(土)13:00 デンソー vs シャンソン @ウィングアリーナ刈谷13:00 トヨタ vs 三菱電機 @スカイホール豊田14:00 羽田 vs 山梨 @港区スポーツセンター15:00 トヨタ紡織 vs アイシンAW @ウィングアリーナ刈谷16:00 JX-ENEOS vs 富士通 @代々木第2体育館18:00 新潟 vs 日立ハイテク @五泉市総合会館大ホール10月9日(日)13:00 デンソー vs シャンソン @ウィングアリーナ刈谷13:00 トヨタ vs 三菱電機 @スカイホール豊田13:00 新潟 vs 日立ハイテク @五泉市総合会館大ホール15:00 トヨタ紡織 vs アイシンAW @ウィングアリーナ刈谷2016/10/03Bリーグ&国内
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内海知秀ヘッドコーチが振り返るリオ五輪vol.1「リオでのメダル、『本気』のチャレンジ」9月を迎え、暑い夏の日々が少しずつ秋色に変わりつつある。それでもテレビでリオ五輪のメダリストたちを見ない日はない。メダルには届かなかったものの、バスケットボール女子日本代表『AKATSUKI FIVE』の奮闘は忘れられない夏の1ページとして語り継がなければならないだろう。そんなわけで、女子日本代表を率いた内海知秀ヘッドコーチにリオ五輪を総括してもらった。指揮官が見たチームの成長と、2020年にメダルをつかむための課題とは。内海ヘッドコーチのインタビューをお送りする。PROFILE 内海知秀(うつみ・ともひで)1958年12月7日生まれ、青森県出身。能代工、日本体育大を経て、日本鉱業で活躍。引退後の1988年に札幌大で指導者としてのキャリアをスタートさせた。2003年、JXでの手腕を評価され女子日本代表監督に就任し、アテネ五輪を戦う。JX-ENEOSを経て2012年に日本代表監督に復帰。4年がかりで強化したチームを率いてリオ五輪を戦い、ベスト8進出を果たした。リオ五輪に向かう過程は楽しかった──ロンドン五輪の世界最終予選(以下OQT)から4年をかけてチームを作り上げ、一つの区切りとなるリオ五輪を終えました。この4年間を振り返って、いかがでしたか?内海 最初はつらい部分もありましたよ。というのも、まずはアジアで優勝しなければいけないという思いがあったので、そこに至るまでの日々は決して簡単なものではなかったです。でも、出場権を獲得して、リオ五輪に向かう過程は楽しかったですね。──2004年のアテネ五輪では最後にギリシャに負けて決勝トーナメントに進めませんでした。しかし今回は最後のフランス戦に勝って決勝トーナメントに進みました。内海 その前の試合、つまりオーストラリア戦であそこまで良いゲームをしたので、本音を言えば、そこで勝ちきりたかったところです。フランス戦はそのゲームがあったからこその結果と言えます。世界ランキング4位のフランスに対して1点差でも勝てばすごいことなのに、選手に「13点以上の差を付けなきゃいかんぞ」、「15点差以上なら2位通過だぞ」と話をして、選手たちもそれを実行しようとしてくれました。だから8点差で勝ってもそんなにうれしい顔はしてなかったんです。――大会を通して、チームが成長していったと?内海 2013年と2015年のアジア選手権の時もそうでしたが、今回もゲームを通してチームが強くなっていくのを感じました。「アジアでチャンピオンになって、五輪に出よう」。ロンドン五輪のOQTが終わってそう話したのが現実になって、「じゃあ今度は本気でメダルを狙いに行こう」と。これまでの日本からすれば夢物語です。まずは五輪に出ることができてうれしいという思いが先に来てもおかしくないのに、メダルに挑戦しようという気持ちが選手たちを変え、チームも変えました。選手だけではありません。周りの人たちは当初「いやいや、日本のバスケットが五輪でメダルなんて絶対無理だ」と思っていたはずです。でも選手や我々が本気でチャレンジしていく中で、そんな周囲の雰囲気も変わっていったように感じます。――本気の思いが周りに伝播したわけですね。内海 そう思います。それはアジア選手権で2連覇をして、選手たちにプライド、誇りが出てきたことも大きかった。そうして今日に至るまで世界のさまざまなチームとたくさんゲームしてきました。アジア選手権だけでなく、世界選手権も含めてたくさんの経験をすることで、彼女たちにも「世界で対等に戦えるんだ」という思いが非常に強くなってきたように感じます。「私たちは世界で戦えるんだ」という自信――リオ五輪に入ってもそれは崩れませんでした。内海 どの大会にもカギになるゲームがあります。リオ五輪で言えば、第1戦のベラルーシと、第2戦のブラジル。この2つに勝てば勢いに乗れると踏んでいたんです。それもまたアジア選手権などを通して経験してきたことで、カギの試合を乗り越えられればチームが強くなると分かっていました。しかし、あそこまで選手たちが対戦相手に怯むことなく、立ち向かっていけたことは私の想像を超えて評価できるものです。それが日本の誇りとなって、ベスト8にまで持って行けたのかなと。そういう意味でも選手に感謝しなければいけません。──何が彼女たちを突き動かしたのでしょう?内海 やはり『自信』です。選手一人ひとりに自信が付いていったことは非常に大きな要素です。例えば栗原三佳。彼女は2015年のアジア選手権では調子が上がらず、苦しんでいました。しかし今年度も再び招集し、オーストラリアとの国際強化試合で、最初こそ今一つ調子が上がってきませんでしたが、その後は少しずつ自信を取り戻した。逆に最後は、五輪まで好調をキープできるのかと不安になるぐらいでしたが、それでもオーストラリアとのゲームや海外遠征で本物の自信を付けてくれました。