
『エルマン・マンドーレ』の検索結果
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8人の日本代表を引っ張った太田敦也と辻直人の戦い「最後までプレーできて感謝」不祥事の後、一丸となって前に進んだ日本代表 アジア王者を狙う国際大会を8人で戦う事態になるとは、誰もが思ってもみなかったことだ。だが不祥事を起こした過去を変えることはできない。最悪の事態になったのならば、次にやるべきことは、起きたことを検証して反省し、そして前に進んでいくことだ。 「バスケットボール界の信頼を取り戻すためにも、日の丸をつけた僕たちがしっかり戦っていく」という太田敦也キャプテンの言葉のもと、目の前の試合に全力で取り組むことこそが、信頼回復への第一歩だった。 今回のアジア競技大会は優勝した中国を筆頭に、イラン、韓国、フィリピン、チャイニーズ・タイペイというアジアの強豪国が本気でタイトルを狙いにきていた。日本も勝ちにはいったが、やはり総戦力で向かってくる国の前に歯が立たなかったのが事実であり、8人で戦うことは実際のところ大きな負担がかかっていた。 大変だったのはオフェンスよりもディフェンスだ。普段とは違うポジションを兼ねることでローテーションが狂うことからミスが多発した。また、準々決勝のイラン戦と5-8位決定戦で対戦したフィリピンには高さとフィジカル面で劣ることからも体力の消耗は激しく、後半には失速してしまった。 さらに手こずったのはリバウンドだ。ディフェンスリバウンドは13チーム中11位(1試合平均25.5本)、オフェンスリバウンドに至っては最下位(1試合平均7.2本)で、リバウンドが取れないことから、なかなか走る展開が出せなかった。それでも、ヘッドコーチ代行のエルマン・マンドーレはコートに立つ経験を積めるこの機会に8人の選手をタイムシェアさせ、大学生の中村太地や玉木祥護、シェーファー・アヴィ幸樹らを積極的にコートに送った。 イランとフィリピンに敗れ、最終戦となる7位決定戦の相手はインドネシア。格下の相手であるが、アジア大会の開催国として帰化選手を入れて強化してきた布陣であり、若手中心で8人しかいない日本にとっては決して簡単な相手ではなかった。「7位と8位は全く違う。命を懸けて戦い、勝って帰ります」というマンドーレヘッドコーチ代行の言葉に全員が勝利を誓った。 太田と辻、経験抱負な2人が最終戦で勝利を呼び込む そんな中で、この若いチームをリードしたのが、国際大会のキャリアが豊富な太田敦也と辻直人だ。育成の意味合いが強かった今大会の布陣の中で、ワールドカップ1次予選に出場した太田と辻は自身が選ばれた理由をこう捉えている。2人はWindow3ではベンチ入りしながらもプレータイムが少なかった選手だ。 「僕のポジションにニック(ファジーカス)と(八村)塁が入ったのでプレータイムが減ったことは、実力の世界なので仕方のないこと。それでも僕だけが30代でこのチームに選ばれたのは、もう一度アピールする場を与えてもらったのだと思っています」(太田) 「Window3ではプレータイムが減ったので、もう一度、国際大会に出てプレータイムをもらい、チャレンジしてほしいという意味だと思います。また若手が多いこの大会で戦う環境作りをする課題も与えられたと思っています」(辻) インドネシア戦の前半、日本は太田が身体を張って得点やリバウンドに絡み、先手を取って試合を進めていく。しかし会場の声援を受けるホームのインドネシアは、突き放しても帰化選手のジャマール・ジョンソンを中心に追い上げる粘りがあり、第3クォーターを終了して57-54、日本が奪ったリードはたった3点。ここからが意地の見せどころだった。 「苦しい時間帯だけど、もう一度タフにディフェンスをしよう。辻にもっとボールを回して打たせよう」との指示の下、足を動かすことを意識した日本代表は展開を速めていく。そこで「ボールをもらったら、いつもより速く打つことを心掛けた」という辻が第4クォーター開始早々に立て続けて2本の3ポイントシュートを決め、後半だけで4本もの3ポイントシュートで日本の勢いを作った。 