比江島慎

文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

言葉に苦労も「毎日の練習が楽しいです」

昨日、ワールドカップのアジア予選Window4、アウェーのカザフスタン戦(9月13日)、ホームのイラン戦(9月17日)の2試合に向けた予備登録選手24名が発表された。同時に合宿参加メンバーによる練習が公開され、オーストラリアのブリスベン・ブレッツへの移籍が決まった比江島慎が取材に応じた。

ブレッツとの契約が決まり、現地に渡ってチームの練習を約3週間こなした後に、代表合宿に参加するために帰国したばかり。「システムも一から覚えなきゃいけないですし、英語がやっぱり分からないので本当に苦労しました。最初はパスが回って来なかったり、それで実力もあまり証明できなかったりしたんですけど」とオーストラリアでの苦労を語る。

それでも「毎日の練習が楽しいです」と比江島は笑う。

「フィジカルだったりスピードだったりは日本にはないもので、そこでやらせてもらっていますし、その中でもちょいちょい自分の良いプレー、通用するプレーも出せてきているので。やっぱりイランだったりカザフスタンだったり、フィジカルが強い相手に対しても最初からガンガンいけるのではないかなとは思ってはいます」と、プレシーズン期間の練習に参加しただけではあるが、手応えは感じている。

今までとは違う比江島が見られるのではないか、との期待に「分からないですけど、もちろんそのつもりです」と再び笑みを見せた。

比江島慎

「離れていったファンをもう一回獲得する」

そんな比江島も、アジア競技大会での不祥事に話題が及ぶと口が重くなる。それでも、言葉を選びながらではあるが、自分がどう受け止めたのかはしっかりと語った。「ただごとではないのはオーストラリアにいながらも感じました。チームメートからも『どうしたんだ』と聞かれたし、世界中が不祥事に対して多くを感じていたと思います」

不祥事を起こした選手に対しては「そこはもう自覚が足りないというのは思いますし、本当にどれだけの人に迷惑かけるのか分かっていないと思います」とバッサリ。それと同時に「自覚してほしいとは思うんですけど、やってしまった後が本当に大事だと思うので、そこはしっかり反省して次に生かすじゃないですけど、残りの人生ももちろんあって、プレーできる機会も与えられると思うので、そこでしっかり行動で示してくれれば」と語った。

「やってしまった後が大事」という言葉は、自分を含めた日本代表にも向けられている。

「こういった事件が起こってしまったせいで、良くも悪くも注目を浴びています。いろんな人のサポートがあって僕らがプレーできているので、これで離れていってしまったファンをもう一回獲得するためにも、今回の代表の試合というのは本当に大事になってくる。一生懸命プレーして日本の国民の皆さんに応援してもらえるチームを目指して、本当に勝ちにいかなければいけないなとは思います」

そんな重荷を背負って迎えるWindow4は、渡邊雄太と八村塁の招集が決まった。「今までで一番強い日本が本当に見せられると思うので、どういったチームになるか自分も本当にワクワクしています。その中でチームに貢献できるというのは本当に素晴らしいことだと思うので、自分もしっかり力を出していいプレーをしていきたい」と抱負を語る。

オーストラリアでの経験が『日本のエース』をまた一回り成長させたであろうこと、そして渡邉や八村と一緒にプレーすることで生まれる新たなケミストリー。Window4での比江島のパフォーマンスが楽しみでならない。