町田瑠唯もそう。「私たちは世界で戦えるんだ」という自信を付けてくれました。──そうした『自信』の有無がメンバー選考のポイントにもなった?内海 そこは自信を付けているから結果も出せるわけですよ。最終選考に関しては、チームとしての戦いを考慮して、リオで戦うための選手を選ばなければいけなかった。そこで我々にアピールできなかったら、自信がないと見られても仕方がないところです。今回外れた選手たちはそれをまた糧にして次にまた向かっていかないといけない。逆に選ばれた選手、例えば栗原などは、アジア選手権では、今回は最終的にメンバーから外れた山本千夏がフォローしてくれたところを自分一人で乗り越えなければいけないという覚悟の中で、自信を付けてきました。今回調子を落とさなかったのも、そうした思いがあったからではないかと思いますね。内海知秀ヘッドコーチが振り返るリオ五輪vol.2「真剣勝負の中で『日本のバスケットスタイル』が見えてきた」2016/09/15日本代表
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勇気と感動をもらったリオの続きは日本で! WJBLは10月7日開幕代々木第二での開幕戦にはリオで戦った代表選手6名が登場世界No.1チームであるアメリカ代表に挑んだオリンピック準々決勝から3週間が経過した。地球の裏側のリオ・デ・ジャネイロから熱狂と興奮、そして勇気と感動を届けてくれた女子日本代表選手たちが『主戦場』に戻ってくる。女子バスケのトップリーグとなるWJBLは、ちょうど1カ月後の10月7日より新シーズンがスタート。代々木第二体育館で行われる開幕戦は、JX-ENEOSサンフラワーズvs富士通レッドウェーブ。昨シーズンのファイナルと同じカードだ。オリンピックで最初に得点を獲った間宮佑圭、速攻を出し続けた司令塔の吉田亜沙美、ワールドクラスの高さで次々とゴールを挙げた渡嘉敷来夢。女子日本代表スタメンのうち、この3人はいずれもJX-ENEOSサンフラワーズの所属。さらに、アメリカ戦で3ポイントシュートを決めた宮澤夕貴も、誰よりも大声で選手たちを鼓舞し続けて何度もテレビに抜かれていたマネージャーの山崎舞子も、JX-ENEOSサンフラワーズの一員である。もう一人、今シーズンより指揮を執るのは、代表のアシスタントコーチを務めたトム・ホーバスだ。これだけオリンピック経験者が揃えば、「9連覇に向けて死角なし」と言い切ってしまいたくなる。しかし、オリンピックイヤーだからこそ、そう簡単にはいかないという思いも強い。対する富士通レッドウェーブには、ものすごいスピードで大きな相手の間をすり抜けてファンを魅了した、代表で一番小さな町田瑠唯がいる。余談ではあるが先日、近所のカフェに行くとバスケを始めたばかりの小学校3年生の女の子に出会った。話を聞くと、オリンピックを見ていたようで、憧れる存在となったのは「町田さん」と即答してくれた。控えのポイントガードとして活躍した町田が富士通レッドウェーブでは先発となり、吉田とマッチアップする。開幕戦のベラルーシ戦で3ポイントシュートを決めて勢いづけた長岡萌映子もおり、若い2人がオリンピックでの課題を克服し、レベルアップして女王倒しに挑む。チケットは最高3200円、リオ戦士6人が集う開幕戦はお得!富士通レッドウェーブには、昨年のアジアチャンピオンの立役者でありながら、最終選考でリオ行きを絶たれた三谷藍、山本千夏、篠崎澪がいる。その悔しさたるや想像を絶することだろう。その悔しさとともに自らの実力を示すべく、オリンピアンとのガチンコ勝負は避けられない。WJBL開幕とともに、新たなる夢をつかむ戦いの火蓋が切って落とされる。開幕戦のJX-ENEOSサンフラワーズvs富士通レッドウェーブは、10月7日(金)19時より代々木第二体育館で開催。すでに販売しているチケットは、一番高くても3200円と「お財布に優しい料金」と言えよう。リオ五輪を戦った日本代表の半分となる6選手を一挙に見られるとは、何ともお得である。3ポイントシュートであのカーメロ・アンソニーを驚かせた栗原三佳と近藤楓が所属するトヨタ自動車アンテロープスは、王新朝喜の三菱電機コアラーズとスカイホール豊田で、シックスマンながら得点を決めていった髙田真希のデンソーアイリスは、日本の斬り込み隊長の本川紗奈生とフランス戦の3ポイントシュートが印象的に残る三好南穂のシャンソン化粧品シャンソンVマジックとウィングアリーナ刈谷で、それぞれ10月8日(土)に開幕戦を迎える。テレビやネット中継を通じて見た日本が誇るスピードを今度は間近で体感できるとともに、オリンピックで成長した姿が見られることを心待ちにしている。代々木第二体育館での開幕戦と同じ日、港区スポーツセンターにて羽田ヴィッキーズvs山梨クィーンビーズも開幕戦を迎える。プロと言っても過言ではない、地域名を冠にした両チームの戦いや会場での取り組みも一見の価値あり、だ。WJBL(バスケットボール女子日本リーグ)公式サイト2016/09/07Bリーグ&国内
