オステンドドーム

コンパクトでも快適な観戦空間

日本がベルギーで戦った東京オリンピック最終予選(OQT)は、連日に渡って白熱の戦いが繰り広げられた。特にホスト国であるベルギーの試合は、アリーナが満員となって大盛り上がり。最終日、ベルギーがスウェーデンを破って東京オリンピックへの切符をつかんだ時の会場の熱狂は、部外者の胸すら熱くするものがあった。

そして、この大会を通して印象に残ったのが、会場となったオステンドドーム。正式名称は命名権による『Versluys Dome』だ。このアリーナのキャパシティは、図らずもBリーグがB1チームのライセンス取得の要件としている5000人。そして、様々な面からこんなアリーナが日本にも増えたらいいなと感じた。

建物自体は3階建てだが、2階と3階部分がアリーナで、半地下のような形になっている1階には家電量販店やスーパーマーケットが入っていて、地元の人々の暮らしに密着している。写真の中央部、今回のOQTの装飾がされているのがエントランスで、デッキの奥となる建物の右側には立体駐車場が併設されている。

オステンドドーム

アリーナ全体に無駄な遮蔽物がない作りのため、日本の体育館での5000人と比べると、かなりコンパクトにまとまっている。その結果、観客席はコートに近く、すべての席が見やすい上、また観客の声援が反響して響きやすくなっている。このコートはコンクリートのフロアの上に敷いているもので、バスケットボール以外のアリーナ競技だけでなく、様々なエンタテイメントも実施可能。例えばオステンドの街中には、OQTに続くイベントとして、コメディトークショーの告知ポスターが貼られていた。

オステンドドーム

飲食はコンコース内に複数のお店があり、さらに飲食スペースも大きく設けられている。ちなみにこの飲食の支払いは、すべて別カウンターで購入する専用コインとなるトークンで行う。ソフトドリンクは1トークンなどと決まっていることで、お釣りは発生しない。また電子マネーのような機械処理の手間もないことで、よりスムーズなやり取りができている印象だ。

余談だが、飲食面に関していえばティップオフ前、ハーフタイム、そして試合後のそれぞれでビールを飲んで歓談を楽しむ人々がとても多かった。特に試合後に「帰る前にもう一杯」と立ち止まる人が多く、この飲食スペースは激混みに。人の波がなかなか進まなかったものの、帰りの客の流れが分散するのはアリーナにとっては良いことで、さらに飲食の売上にも相当に貢献しているはずだ。

オステンド

そして、驚きなのはトイレが有料で、入り口で係員にお金を払わないといけないこと。お酒を飲んでいる人が多いのでティップオフ前からトイレは行列となり、日本ではまず見られない光景だった。

試合観戦を楽しむのはもちろん、お酒を飲みながらのコミュニケーションの場としてもアリーナがしっかり機能している。そもそも、これが欧州のスポーツ観戦スタイルと言えばそれまでかもしれない。

ベルギーにはスポーツ観戦以上の存在感を持つアリーナが大都市でないところにちゃんと存在していた。Bリーグは『夢のアリーナ』の実現を使命の一つに掲げている。各チームがこういったホームアリーナを持てるようになれば、日本プロバスケ界はより豊かになるはずだ。