
『ゲーリー・ハリス』の検索結果
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大記録のニコラ・ヨキッチとナゲッツが進める「センターを中心にしたチーム作り」シュートミスなし、ターンオーバーなしのトリプルダブル ナゲッツのホーム開幕戦は注目のデアンドレ・エイトンを擁するサンズが相手。エイトンはリバウンドの強さだけでなく、シュートの上手さや的確にパスアウトするビジョン、スピードに対応出来るディフェンス力を示し、その才能を高く評価されていますが、現在のNBAでは「センターを中心にチームを構築する」のは難しいという理由からドラフト1位の価値があるか疑問視する声もありました。 しかし、この試合でエイトンとマッチアップしたニコラ・ヨキッチによって「センターを中心にしたチーム作り」を目の当たりにすることとなります。 ヨキッチは3ポイントシュート3本を含む11本のシュートアテンプトすべてを決めて35点を奪います。現代的なセンターと言うにはスピードのないヨキッチですが、ゆっくりとした動きながら身体の幅を使いエイトンを押し込み、小さなフェイクでシュートを打つスペースを作ってフックシュートを決めれば、同じような形でもハイアーチのシュートにしたり、フィンガーロールのようにボードを利用したシュートにしたりと、細かい緩急をつけたポストプレーと、ほとんどジャンプしないにもかかわらずブロックさせないシュートテクニックで相手を翻弄します。 3本決めた3ポイントシュートにしても、パスをするような視線のフェイクから打ったかと思えばピック&ロールから打ち、最後はほとんど動かずパスを待ってのキャッチ&シュート。共通するのはすべて味方の動きを利用して打っていること。個人技でアウトサイドから決めるのであれば、「センター」が敢えて打つ必要はないのですが、必ず味方と連動しているからヨキッチの得点は効果的になっていきます。 アウトサイドシュートを得意とするセンターは増えてきましたが、3ポイントシュートを多く打つセンターはインサイドのプレーが減り、シュート成功率も落ちてしまう傾向があります。ですが、この試合のヨキッチは中でも外でもバランス良く、そして完璧にシュートを決め続けました。華麗なパスワークからのシュートもあれば、フィジカルなインサイドプレーでのシュートも決めるからこそ「センターとしての価値」を示しています。 しかし、単に得点力があるだけではチームの中心とは言えません。ヨキッチの真骨頂はこれだけの得点力を持ちながら、パスファーストでチーム全体を動かしていくオールラウンドな能力にあります。この試合も12リバウンド11アシストでトリプルダブルを達成。しかもターンオーバーはゼロというパーフェクトなプレーを披露し、4スティールのオマケまでつきました。 Nikola Jokic (35 PTS, 12 REB, 11 AST) notches his 17th career triple-double in the @nuggets W, while shooting a perfect 11-11 from the field! #MileHighBasketball #KiaTipOff18 pic.twitter.com/tyFUBfPIpw— NBA (@NBA) 2018年10月21日 若手トリオが構成するナゲッツ流オフェンス この11アシストも様々なパターンから生まれています。簡単なハンドオフでアウトサイドシュートやドライブを促したり、逆サイドへの横断パスでフリーの選手を使ったり、自分のシュートフェイクで動いたディフェンスを見てミルサップへのアリウープを通したり。そしてヨキッチ自らがドリブルでボールを運び、速攻のお膳立てもします。 昨シーズンに6.1アシストを記録したヨキッチですが、パスの本数は66.3本でリーグ2位と多く、パスの本数の割にはアシストが少なかったとも言えます。時に驚くようなパスも出しますが、決定機を演出することを目的としたパスではなく、基本はオフェンスの流れに任せてシンプルで適切なパスを出すことがヨキッチの持ち味。アシストが増える試合はヨキッチのパスが冴えた場合よりも、味方が好調な時が多くなります。 この試合のナゲッツはスターター全員が14点以上を記録するバランスの良さ。プレータイムの違いを考慮すれば、シュートアテンプトも同じような本数になり、全員が3ポイントシュートも打てば、ドライブも決めていきます。誰もがどこからでも積極的にアタックし、かといって強引に自分で打つのではなく、ディフェンスが寄ってくればフリーの選手にパスを回していきます。若い選手が多いだけに不安定さを露呈することもしばしいばありますが、波に乗った時のオフェンス力はリーグ最高クラスで、ヨキッチに依存するようなチームでもありません。 最終的に28点の大差で勝ったものの、ファンはホーム開幕戦からチームの特徴が良くも悪くも発揮される試合展開を見ることに。何度もセーフティリードを奪ったはずが、そのたびに追い上げられました。サンズの拙さも手伝っての大味な展開ではありましたが、昨シーズンも大量リードを奪っては追いつかれる試合をファンは何度も体験しています。 