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[現地レポート]強すぎたアメリカと、今後の期待が高まる日本代表まさにやられたらやり返すとばかりの『倍返し』さすがにアメリカは強かった。いや、次元が違った。リオ・デ・ジャネイロ五輪、女子バスケットボール準々決勝で日本代表『アカツキファイブ』は、五輪6連覇を目指す絶対女王のアメリカに真っ向から勝負を挑み、64-110と撃沈した。序盤は本川紗奈生の強引なカットインからのレイアップや栗原三佳の3ポイントシュートなどで勢いを付けた日本だったが、徐々にアメリカも本領を発揮。第2ピリオドの途中には46-48と一時は2点差まで肉薄したが、第2ピリオド終盤にリードを8点まで広げられると、第3ピリオド以降は18-54とトリプルスコアで圧倒された。予選ラウンドでは、面白いように決まった司令塔の吉田亜沙美とエース渡嘉敷来夢のホットラインも、武器となった本川のドライブも、栗原の3ポイントシュートも、すべてアメリカのパワーと強さの前に封じられた。「決して(日本の)調子が持続しなかったわけではない。(アメリカのプレーは)想定内といえば想定内、想像以上といえば想像以上のことが想定内。なんて言っていいか分からないですが、スーパープレーヤーばかりなので」この日、得意の3ポイントを4本沈めた栗原の言葉からも、日本の出来云々ではなく、アメリカとの力の差は歴然で、規格外の相手に成す術なしだったことがうかがえた。筆者は、予選ラウンド最終戦となったフランス戦に続き、このアメリカ戦を現地で取材、観戦したが、正直、フランス戦で見えた微かな期待は、ハーフタイムを前に泡と消えた。本川が、栗原が、渡嘉敷が得点しようとも、いとも簡単に返されてしまうばかりでなく、本気のアメリカを敵に回し、2点挙げれば2点ではなく4点、6点という具合に、まさにやられたらやり返すとばかりに『倍返し』に遭うようで、勝機を探ることすらおぼつかなかった。アメリカに驚かされたのは高さやパワーはもちろん、その技術とシュート成功率の高さ。それには、日本チームの中で最も小さい身長162センチの町田瑠唯も「分かってはいたんですが、あそこまで高い確率でシュートを決められてしまうと」と舌を巻いた。その意味では、返す返すも予選ラウンドで3勝(2敗)を挙げながらも、グループ4位通過となってしまったことが悔やまれる(その結果、グループB首位のアメリカと準々決勝で当たることに)。エースの渡嘉敷も「最後にアメリカとやりたかったけど、少し早く当たりすぎました」と振り返ったが、それがホンネだろう。先の予選ラウンドの最終戦で、強豪フランスから金星を挙げながらも、得失点差で4位に甘んじた選手が、ほとんど喜びの表情を見せることなく、まるで負けたように暗かったのはまさにこのせいだったのだ。日本は3位抜けにはフランス戦で13点差以上、2位抜けには15点差以上をつけての勝利が必要だったが、それができるとできないとでは天と地ほどの差があった。栗原や町田らの言葉を聞いても、ひょっとするとアメリカはその名前と実績で、戦う前から相手の戦意を奪ってしまうほどの強さがあったのかもしれない。フランス戦後は特に本川の悔しそうな姿が印象的だった。その本川はアメリカ戦もフランス戦に続き随所に強気なプレーを見せ、栗原と並ぶ12点を挙げたが、アメリカは気持ちでどうにかなる相手ではなかった。男子のチームUSAが気軽に試合観戦に訪れることができたのも、会場がメインパーク内のカリオカ1だったからだ。結果、日本vsアメリカは多くの観客を集め盛況となった。トリッキーなプレーでブラジルの観客を虜にした吉田現地観戦する中、アメリカ戦で一つ違ったのは、この日の会場がリオ五輪のメインパークにあるカリオカ1で行なわれたこと。これまで女子バスケの試合はユース・アリーナと呼ばれる五輪のメイン会場から車で20分ほどの場所を中心に行われてきたが、準々決勝以降はすべてカリオカ1で開催される。カリオカ1はちょうど五輪会場の中央あたりに位置し、隣のカリオカ2では柔道やレスリングが行われており、周囲には体操や水泳、テニスの会場が並んでいる。観戦者にとってはアクセス面でもありがたく、試合開始直後には空席が目立った観客席も後半に入った頃には6~7割が埋まり、会場には日の丸の国旗も目立ち、日本からのファンの姿も数多く見かけることができた。ちなみに、先のフランス戦でトリッキーなプレーを連発した吉田には、地元ブラジル人の観客からも「ヨシダッ! ヨシダッ!」のヨシダコールが起きたが、サッカー同様、ブラジル人は勝敗だけでなく見ていて楽しませてくれるプレーを好む。この日のアメリカ戦では点差が開いてしまったことで、終盤には場内でウェーブが起きてしまったが(ウェーブは退屈な試合の象徴だ!)、全体として見ればDJの存在やタイムアウトで試合が止まった際にはパフォーマーが妙義を繰り出すなどして盛り上がりを見せていた。最終的にアメリカの前に大敗を喫してしまった。とはいえ、グループリーグでアメリカに次ぐ世界ランク2位のオーストラリアに第4ピリオドの途中まで最大16点のリードを奪う大熱戦を演じ、フランス、ベラルーシ、ブラジルから3勝を挙げるなどした日本のリオでの戦いぶりは評価されるべきだし、今後に大きな期待を抱かせてくれたことは事実だ。本川が「日本の戦いぶりは示せたと思うし、この結果は誰も想像していなかったと思う」と振り返ったように、アメリカ戦の敗戦一つですべてが否定されるものではない。中には「もしここでアメリカと当たっていなければ……」と、ひょっとするとメダルに届いたかもしれないという思いを口にした選手もいたが、そうした選手は大きな手応えと自信を手にしたことだろう。渡嘉敷はアメリカ戦を終えて「ここまで来られたのも、ここで負けたのも実力」としたが、バスケットボールは球技の中でもアップセットが少なく実力が結果に反映されやすい性質がある。一方、内海知秀監督が「これが実力通りの結果だと思わない」と話したように、もし準々決勝の相手がアメリカでなかったら別の結果になっていたとしても不思議ではなかった。大会を通じての戦いが素晴らしかっただけに、出足でつまづいたトルコ戦を含め、オーストラリア戦、フランス戦の一つでも結果が違っていたら、との思いは強い。アメリカ戦での『世紀の番狂わせ』はならなかったが、3大会ぶりの五輪の大舞台で日本らしいスピードと組織力に長けたバスケで魅力を存分に示したアカツキファイブ。メダルにはもう一歩、二歩届かなかったが、4年後の東京五輪に向けて期待が高まる戦いを見せてくれたことだけは間違いない。日本からも多くのファンが訪れ、試合を重ねるごとにその数は増えていった。地元ブラジル人の観客も巻き込んでAKATSUKI FIVEをサポートした。2016/08/17日本代表
