ジャ・モラント

ニックス優位の試合展開を強烈な個人技でひっくり返す

グリズリーズはジャ・モラントのクラッチプレーでニックスとの接戦を127-123で制した。

試合はずっと接戦が続き、第3クォーターにグリズリーズが一度は12点までリードを広げるも、その後はニックスが押し返す展開。第4クォーターに入ってミッチェル・ロビンソンのバスケット・カウントとなった豪快なダンクを機にニックスが反撃の勢いを増すと、マディソン・スクエア・ガーデンの熱気は高まっていく。

ニックスのオフェンスを引っ張るのはジェイレン・ブランソンだ。グリズリーズのダブルチームを巧みにかいくぐってオフェンスを組み立て、自らも得点を重ねていく。ブランソンに相手の警戒が向く中でジュリアス・ランドルも第2の起点として機能し、ニックスが良い形を作っていった。そして残り26秒、ブランソンがディロン・ブルックスからファウルを誘い、微妙な判定ではあったがブルックスをファウルアウトに追い込むとともに、フリースロー2本を決めて123-122と逆転に成功する。

ホームの観客の後押しも含め、勢いは完全にニックスにあった。だが、良くも悪くも場の空気など関係なく自分のプレーを貫くのがジャ・モラントである。残り15秒、ジョン・コンチャーとのパス交換からリムへと飛び込んだモラントは、360度のターンからレイアップを狙う。これはRJ・バレットのブロックに阻まれたものの、こぼれたボールは再びモラントの手の中に。素早く体勢を立て直したモラントがゴール下を沈めて再逆転に成功。これが決め手となりグリズリーズが競り勝った。

モラントは27得点10リバウンドに加え、キャリアハイの14アシストを挙げ、キャリア5回目のトリプル・ダブルを記録。ニックスの指揮官トム・シボドーは「ダブルチームはもちろん、あらゆる手段で止めに行ってこの結果だ。どんなシチュエーションに追い込んでも正しいプレーを選択して打開してくる。試合を読む能力がすごいよ」と脱帽だった。

試合後のモラントは「ガーデンのきらびやかな照明が僕のプレーを輝かせてくれたのかもしれないね。僕はここで行われる試合を見て育った。ここでトリプル・ダブルができるなんてすごいよ」と語る。

もっとも、これはニックスの悔しさを増幅させるだけだろう。モラントがエントリーした2019年のNBAドラフトでは、ニックスはNBA全30チームで最下位だったがロッタリ―で3位指名権しか得られず、ザイオン・ウイリアムソンをペリカンズに、モラントをグリズリーズにさらわれている。「マディソン・スクエア・ガーデンをホームアリーナにしてくれていたら……」というニックスファンの嘆きが聞こえてきそうだ。

そしてこの試合は、モラントにとってもう一つの意味があった。デリック・ローズとの競演だ。現在のローズはコンディションが上がらず、ブランソンの陰に隠れる形となって決して良いシーズンを送っているとは言えないが、モラントにとっては特別な存在だ。

「アスレチックガードという存在を確立したのが彼だよね」とモラントは言う。「アクロバティックなフィニッシュ、リムへの攻め方、爆発力。僕にとって彼は常に目標だった。彼と同じコートに立つのは、僕にとって大きな意味があるんだ」

試合後にはローズとユニフォームを交換したというモラント。あこがれの存在との競演が、彼にとっては次なる活躍へのモチベーションになる。