さらに張本天傑のリバウンドやシェーファーの速攻が出て一気に引き離しにかかる。前半の太田、後半の辻の働きが日本の流れを作ったと言っていいだろう。 3ポイントシュート8本を含む29得点を稼いで勝利に導いた辻は「僕自身、今大会はどこか踏ん切りが良くなく、迷いながらゲームをしてしまって、シュートを打つタイミングを見失っていました。また、結成して間もないチームなので欲しいところでボールをもらうことが難しく、もっと自分で崩していく力が必要だとあらためて分かったし、僕自身の良さは何かと考え直した大会だったので、こうして一番得意な3ポイントを決められたことが本当にうれしい。これをきっかけに這い上がっていきたい」と自信を得るとともに、Window4に向けてもアピールした。 「気持ちを一つにして戦ったことを良い経験にしたい」 最終戦を終えて太田は「いろんなことがあって大変ではありましたが、チームのスタッフと一緒になって戦い、日本選手団の皆さんに手助けしてもらい、日本国民の皆さんから応援していただき、その中で戦えたことにお礼が言いたいです。本当にありがとうございました」と感謝の気持ちを語った。今回の不祥事で失ったものはあまりにも大きいが、逆にそこから立ち上がって一人ひとりが現状でやれることを出したからこそ得たものもある。 辻直人の言葉がコートに立った8人の思いを代弁した。「もちろん満足いく結果ではなかったですが、8人で最後までプレーさせてもらったことにとても感謝しています。正直、騒動が起きた直後はチーム全体が試合をする精神状態ではなく、バスケットだけでなく、他の事を考えながら戦わなくてはならない大会になったのが正直なところです。でもこういう時だからこそ、気持ちを一つにして戦ったことを良い経験にしたいし、ここにいる8人が日本代表の自覚を持って戦ったことは、日本で合宿をしている日本代表のみんなにも伝わったと思います」 「バスケットのことで言えば、5対5の練習ができない中でチーム力を高めていくのは難しいところがありました。その中で対策してきたことを出せたのはバスケットの理解度を高められた証拠だし、それを最終試合で全員が出せて勝ったことが収穫です」 「自分自身のことで言えば、今回はキャプテンを務めさせてもらい、声掛けとか、チームの雰囲気作りとかをいつもは周りに任せていたのだと気付くことができました。自分はもう引っ張っていく立場なのだから、これからはプレーだけでなく、チーム内のコミュニケーションや戦いやすい環境作りをすることをもっとやっていかなければと感じました」 「今回8人で戦ったことは、変な言い方ですけど良い薬になったと思います。もう二度とこういうことがあってはならないし、日本代表としての自覚を持って一人ひとりがしっかり行動していくことが第一で、もう一つは観客の皆さんを楽しませていけるようなバスケット界にしていきたい。僕自身はまだチャンスはあると思っているので、ワールドカップやオリンピックを目指して頑張っていきます」 日本代表は最悪の事態が起きた中でも、最善を尽くして大会を終えた。ここで得た経験を、一人ひとりが今後の活動へと生かしていくことが重要である。2018/09/03日本代表
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8人でアジア競技大会を戦い抜いたバスケ男子日本代表、貫いた『JAPAN PRIDE』「12人だったら間違いなくメダルを獲得できた」 アジア競技大会、男子日本代表は昨日の7-8位決定戦に勝利し、全日程を終えた。最終戦でインドネシアに勝利した後、フリオ・ラマスに代わりヘッドコーチ代行を務めたエルマン・マンドーレは「良い結果で終わったことをうれしく思います」と、8人で勝って終われたことに安堵の表情を見せた。 12選手で臨んだアジア競技大会だったが、大会序盤に4選手の不祥事が発覚。早々にチームを離れて帰国することになったが、残る8人で最後まで戦い抜いた。 マンドーレコーチは語る。