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ギアを上げたアメリカに屈するも、未来の一歩となるベスト8! 日本代表選手の寸評最後まで日本のバスケを展開しようと試み、未来へつなげるリオ五輪の決勝トーナメント準々決勝、日本はアメリカと対戦した。大会5連覇中のアメリカに、日本は序盤から攻守で足を使い、また3ポイントシュートも高確率で決まって食らいついた。しかし後半、アジャストし、ギアを2つくらい引き上げたアメリカに対して次の一手が出ない。疲労の色も明らかに濃く表れ、一気に突き放されてしまった。それでもベンチから出てきたすべての選手が、最後まで日本のバスケットを展開しようとした点は未来につながる。以下、リオ五輪最後となる女子日本代表AKATSUKI FIVEの寸評となる。吉田亜沙美吉田が最も得意とするディフェンスのスティールから、ゲームは動き出す。その後もスー・バードのドライブを後ろからカットしたり、足と手を動かしたディフェンスで3つのスティールを記録。オフェンスでも渡嘉敷、間宮の得点シーンを演出するなど8アシストをマーク。さらには得点でもダイアナ・タウラシを前にドリブル1対1からの3ポイントシュートを決めるなど7得点を挙げた。惜しまれるのは両チームトップの6つのターンオーバーを犯したことか。チャレンジすればこそのミスとも受け取れるが、ミスが命取りになることを改めて痛感したはずだ。それでも最後まで司令塔として、キャプテンとして、チームを引っ張った姿は今大会の日本のMVPと言っていい。渡嘉敷来夢リバウンドが3つに終わった点は悔やまれる。むろん相手はアメリカ。高さもパワーもあることは彼女自身が一番分かっていて、リバウンドを取ることの難しさも知っていたはず。その上で、もっとガツガツしたリバウンド争いが見たかった。WNBAでのプレイタイムの少なさがゲーム勘を失わせ、体力的にも厳しくなった大会終盤、思い切りの良さの反面、プレイの精度という意味では、4年後に向けて大きな課題を残した。それでもアメリカを相手に14得点を挙げたことはエースとしての面目躍如である。ミドルシュートの精度は少し欠いたが、それでも3ポイントライン一歩内側でのジャンプシュート、ドリブル1対1など、まだまだ伸びしろが大きいところを見せてくれた。2020年に期待大!本川紗奈生両チームを通じた最初のポイントを得意のドライブでスタートさせ、リードを奪われた直後にもコーナーからの3ポイントシュートを沈めるなど、チームに勢いを与えることに成功した。またチームに中盤、チームの足が止まりかけた時に、強引なドライブでフリースローを取るなど、切り込み隊長としての役割を十分に果たした。欲を言えば、3ポイントシュートの精度をもう少し上げたかったが、それは今後の課題だろう。本川は1対1から果敢にドライブを仕掛け、3ポイントシュートも積極的に狙うことで、アメリカの堅守を崩すきっかけを作った。栗原三佳前半だけで4本の3ポイントシュートを沈めるなど、日本のカギとなるシューターとしての働きを十分に発揮してくれた。しかも1本目、4本目はステップバックからの難しいそれだったし、3本目、第2クォーターの最初に飛び出した、渡嘉敷のパスを受けたクイックモーションなど3ポイントシュートに至るまでのバリエーションの多さを、改めて示した。後半、アジャストされてからは2本のシュートチャンスを落としてしまったが、それでもドライブでフローターを狙うなど(これも外れたが)アタックしようとする姿勢は十分に見られた。スティールやリバウンドなど、地味なところでもチームに大きく貢献した。間宮佑圭高さとパワーのあるアメリカのインサイド陣に対して、最後まで体を張って、我慢のディフェンスを披露した。オフェンスでは、精度こそ欠いたが、怯まずに打ち続けた点は評価できる。精度については、あの高さ、間合いでいかに決めきるかを今後の課題にしてもらいたい。また高さで劣るリバウンドをどう解決するかも、日本屈指のセンターとしての大きな宿題である。髙田真希大会を通して、安定したミドルシュートとドライブでチームに貢献。第3ピリオドのドライブは良い判断で実行され、見ていて気持ち良くなるプレイだった。どんな状況でも落ち着いて、自分のプレイが出せる点は、日本に欠かせないシックスマンと言える。欲を言えば、もう少しプレーレンジを広げたいといったところだろうか。町田瑠唯思いきった攻撃参加は、さすがに高さのあるアメリカだけに難しかったが、それでも攻撃姿勢を失ってはいなかった。ドライブはブロックされてしまったが、その後にステップスルーからの得点を決めたことは、今後の自信にもなるだろう。ペイントエリアまで潜り込む勇気と技術があればと思うが、それは今後の課題としたい。小さいながらも世界で戦えることを証明した。アメリカの高さに苦戦は免れなかった町田だが、それでも今大会では小さいながらも世界で戦えることを証明した。近藤楓得点こそ3ポイントシュート1本の3得点に終わったが、大会を通じて見せた攻撃的な姿勢をアメリカ戦でも見せてくれた。またディフェンスでも、アメリカのエース、マヤ・ムーアのドライブコースに入って、しっかりと体の正面で止めるなど、お手本のようなディフェンスを見せた。