その一方で短時間に一気にリードを奪ったり、クラッチタイムに勝負強くシュートを決めていったりと、若さ溢れる魅力も備えているのがナゲッツなのです。 Keeping Up With The Canadians 🇨🇦Jamal Murray | vs. @suns26pts / 5ast / 3reb / 2stl in the @nuggets W! #MileHighBasketball pic.twitter.com/O7gdIfNb4L— NBA Canada (@NBACanada) 2018年10月21日 ヨキッチに依存しない「センターを中心にチームを構築する」 前述のヨキッチのアシストで興味深かったのは、多くの選手にパスを供給していながら、ハンドオフによるポジションチェンジだけはゲーリー・ハリスとジャマール・マレーの2人としか行っていないこと。この5年目のハリス、4年目のヨキッチ、3年目のマレーと1年ごとにチームに加わった3人によるコンビプレーこそがナゲッツの中核を担っています。 昨シーズンのチーム内得点トップ3でもある3人は全員シュートが上手く、それでいてボールを持った状態で仕掛けるよりもオフボールムーブとパス交換の連続でシュートチャンスを作ることを好む相性の良さがあり、異なるポジションの3人が頻繁にポジションチェンジすることで、アンセルフィッシュでも誰もが積極的で魅力的なオフェンススタイルを構築しています。 オールラウンドでトリプルダブルを量産するスタッツからヨキッチが目立ちますが、ハリスとマレーは負担を分担するチームオフェンスで個人スタッツが伸びないだけで、高い個人能力を持っています。「センターを中心にチームを構築する」ためには、単に優れたセンターがいれば良いのではなく、個人で突破するよりもセンターとの連携を多用するハリスとマレーのような選手で周囲を固めることが必要なのかもしれません。 ヨキッチが記録したフィールドゴール成功率100%、30点以上でのトリプルダブルは伝説のセンターであるウォルト・チェンバレンが1967年に記録して以来の珍しい記録で、しかもターンオーバー0を加えると史上初の大記録でした。 現在と違いセンターが支配していたチェンバレンの時代から51年ぶりの記録に、さらにもう一つのエッセンス加えた大記録を達成したヨキッチ。そんなオールラウンドな新時代のセンターにハリスやマレーも躍動し「センターを中心にチームを構築」する最新型を示してくれたナゲッツのホーム開幕戦でした。2018/10/22NBA&海外
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ヨキッチ&ミルサップ、ナゲッツの課題は相性抜群のはずの2人の『意識のズレ』目指すスタイルに対する考え方の『小さなズレ』 ジミー・バトラーがトレードを希望している理由の一つが若手選手との確執と言われています。バトラーに限らず若手とベテランに意識のズレを感じることがあります。試合を見ているだけでもズレを感じさせたのはナゲッツのニコラ・ヨキッチを中心とした若手とポール・ミルサップ。『完璧な補強』とさえ評価されたミルサップの加入は、予想された相乗効果を生み出せなかったものの、それでもお互いを尊重し合って解決策を模索した昨シーズンでした。 トリプル・ダブルを量産するセンターのニコラ・ヨキッチが中心のナゲッツは、シンプルなパスを繋ぎ、思い切りの良いアウトサイドシュートを打っていくのが特徴です。3ポイントシュートはアテンプトでリーグ8位、成功率で7位と高水準。それも特定の選手が打つのではなく、平均3本以上の選手が8人も並びました。 アシストでもリーグ5位の25.1本ながら、最も多い選手でヨキッチの6.1本に過ぎず、全員が満遍なくアシストするチームファーストのプレーが光ります。 ヨキッチ自身も得点よりもアシストを好み、複数の選手が絡んだチームオフェンスに喜びを見いだすタイプです。そこに高いシュート力と相手の逆を突くカットプレーが得意なゲーリー・ハリスや、2年目ながらフリースロー成功率が90%を超えるシューター系ポイントガードのジャマール・マレーが絡みます。この2人はガードながら個人で力強く突破するのではなく、シンプルなパスを連続で繋いでディフェンスを乱し、自分がフリーになるだけでなく時には囮となるオフボールムーブを繰り返し、空いた選手にヨキッチからパスが出てきます。パスの上手いヨキッチと相性の良いガードコンビという若手たちは、個人のエゴを出さずにオフェンスを組み立てていくのです。 ミルサップもまたチームプレイヤーとして評価を上げてきた選手であり、ヨキッチ同様にインサイドでもアウトサイドでもプレーする万能型なので、チームに完璧にフィットすると予想されていました。しかし、ベテランのミルサップが少し違ったのは、オフェンスの起点となるエースには、強引な仕掛けを求めていたこと。そのためエゴがなく、パスファーストのヨキッチのプレーを「物足りない」とさえ感じており、ここにズレが生じました。 例えばヨキッチがポストでボールを持つと、ハリスとマレーはパスを引き出すために「ボールを持った瞬間」に動き出します。