「終わってみれば3勝3敗、8人になってからは2勝2敗。メダル獲得を実現したかったですけど、もし12人だったら間違いなくメダルを獲得できたと思います。ただそれを理屈に使わず、今出せる結果としては嬉しいし、育成を目的で連れてきた選手たちがどんどん成長してることは日本のバスケ界にとって良いニュースだと思います」 太田敦也、辻直人、ベンドラメ礼生、熊谷尚也、張本天傑、シェーファー・アヴィ幸樹、玉木祥護、中村太地──。8人で12人分のプロ意識を見せた選手たち一人ひとりを、マンドーレコーチは感謝の気持ちを込めて称えた。 「まず言いたいのは今日の太田選手。11リバウンドですがBリーグの試合で10本取れる試合はほとんどない。それだけ代表に懸ける気持ちが強く、責任を感じています。彼がどれだけ今の日本代表に貢献しているか全員に知ってほしい。記者の皆さんも知らないと思いますが、今大会に向けた合宿の1カ月前に一人でしっかり準備したいということで太田はトレセンに来ました。礼生はポイントガードとして38分出場して、国際試合でできるということは、もちろん国内リーグでもできる。それが成長だと思います。玉木は良い成績は残せなかったかもしれないですけど、彼もコンバートして3番としてずっと使い続けてるんですけど、成長できる選手だと思いますし、これからBリーグで活躍する姿を見たい。熊谷とアヴィに関してはフル代表デビューになって、結果として良い内容だったと思います。これからも成長してくれることを願います。そういう目的を持ちながらこの大会に臨みました」 不祥事の4選手へ「努力を辞めないでやっていってほしい」 マンドーレコーチは不祥事を起こした永吉佑也、橋本拓哉、佐藤卓磨、今村佳太にも言及。「不祥事を犯した4人には残ってほしい気持ちはあったんですけど、間違ったことは償って、ここから成長してほしい。いつか代表に戻ってほしい。努力を辞めないでやっていってほしい」 まだ34歳と若いマンドーレコーチにとっても、今回はすべてが新しい経験だった。前代未聞の不祥事によりチームが空中分解してもおかしくないところで、とにもかくにも残った選手とスタッフで国際大会で日本代表が示すべき『JAPAN PRIDE』を見せて大会を終えることができた。この経験はきっとまた今後のプラスになるはずだ。 🏀#AkatsukiFive 男子日本代表:「アジア競技大会」インドネシアを84-66で下し、最終戦を勝利で終え7位で全日程終了📝https://t.co/lft4s3a05G「これからバスケ界全体で信頼回復をしていくべきであり、これからの方が大変だということを意識して取り組んでいかなければならない」ベンドラメ礼生 pic.twitter.com/luxc8BcClM— 日本バスケットボール協会(JBA) (@JAPANBASKETBALL) 2018年8月31日2018/09/01日本代表
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8人で戦い続ける男子日本代表は敗れても前へ、ベンドラメ礼生「チームが一つに」前日にケガを負うも強行出場、11得点3アシスト 昨日行われた5人制男子バスケットボールの5-8位決定戦、日本代表は80-113で敗れた。 試合終了時点でコートに立っていたのは4人。買春の不祥事により4人が帰国させられた後、残った8選手で大会を戦い続けているが、この試合ではフィリピンの勢いを止められずにファウルがかさみ、試合終盤に3選手がファウルアウト(個人ファウル5つでの退場)。これで5人となったのだが、前日のイラン戦で足首を痛めながら強行出場していたベンドラメ礼生が最後はプレーせず、コート上に4選手の状態で試合終了のブザーを聞くことになった。 日本に残ったAチームを指揮するフリオ・ラマスに代わって采配を振るったヘッドコーチ代行のエルマン・マンドーレは説明する。「ベンドラメは足首のケガを抱えていて、それで最終クォーターに足も動かない状態なので休ませました。