宮澤夕貴予選ラウンドのブラジル戦に次ぐ、リオ五輪2試合目の登場だったが、渡嘉敷のパスを受けてコーナーからの3ポイントシュートを決めて爪痕は残した。外れたものの、もう1本3ポイントシュートを打つなど、最後まで攻めの姿勢を貫いた。この借りは4年後に返してもらおう。長岡萌映子アタックからターンアラウンドを放ったが決まらず、ドライブに行けばブロックされるなど無得点に終わった。しかし少ないプレータイムながら果敢にアタックしたことは、「モエコらしさ」の解放であり、次につながる。目標とするアメリカの選手たちを目の当たりにし、肌を交えたことでさらなる向上心も芽生えたはずだ。王新朝喜宮澤同様、予選ラウンドのブラジル戦以来の出場だったが、リバウンド争いに加わったり、ペイントエリアで1対1を仕掛けるなど、自分の力を発揮しようという姿勢は見られた。大会を通じてチームで唯一無得点に終わったが、その高さはチームに欠かせないものだった。三好南穂4分14秒の出場で3ポイントシュートを2本放ったが、フランス戦のようにリングを通過することはなかった。それでもベンチで作戦ボードを内海ヘッドコーチに差し出し、すぐ横で指示を聞くなど、ベンチメンバーの在り方を示す意味では、裏のMVPと言っていい。結果的には、いわゆる「100点ゲーム」で敗れたが、前半で突き放されてもおかしくない実力差の中で、栗原、吉田の3ポイントシュート、渡嘉敷のバックカットからの得点などで2点差にまで詰め寄るシーンもあった。そうした諦めない姿勢は、今大会の日本が世界に示した「ジャパンズウェイ」だ。高さによるリバウンドの支配は、新しい戦術が生まれない限り、これまでも、またこれからも、永遠のテーマとして残る。それだけにミドルシュートの精度は、ポジションに関係なく高めていきたいところ。その昔、日本代表選手を多く輩出していたシャンソン化粧品の体育館で「シュートは決める」という張り紙を見たことがある。「シュートを決める」という意志ではなく、「シュートは決めるもの」という当たり前の感覚にしなければ、世界とは互角に戦えないという意味だろう。スピードを生かしたドライブや3ポイントシュートもさることながら、ペリメータ―のシュートをいかに正確に沈めるかが、今後のテーマになる。また終盤、明らかに見えた疲労の色を払拭するためにも、12名全員が使えるようなチーム作り、ベンチワークも必要となる。それにはもちろん12名の選手個々の実力も、世界基準に上げなければいけない。2020年はあっという間に来る。 特集 女子バスケ日本代表 メダルへの挑戦[指揮官の全選手紹介]リオ五輪で世界に挑むバスケットボール女子日本代表12名リオ五輪を戦う女子バスケ日本代表12選手、今に至る『関係性』を探るvol.1 吉田亜沙美 NEVER STOP――キャプテンは進み続けるvol.2 間宮佑圭 史上最強のインサイド陣を支える『我慢』の女!vol.3 本川紗奈生 勝ち気な切り込み隊長、故障を乗り越えリオに挑むvol.4 髙田真希 最強のシックスマン、リオで輝け!vol.5 栗原三佳 修行の先につかんだリオでの『爽快シュート』vol.6 渡嘉敷来夢 リオで進化する日本のエースリオ五輪内定者決定! 熾烈な競争の裏側と12選手の覚悟リオ五輪へ向け準備を進める女子日本代表、欧州遠征での強化のポイント女子日本代表、オーストラリアを迎えての国際強化試合が今日からスタートアジア女王の日本代表、リオ五輪でのメダル獲得の可能性を探る間宮佑圭が語るバスケ部時代vol.1「スカウトされちゃうんじゃ? とふざけていたら」髙田真希が語るバスケ部時代vol.1「男勝りだった幼少期、空手経験もプラスに」栗原三佳が語るバスケ部時代vol.1「考えるバスケとの出会い」女子日本代表 関連記事一覧ページ2016/08/17日本代表
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女子バスケ日本代表、王者アメリカに善戦するも終盤に足が止まり「メダルへの挑戦」が終わる王者アメリカを相手に一歩も引かず、乱打戦に持ち込むリオ五輪の女子バスケットボールは決勝トーナメントへ。「走るバスケット」で予選ラウンドの台風の目になったAKATSUKI FIVEは、王者アメリカと対戦した。日本代表のスターターはこれまでと同様、吉田亜沙美、本川紗奈生、栗原三佳、渡嘉敷来夢、間宮佑圭。日本は立ち上がりから格上のアメリカに持てる力すべてをぶつける強い意気込みでこの大一番に臨んだ。ファーストプレーで吉田が長身のブリトニー・グライナーからボールを奪うと、本川が大胆なドライブで1対1を制し、日本が先制点を奪う。序盤から日本はハイテンポなオフェンスを展開し、本川と栗原の3ポイントシュートも決まって快調に得点を重ねていく。だがアメリカも打ち合いに乗り、高確率でシュートを決めて追いつ追われつの流れに。本川が再び強引なドライブから得点をもぎ取り、吉田から間宮のハイローが決まり、渡嘉敷がタフシュートを沈める。だがアメリカはそれ以上にハイペース。3ポイントシュートでは好調の日本と同じ精度を保ち、オフェンスリバウンドを拾ってのセカンドチャンス、サードチャンスを得点につなげることで日本をじわじわと引き離す。23-30でスタートした第2ピリオド、ドリブルで仕掛けると見せ掛けた渡嘉敷のパスをフリーで受けた栗原の3ポイントシュートで日本がさらに勢いを増すかと思われたが、吉田と渡嘉敷がベンチに下がって不在になると連続失点を喫してしまい、28-40と逆に突き放されてしまう。ここでベンチから戻った吉田が、スティールからそのまま速攻を仕掛ける。レイアップは相手のファウルで止められ、吉田はそのままゴール裏まで吹き飛ばされるも、気迫に満ちたプレーは味方の士気を呼び覚まし、アメリカに傾きかけた試合の流れを引き戻した。