これがヨキッチの好むタイミングでした。しかしミルサップの場合は逆サイドで傍観していることが多く、ヨキッチが個人で仕掛けることで「ディフェンスが動いた」時が動き出すタイミングでした。周囲に合わせるヨキッチと、エースに合わせるミルサップに微妙な考え方のズレがあったのです。 さらにこの逆サイドでミルサップが少しでもフリーになっていたらヨキッチは躊躇わずパスを出し、アウトサイドから打つことを求めますが、ミルサップの方はボールをもらってから遅れてマークに来たディフェンスと勝負することを好みました。仕掛けたいタイミングとシュートを打って欲しいタイミング、ナゲッツの若手たちとミルサップには、少しずつタイミングのズレがあり、ミルサップの存在は流れるようなオフェンスリズムを少しずつ乱してしまいました。 この問題はミルサップがケガで離脱したことで一旦落ち着き、2月のナゲッツは強豪相手にも勝利を収めて7勝3敗と上り調子になりましたが、そこからミルサップが復帰すると5勝5敗と調子を落としました。しかしナゲッツは空中分解することなく、プレーオフ進出に向けて立て直します。もう1敗もできない状況から6連勝し、ティンバーウルブズとのシーズン最終戦にしてプレーオフ最後の一枠を賭けた試合までたどり着きました。 チームとして立て直せた要因はそれぞれのやり方に歩み寄ったことにありました。ハリスがケガで離脱したこともあり、ヨキッチはより自分で得点を取りに行き、4月は平均25.7点、12.3リバウンド、3ポイントシュート成功率も43%を超え、ミルサップが考える『エースの仕事』をしました。一方でミルサップはオフェンスをヨキッチの流れに任せ、ナゲッツの弱点であるディフェンスにより注力し、失点を減らしていきました。それぞれのやり方を主張するというよりも、状況に応じた対応を見せましたが、それでも延長戦で力尽き、プレーオフ進出までわずかに1勝が足りませんでした。 今シーズン求められるのはミルサップが若手たちのオフェンスにアジャストすることです。勝った試合と負けた試合のスタッツを比較した時に、ヨキッチは得点よりもアシスト数に大きな差があり、勝ち試合の方が2.1本も多くなります。一方でミルサップは得点に差があり勝ち試合の方が4.6点多く、シュート成功率も7%高くなります。つまり、ヨキッチがエースとして得点を増やすよりも、そのアシストからミルサップがタイミングの良いカットプレーや小気味よいアウトサイドシュートを決めていくことが勝利に繋がるプレーなのです。 ナゲッツはこのオフにヨキッチと5年マックス契約を結び、若手を中心としたチーム作りの姿勢をはっきりと打ち出しました。その一方でサラリーキャップの問題もあってケネス・ファリード、ダレル・アーサー、チャンドラー・パーソンズといったベテランを放出しています。主力で1人だけの30代となったミルサップは、若手たちが作り出す連携プレーを習得する必要があり、その一方で若手たちはミルサップの言葉に耳を傾けながら、ディフェンス力を頼りにしているのです。 世代の違いから生じる考え方の違いは、どこの世界にもあるものです。試合を見ているだけでもそのズレ感じさせたナゲッツは、困難な状況の中で双方が歩み寄りました。それでも届かなかったプレーオフに向けて、お互いがもう一歩前へ進まないといけません。2018/10/11NBA&海外
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試合中にコートに乱入したナゲッツファンに入場禁止処分、問われるマナーと警備ファンを押しのけたウェストブルックにお咎めはなし2月1日にデンバーのペプシ・センターで行なわれたサンダーvsナゲッツの一戦後、あるトラブルが発生した。試合は、ゲーリー・ハリスが第4クォーター残り0.3秒に決勝3ポイントシュートを成功させ、ナゲッツが127-124で勝利。この直後、ボールを持ったサンダーのラッセル・ウェストブルックの目の前に観客が乱入し、ウェストブルックがこの男性を押しのけた。この部分だけがソーシャルメディア上で話題になり、敗戦に苛立ったウェストブルックが観客に手をあげたと思ったファンもいたかもしれない。しかし、この件についてリーグはウェストブルックとサンダーに処分を科すことなく、この男性ファンを入場禁止処分とした。 左手で男性を押しのけたウェストブルックは、自分を守るために仕方なかったと思うかを聞かれ「当然だ」と答えた。今回の出来事は、会場内の警備上重大な問題になり得る。今回は、単に連敗を脱したナゲッツファンが、喜びのあまりコートに入って来ただけで、その意味では幸いだった。だが、もし選手に悪意を持った暴漢が凶器を持ってコートに簡単に入って来るようならば、選手が危険に晒されてしまう。かといって、警備員の数を過剰に増やせば、試合を楽しみに会場に足を運ぶ大多数のファンの視界を遮ってしまう。コートと客席を柵で隔てるようになれば、観戦の楽しみは大きく損なわれてしまう。ライブスポーツは、選手、ファン、会場が一体となって作り出すもの。最高の体験を得るためにも、観戦マナーを守ることが求められる。2018/02/04NBA&海外