残り40秒で4人になってしまったが、最後の40秒で結果が変わるわけではないので、私の判断でケガをしている選手を入れるリスクは冒さず、最後は4人で締めました」 そのベンドラメは「右の足首です。良くはないですけど、バスケができなくはなかったので。試合になってしまえばそんなに気にならないです」と語る。20分間の出場で11得点3アシスト。スタメンこそ外れたが、このチームになくてはならないガードであることを示した。ただ、後半に失速した理由を「足が動いていなかった」とし、苦しい試合を振り返った。 4人の選手が途中帰国したことについて「すごく辛かった」とベンドラメは明かす。「仲間がああやって悪いことをして、8人残ってしまった。その8人で戦わなきゃいけなかったので、複雑な気持ちもありましたけど、よりチームが一つになれたんじゃないかと思います」 「この8人でしっかり戦って、勝って気持ち良く終わりたい」 今日と明日は休養日。マンドーレコーチはケガを抱えたベンドラメについて「彼が次の試合にもいると信じている。今日は大事に至らないために下げました」と語る。「ここにいる8人の選手は大きな心を持っている8人で、大事にしたい。彼がその気になれば間に合うと思っている」 「どの試合でもこの人数でも、日本を背負っている以上は勝ちに行く」と、強い意志で戦い続けることを誓うマンドーレコーチは、31日に行われる最終戦の7-8位決定戦について「7位と8位は我々にとって違う。命を懸けてでも挑戦しようと思う」とあらためて必勝を期す。 ベンドラメも言う。「あと1試合、この8人でしっかり戦って、勝って気持ち良く終わりたいと思います」 今日午後には日本バスケットボール協会が今回の不祥事についての会見を実施。4選手への処分が発表される見込みだ。世間の注目はこちらに集中するだろうが、それでも8人の日本代表はジャカルタで戦い続けている。勝って気持ち良く終われることを願うばかりだ。 🏀#AkatsukiFive 男子日本代表「第18回アジア競技大会」5-8位決定戦はフィリピンに80-113で完敗。ラストゲームは地元インドネシアと7位決定戦📝https://t.co/VrXgvyQ0hx次戦:8月31日(金)14:30(日本時間)7位決定戦 日本vsインドネシアhttps://t.co/xzjtpinEOa pic.twitter.com/Lp01RZqvAF— 日本バスケットボール協会(JBA) (@JAPANBASKETBALL) 2018年8月28日2018/08/29日本代表
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不祥事で4選手が帰国したバスケ男子代表「日本を背負っている以上は勝ちに行く」代行指揮官マンドーレの『日本を背負う覚悟』 ジャカルタ(インドネシア)で開催中のアジア競技大会、5人制の男子日本代表は準々決勝でイランを相手に敗れた。今大会は主力メンバーが9月のワールドカップ予選に向けた調整に専念するために若手中心のBチームでの参加。しかも大会中の買春という不祥事で4選手が途中帰国し、メンバーの補充もなく8人で戦わざるを得ない状況で、ベストメンバーで臨むアジアの強国イランを上回るのは難しかったと言わざるを得ない。 日本代表ヘッドコーチのフリオ・ラマスも『ワールドカップ組』の指導のためチームには帯同していない。アジア競技大会でチームを率いるのは、ラマスのアシスタントを務めるエルマン・マンドーレ。彼が試合後に取材に応じた。 当然ながら、不祥事を起こした4選手を欠くマイナスは大きい。「今も問題として抱えているのは5対5ができない状況です」と、マンドーレコーチは試合間隔が空くこの大会での準備が難しくなっていることを打ち明けるが、「ただ、それを理屈に使うつもりはないので、どの試合でもこの人数でも、日本を背負っている以上は勝ちに行く」と言い切る。 「イランはとても強いチーム、間違いなくメダルを取れるチームだと思います。そういう対戦相手でもしっかりゲームができるよう臨み、ある程度は良い試合運びができたんじゃないかと。