ここまでシュートに苦労していた間宮が2連続得点を挙げ、栗原が普段のキャッチ&シュートではなくバックステップで自らフリーを作り3ポイントシュートを決めると、吉田が正面からの3ポイントシュートをねじ込んで42-46と肉薄。その後も本川のアシスト、吉田のアシストを受けた渡嘉敷が2本のシュートを決めて46-48とついにワンポゼッション差に迫るも、追い詰められたアメリカがここから真価を発揮。最後の1分半で8-0のランを決められ、46-56と10点差で前半を終えた。価値ある先制点を筆頭に、この試合でも本川は臆することなく敵陣に切り込み、オフェンスを引っ張った。日本の持ち味「走るバスケット」をアメリカが展開後半の立ち上がりは両者ディフェンス合戦という我慢の展開。本川が速攻から体勢を崩しながらのレイアップを決め、続くプレーでもフック気味のレイアップを沈める。ところがその後の3分間は得点が決まらず。その間にアメリカの3ポイントシュート攻勢で突き放されてしまう。第3ピリオド残り4分15秒、ディアナ・トーラシにジャンプシュートを決められ51-70と点差を広げられたところでタイムアウトを取るも、アメリカに傾いた流れを止めることができない。ピック&ロールで有利な状況を作っても、最後の1対1を決められず。前半はタフショットをことごとく沈めてきた渡嘉敷も、さすがに試合を通じて決め続けることはできない。終盤になってアメリカのチームファウルが5つに達し、渡嘉敷が2本のフリースローを決めてようやく反撃の足掛かりを作る。髙田真希の緩急を生かしたドライブ、吉田から渡嘉敷のハイローが決まり連続得点を挙げるも、3ポイントシュートを決められ流れに乗れない。第3ピリオドを59-81と22点差で終える。勝負の第4ピリオド。ただここで初めて日本はピリオド最初の得点を奪われ、そのまま8-0のランを浴びて59-89と30点差に。第3ピリオドの後半から、日本の運動量は落ち始めていた。日本の攻守の要である吉田と渡嘉敷の2人が絶え間なくフル回転でのプレーを続けた結果、最終ピリオドになってチームはガス欠に陥ってしまったのだ。ここに来て「足」の差が歴然となった。日本の持ち味である「走るバスケット」をアメリカが展開。アメリカはベテランも多いがプレータイムのシェアを徹底して行い、どの選手も常にフレッシュな状態でコートに立っていた。日本が攻撃に転じても、足が動かずボールを持つ吉田をただ眺めるだけ、という日本らしからぬシーンもあった。この点、内海知秀ヘッドコーチの起用法を責めるわけにはいかない。インサイドのディフェンス力を保つためには渡嘉敷を下げるわけにはいかなかったし、吉田のギャンブル的なゲームメークが当たり続けていたからこそ、後半までアメリカのハイペースに食らい付くことができていたのだ。セカンドユニットに切り替えた瞬間に突き放されるのがほぼ確実となれば、吉田と渡嘉敷に託し続けるしかなかった。日本の長所をすべて受け止め、なおかつそのはるか上を行ったアメリカ。スー・バードの故障は決して小さくないアクシデントだったはずだが、全員でカバーした。ローテーション起用で闘争心を煽られたアメリカに屈するだが、40分間ずっと走り続けることはできない。そしてアメリカは大量リードがあっても攻め手を緩めることがなかった。厳格なローテーションによりベンチで待たされる間に「腹を空かせた」アメリカの選手たちは、コートに入るやいなや溜めておいた闘争心を爆発させた。162cmの町田瑠唯がドライブから放つレイアップを、203cmのグライナーがブロックショットで叩き落す。ベンチから出た日本の選手たちも持ち味を発揮しようとしたが、アメリカの闘争心が上回った。終わってみれば64-110、46点という大差を付けられての敗戦となった。第2ピリオド終盤までは互角の戦いを演じ、ここまででアメリカを一番苦しめたことは間違いない。それでも、前半こそ互角だったスタッツにしても、終わってみればフィールドゴール率は日本の34%(71本中24本)に対しアメリカは65%(72本中47本)と圧倒された。リバウンドは日本が26、アメリカが50でほぼダブルスコア。出場時間ではスー・バードが序盤でひざを痛めた関係で、トーラシの出場時間が増えて27分半のプレーとなったが、この試合でもプレータイムをしっかりシェアしていたことが分かる。一方の日本は渡嘉敷が35分46秒とほぼ出ずっぱり、栗原が29分、吉田が28分、本川が25本と、主力選手を引っ張らざるを得なかった。「メダルへの挑戦」はこれにて幕引きを迎えた。だが、AKATSUKI FIVEはまだ若く、多くの伸びしろを持つチームであることは間違いない。彼女たちの「次なる挑戦」に期待したい。タフショットを何本も決めた得点力はもちろん、アメリカの猛攻をしのぐにはインサイドでの渡嘉敷の奮戦が欠かせなかった。2016/08/17日本代表
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リオ五輪女子バスケ、予選ラウンドを終えて得点ランク4位に渡嘉敷来夢、アシスト女王は吉田亜沙美得点ランクの1位と2位は日本を相手に大量点を挙げた2人リオ五輪の女子バスケットボール競技は予選ラウンドを終えて一段落。ここでスタッツを見てみよう。得点ランキングは1位がエリザベス・キャンベージ(オーストラリア)の112点、2位がラトーヤ・サンダース(トルコ)の110点と、日本を相手に大量得点を奪った2人が上位を占める。3位は93点のアルバ・トーレンス(スペイン)で、続く4位にAKATSUKI FIVEの渡嘉敷来夢が88点でランクインした。アシストでは吉田亜沙美が44を記録してランキング1位。2位のスー・バード(アメリカ)の30に大差を付ける独走ぶりだ。