それでもやはり第3クォーターの終わり、第4クォーターの始まりで選手たちも8人でローテーションしているから疲れが出始めて、残念ながら良い締め方ができなかった。それでも35分間しっかりとプレーしてくれたこの8人の日本代表、最後の5分間は残念ながら良い試合ができませんでしたが、それでも誇れる内容だったと思います」 「もう一回100%を出してもらうしかない」 準々決勝に敗れてメダル獲得の可能性は潰えたが、日本にはまだ順位決定戦の2試合が残されている。今日は5-8位決定戦が行われ、31日には最終戦として5位もしくは7位決定戦を戦うことになる。イラン相手に8人で激闘を繰り広げ、その翌日にまた試合があるのだから、選手たちの疲労はピークに達しているに違いない。それでも「日本を背負っている以上は勝ちに行く」の姿勢はブレない。 「明日の試合ももちろん疲れを理屈に使おうと思ってないので、今日はリカバリーのほうに専念してもらって明日のフィリピンには勝てるように、コートに立ってもらって、できるだけ高い順位にしたい。もう一回100%を出してもらうしかない」とマンドーレコーチは言う。 ただ、気になるのは気合いだけではどうにもならないコンディションだ。昨日のイラン戦で第4クォーター早々にベンチに下がったベンドラメ礼生は、その後コートに戻ることができなかった。試合終了直後でケガの状態は分からなかったが、マンドーレコーチは選手の状態を懸念しながらも、勝つことだけを考えてこう語る。「少ない選手の中でローテーションすることはそういった危険も伴う。なんとか挑戦して戦えるようにしていかないと」 買春行為という前代未聞の不祥事で記憶されるであろう今回のアジア競技大会だが、参加している選手、スタッフは少しでも多くの収穫を持ち帰ろうと奮闘している。勝敗にかかわらずあと2試合、苦しい状況での彼らの戦いは続く。 🏀男子日本代表:「第18回アジア競技大会」Window4へ向けた前哨戦となった準々決勝イラン戦は67-93で敗れ、次戦は5-8位決定戦へ📝https://t.co/VVUPirlGXO次戦:8月28日(火)18:00(日本時間)5-8位決定戦 日本vsフィリピンhttps://t.co/xzjtpinEOa pic.twitter.com/qyTyWAxHUE— 日本バスケットボール協会(JBA) (@JAPANBASKETBALL) 2018年8月27日2018/08/28日本代表
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サイズアップの取り組みと国際経験、充実のジョーンズカップが日本代表の底上げに多くの選手が新境地を見せる実りある大会に 7月14日に開幕し、若手中心のBチームが9日間で8試合を戦ったジョーンズカップ。フリオ・ラマスのアシスタントであるエルマン・マンドーレが指揮を執ったこの大会で頭角を現した6人の選手が、さっそくA代表のオセアニア遠征メンバーに組み込まれた。 シェーファー・アヴィ幸樹は貴重なビッグマンとして代表合宿の常連となっており、ベンドラメ礼生も常に代表選考のテーブルには乗っていた。しかし、橋本拓哉、佐藤卓磨、今村佳太、テーブス海の4人は、ジョーンズカップで評価を一気に上げてここまでたどり着いたと言える。 ここでジョーンズカップでの取り組みを振り返ってみたい。日本代表の常連と呼ぶべき選手は誰も参加していないBチームだが、並里成や中西良太、ベンドラメといった、A代表では機会に恵まれないがBリーグで実力は証明済みの選手を軸とし、そこに国際大会の経験が飛躍の糧になるであろう若手を集めて作った、ポテンシャル十分のチームだった。 明らかな格下もいる中での3勝5敗という成績は少々物足りないが、大会を終えて指揮官マンドーレが「このチームにとって大事なのは結果だけではなく、サイズアップによってコンバートした選手たちが不慣れなポジションでもしっかり戦えたこと」とコメントしたように、収穫もまた多かった。 ジョーンズカップでの戦いぶりには、挑戦的な試みが随所に見られた。激しいディフェンスから走るスタイルはAチームと同じで、強度の強いディフェンス、トランジション、積極的に放つ3ポイントシュートというチームの狙いは明確だった。急造チームということもあってイージーミスが目立ち、ターンオーバーから試合を落とすことも多かったが、大会が進むにつれてチームの狙いが選手間で共有され、その中でそれぞれの持ち味が発揮されるようになった。 大胆なサイズアップの取り組みに成果アリ フリオ・ラマスは日本代表ヘッドコーチに就任した時点で「サイズアップに取り組む」と明言していた。既存の主力選手の身長を伸ばすことはできなくても、これから代表に加わる選手はサイズを重視し、なおかつポジションアップさせることで全体的なサイズアップを実現させるということだ。ジョーンズカップではこれが主眼に置かれた大会だった。 195cmの佐藤卓磨が2番と3番ポジションで起用され、強気な姿勢で3ポイントシュートを放ち、かと思えば果敢なドライブを仕掛けるなどチャレンジ精神で一際目立つ存在となった。また大学ではセンターのイメージが強い195cmの玉木祥護は、シューター兼スクリーナーとして3番ポジションでプレー。これにより西川貴之、今村佳太、高橋耕陽もポジションアップし、世界基準のサイズのラインナップで戦った。 それと同時にインサイド陣にはトランジションバスケットへの適応が求められた。シェーファー・アヴィ幸樹は最後のチャイニーズ・タイペイBとカナダを相手にチームトップとなる得点を挙げる活躍。205cm107kgの体格を生かしてゴール下で存在感を見せ、また献身的にコートを上下動して『走るバスケット』にもしっかり対応した。まだ20歳で実戦経験は少ないが、Aチームに常に帯同しているのも納得のプレーをコートで表現している。 ポイントガードのポジションでは、並里、ベンドラメ、テーブス海のそれぞれが持ち味を発揮。特にテーブスは188cmと長身ながら、リズムに乗ったドライブで数々のチャンスを演出し、今大会で最も安定していたシューターである橋本拓哉へ多くのアシストを供給した。 明確な目標を持って大会に臨み、成果を形に ポジションアップでいつもと勝手が違うことに加えて、ハードな守備を求めたことで、外で抜かれてファウルトラブルに陥ったり、ゲームメークが不完全でターンオーバーが多くなった試合があった。さらに勝ち切るという意味では、序盤リードを奪われながらも接戦に持ち込み敗れたフィリピン戦や、最後に突き放されたカナダ戦など、勝負どころでのパフォーマンスには課題が残った。また格上が相手になるとインテンシティの部分で引いてしまう場面も目立った。 ただ、そんな課題を差し引いても、Aチーム入りを狙える選手たちに国際経験を積ませ、同時にサイズアップの取り組みにも一定の成果が出て、大会の目的は十分に果たした。ポジションアップの取り組みは、A代表でも同じポジションで起用されることを想定してのもの。ここでのプレーがそのままAチームのレベルやサイズでも見せられるようにアレンジされており、今後に生きるに違いない。 ジョーンズカップは結果よりも成長を求める大会。それでも、「その時点で有望な若手で急造チームを作り、国際試合をやって帰ってくるだけ」とは全く違い、明確な目標を持って大会に臨んだことは試合を見れば明らかだし、その成果はすでに形に現れつつある。いや、本当の成果はこれからの彼らのパフォーマンス次第。今回のオセアニア遠征に帯同することになった選手も、それ以外のメンバーも、日本代表と来たるべき新シーズンのBリーグでどんな成長を見せてくれるかが楽しみだ。 「ジョーンズカップ」男子日本代表チーム 1 中西 良太 (C / 熊本ヴォルターズ) 5 テーブス 海 (PG / ノースカロライナ大学ウィルミントン校) 9 ベンドラメ 礼生 (PG / サンロッカーズ渋谷) 13 橋本 拓哉(SG / 大阪エヴェッサ) 14 杉浦 佑成 (SF / サンロッカーズ渋谷) 16 並里 成 (PG / 琉球ゴールデンキングス) 17 鎌田 裕也 (PF / 川崎ブレイブサンダース) 20 西川 貴之 (SG / シーホース三河) 25 平岩 玄 (C / 東海大学) 30 今村 佳太 (SF / 新潟アルビレックスBB) 32 シェーファー アヴィ 幸樹 (C / ジョージア工科大学) 35 高橋 耕陽 (SG /滋賀レイクスターズ) 41 佐藤 卓磨 (SF /滋賀レイクスターズ) 65 玉木 祥護 (PF / 筑波大学) 75 井上 宗一郎 (C / 筑波大学)2018/08/05Bリーグ&国内