ただしターンオーバーの回数は吉田の18に対しバードはわずか3と安定感では後者に分がある。また吉田はスティールでも12を記録し4位に入った。日本の生命線である3ポイントシュートの成功数では栗原三佳がディアナ・タウラシ(アメリカ)と並び20本を決めてトップ。ただ、栗原は50%(40本中20本)と確率も良いものの、タウラシは60.6%(33本中20本)とその上を行く。3ポイントシュート成功率になると1位は70%(10本中7本)のマルタ・シャルガイ(スペイン)で、栗原は5位となる。他には本川紗奈生がフリースロー成功率86.7%(15本中13本)で4位につけている。日本代表の司令塔である吉田は、5試合で44アシストという数字をたたき出しアシスト数トップを走っている。出場時間をシェアするチームUSAはチームスタッツで圧倒興味深いのは主要スタッツの上位にアメリカの選手がほとんど入っていないこと。これには理由がある。タレント揃いの『チームUSA』は予選ラウンドを通じてローテーション起用を徹底しているのだ。絶対的な司令塔であるはずのスー・バードでも平均21分強の出場にとどまっている一方で、最もプレータイムが少ないタミカ・キャチングスでも平均11.7分の出場。準々決勝のアメリカvs日本に向け、中1日のアメリカに対し日本は中2日と有利だが、実際コンディションに差はないと見たほうがいいだろう。ちなみにWNBAのシアトル・ストームで渡嘉敷をベンチに追いやったスーパールーキーのブリアーナ・スチュワートはチームで2番目にプレータイムが短い12.6分。もっとも、プレータイムをシェアした結果として個人スタッツでは目立たないアメリカも、チームのスタッツとなれば圧倒的だ。フィールドゴール成功率は57.7%(350本中202本)で、2位オーストラリアの46%(311本中143本)、3位の日本の45.5%(332本中151本)を大きく上回る。得点数520も圧倒的。2位のオーストラリアでさえようやく400点に乗せたところで、その他10チームは300点台にとどまっている。同じくアシストでもアメリカは151を記録。2位オーストラリアが111と大差が付いた。日本は個人スタッツで吉田がアシスト首位に立つも、チームのアシスト数94は5位の数字となる。チームUSAはプレータイムのシェアを徹底している。スー・バードもベンチで余裕の表情。 特集 女子バスケ日本代表 メダルへの挑戦[指揮官の全選手紹介]リオ五輪で世界に挑むバスケットボール女子日本代表12名リオ五輪を戦う女子バスケ日本代表12選手、今に至る『関係性』を探るvol.1 吉田亜沙美 NEVER STOP――キャプテンは進み続けるvol.2 間宮佑圭 史上最強のインサイド陣を支える『我慢』の女!vol.3 本川紗奈生 勝ち気な切り込み隊長、故障を乗り越えリオに挑むvol.4 髙田真希 最強のシックスマン、リオで輝け!vol.5 栗原三佳 修行の先につかんだリオでの『爽快シュート』リオ五輪内定者決定! 熾烈な競争の裏側と12選手の覚悟リオ五輪へ向け準備を進める女子日本代表、欧州遠征での強化のポイント女子日本代表、オーストラリアを迎えての国際強化試合が今日からスタートアジア女王の日本代表、リオ五輪でのメダル獲得の可能性を探る間宮佑圭が語るバスケ部時代vol.1「スカウトされちゃうんじゃ? とふざけていたら」髙田真希が語るバスケ部時代vol.1「男勝りだった幼少期、空手経験もプラスに」栗原三佳が語るバスケ部時代vol.1「考えるバスケとの出会い」女子日本代表 関連記事一覧ページ2016/08/15日本代表
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上位通過は果たせずも、フランスに価値ある勝利を挙げた女子バスケ日本代表の寸評勝ち切る姿勢を見せ、世界4位のフランスを終始圧倒リオ五輪予選ラウンドの最終戦は、世界ランキング4位のフランスが相手。予選ラウンドを2位通過するためには15点差以上の勝利が必要で、13点もしくは14点差の勝利なら3位通過、それ以下での勝利か負けると4位通過という計算が絡んでくる複雑な一戦となった。結果、勝利は収めるも点差は8止まり。足が止まる時間帯、ファウルトラブル、手痛いターンオーバーとネガティブなポイントもあったが、勝っていながらファウルゲームを仕掛けたり、3ポイントシュートを得意とする選手を最終盤に投入するなど、勝敗だけでなく、最後まで得失点差でも諦めなかった姿勢はチームとして評価できる。吉田亜沙美試合前の円陣で「勝つぞ!」と声を張り、チームを鼓舞した姿勢がフランス戦の勝利に結び付いた。プレーでも、前半はチームメートを生かしながら、チャンスがあればシュートを狙って9得点。後半になってチームメートに疲れが見え始めると、得意のディフェンスから速攻につなげたり、ドライブ、ジャンプシュート、3ポイントシュート(ブザービーター!)など、様々な攻撃で得点を量産した。チームトップの24得点(うち第3ピリオドだけで11得点)。あえて厳しい注文をつけると、その攻め気を逆手に取られたターンオーバーが悔やまれる。勝ったのは吉田のおかげ、得失点差で届かなかったのは吉田のミスと言われても仕方がない(もちろんそれだけではないが……)。世界ナンバーワンの司令塔になるために、決勝トーナメントでその課題に挑んでもらいたい。吉田は試合を通して仲間を鼓舞し続けるとともに、積極的なプレーを貫き24得点を挙げた。本川紗奈生序盤の勢いを生み出したのは、間違いなく本川のドライブ。フランスとしては栗原の3ポイントシュートとあわせて警戒していたはずだが、それを凌駕するスピードはまさに世界トップクラスと言っていい。多少のコンタクトを受けてもねじ込む強さも戻ってきた。フリースローも確実に沈めて、前半だけで17得点をマーク。しかし後半はプレータイムが少なかったこともあって無得点に終わっている。欲を言えばこの試合では1本のみだった3ポイントシュートの確率をもう少し上げたい。渡嘉敷来夢思い切りのよいドライブや、ハイポストからのミドルシュート、そしてゴール下でのディフェンスやリバウンドで、本川とともに前半を引っ張った(前半は9得点7リバウンド)。ただ、疲労からか徐々に動きが重くなり、4つのファウルを犯した点は次戦以降の課題。それでも第4ピリオド残り6分49秒の場面で登場すると、町田のジャンプシュートを引き出すスクリーンをかけるなど、自分のできるところでチームに貢献。エースとして、ファウルアウトをせずに最後までコートに立ち続けた点は評価できる。過去4試合に続き攻守両面で存在感を発揮した渡嘉敷。後半はファウルトラブルもあり失速するも最後までプレーを続けた。栗原三佳シューターの宿命か、今日も厳しいマークを受けてシュートを3本しか打てなかった(うち3ポイントシュートは1本のみ)。無得点に終わったが、強いて言えば、1本は決めたかった。それでもシュートチャンスを求めて最後まで動き回ったことは、一方でシューターとしての意地が垣間見られた。またミスもあったが体を張ったディフェンスやボックスアウト、そしてリバウンドに飛び込む姿勢など、直接得点につながらないところでチームに貢献している。間宮佑圭間宮にとっても試練の予選ラウンドとなった。早くリズムをつかみたかったからか、最初のステップスルーが強引すぎて、逆にリズムを失ったようにも見えた。その後も何度かあったチャンスも決められなかった。それでもオフェンスファウルを取るなど、ディフェンスで体を張り続けている点は評価できる。サイズのないセンターとしては、準々決勝でも我慢が求められる。町田瑠唯約10分の出場で3ポイントシュート1本を含む8得点を挙げたことは、バックアップのポイントガードとして合格点。ボールもよくプッシュし、ゲームのテンポを上げていった。しかし第2ピリオドの終盤、相手がうまかったとはいえボールを奪われ、ブザービーターを決められた点は今後の課題だろう。個人的には、もう少し出場時間を与えてもいいと思える働きをしている。髙田真希6得点に終わったものの、シックスマンとしての役割は果たしたと言っていい。持ち味でもあるミドルシュートとドライブを駆使して、積極的にフランスゴールに迫った。ディフェンス、リバウンドでも自らの持ち味を発揮したが、最終盤の追い上げの場面で犯したファウル(スクリーンプレーで腰を使ったと判定された)が痛かった。オフェンスが停滞した時間帯にしぶとく得点を挙げる持ち味を発揮した髙田。シックスマンとしての役割は果たした。近藤楓安定した積極性を見せて、第3ピリオドの中盤に連続3ポイントシュートを沈めた点は、日本に欠かせないバックアップとしての役割を十分に果たした。また体を張ったディフェンスで相手のターンオーバーを誘った点も評価できる。不用意なファウルを犯したところは反省点だが、この働きを継続してもらいたい。三好南穂第4ピリオド残り25秒からの出場だったが、得失点差を考えたベンチの思惑をしっかりと理解し、ステップバックから3ポイントシュートを沈めた点は高評価(その時点でリードを11点差にした)。一瞬ではあったが、チームを始め、多くの人々に期待を持たせる3ポイントシュートだった。長岡萌映子プレータイムが伸びずに苦しんでいることは想像できる。バックアップの難しさを痛感しているところだろう。その意味で言えば、外れたとはいえ、速攻から3ポイントシュートを放った点、リバウンドに絡んだ点は、今の彼女にできる最大限の働きだろう。結果的に得失点差で予選ラウンド4位通過となり、準々決勝で世界ランキング1位のアメリカと対戦する可能性が濃厚になった。反省点もあるが、これまでの女子日本代表の世界での戦い方(世界選手権を含む)を考えると、フランスに勝利したこと自体が評価に値する。フランスも得失点差を考慮して、最後は「負けても13点以下ならよい」と考えていたはずだから、つまりは日本がそこまで追い詰めた証拠でもある。「アジアを勝ち抜いて、世界の舞台に立つバスケット」から、次は「世界で上位に食い込むためのバスケット」を求める必要がある。個人としても、チームとしても、それを痛感できるゲームだったはずだ。準々決勝でも、単に経験を積むためのゲームでなく、アメリカを今の日本のバスケットで倒しにいってもらいたい。 特集 女子バスケ日本代表 メダルへの挑戦[指揮官の全選手紹介]リオ五輪で世界に挑むバスケットボール女子日本代表12名リオ五輪を戦う女子バスケ日本代表12選手、今に至る『関係性』を探るvol.1 吉田亜沙美 NEVER STOP――キャプテンは進み続けるvol.2 間宮佑圭 史上最強のインサイド陣を支える『我慢』の女!vol.3 本川紗奈生 勝ち気な切り込み隊長、故障を乗り越えリオに挑むvol.4 髙田真希 最強のシックスマン、リオで輝け!vol.5 栗原三佳 修行の先につかんだリオでの『爽快シュート』リオ五輪内定者決定! 熾烈な競争の裏側と12選手の覚悟リオ五輪へ向け準備を進める女子日本代表、欧州遠征での強化のポイント女子日本代表、オーストラリアを迎えての国際強化試合が今日からスタートアジア女王の日本代表、リオ五輪でのメダル獲得の可能性を探る間宮佑圭が語るバスケ部時代vol.1「スカウトされちゃうんじゃ? とふざけていたら」髙田真希が語るバスケ部時代vol.1「男勝りだった幼少期、空手経験もプラスに」栗原三佳が語るバスケ部時代vol.1「考えるバスケとの出会い」女子日本代表 関連記事一覧ページ2016/08/14日本代表