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ジョーンズカップ最終戦、日本代表は強豪カナダ代表に猛追するも終盤に力尽きる強豪相手に詰め寄るも、チャンスを決めきれず ジョーンズカップ最終戦、日本代表は強豪カナダ代表と対戦した。序盤は完全にカナダペース。地力に勝るカナダがインサイドを攻め、オープンとなった3ポイントシュートが次々と決まり16-0のスコアリングランを作られてしまう。 それでも日本代表はここからシェーファー・アヴィ幸樹がインサイドを攻めたて、ベンドラメ礼生の3ポイントシュートで落ち着きを取り戻した日本。今村佳太と佐藤卓磨の懸命なディフェンスと得点で巻き返し始め、第1クォーター終了時には22-32と持ち直す。その後は個人技で打開を図るカナダに対し、日本はテーブス海のペネトレイトとパスから応戦。それでも個人技に勝る相手のドライブを止められず、点差を広げられていく。 37-52で迎えた後半、インサイドに着実にボールを配球するカナダのオフェンスに苦しむも、日本はキャプテン並里成のパスとドライブで盛り返していく。第3クォーターすべてのシュートを成功させた並里のフリースローで13点差に縮め、良い流れで最終クォーターへ。 第4クォーター開始早々、並里のドライブから始まるパス回しでシェーファーが得点。しばらく膠着状態が続いたが、今村の3ポイントシュートが決まり、並里のボールプッシュからシェーファーへの合わせ、橋本拓哉のフリースローなど立て続けにオフェンスを決め、残り5分30秒で75-83と詰め寄る。 この後もしっかりとディフェンスで粘り、オフェンスへ持ち込む日本。橋本がタフな3ポイントシュートを決め、今村がオフェンスリバウンドをもぎ取りフリースローを獲得するとこれを決めて、残り4分を切って80-85の5点差とカナダを射程圏内にとらえた。 逆転へ勢いを得たい日本は今村がカナダのパスをスティール、速攻に持ち込むがこれを決めきれず、逆にカナダの速攻を浴びる。ここからインサイドを攻められなくなり、リバウンドからカナダの速攻を立て続けに作られ0-10のスコアリングランを食らい万事休す。緊張の糸が切れた日本は終盤に突き放され、84-99で敗れた。 🏀第40回ウィリアム・ジョーンズカップ#AkatsukiFive 日本(3勝5敗)84-99 カナダ(7勝1敗)「大事なのは結果だけではなく、サイズアップによってコンバートした選手たちが不慣れなポジションでもしっかり戦えたことが収穫です」エルマン・マンドーレHC試合経過・結果→https://t.co/GrP0plWJar pic.twitter.com/w9LnF6hwtn— 日本バスケットボール協会(JBA) (@JAPANBASKETBALL) 2018年7月22日 今大会での経験をBリーグのコートで結果に変えろ 勝負どころでの精度を欠いたのは課題だが、粘り強いディフェンスからの速攻と積極的なアウトサイドシュートと、今大会を通じて見せてきた持ち味でカナダを追い詰めたのは収穫だ。 大会を通じて3勝5敗、9チーム中6位と結果だけ見ればパッとしなかったが、これからのBリーグを担う世代を中心に、所属チームではすでに主軸だが代表でのチャンスに恵まれなかった何人かの選手が絡み、大会を通じてどの選手もそれぞれ持ち味を見せた。 ヘッドコーチを務めたエルマン・マンドーレもこうコメントしている「このチームにとって大事なのは結果だけではなく、サイズアップによってコンバートした選手たちが不慣れなポジションでもしっかり戦えたことが収穫です」 9日間で8試合のこの大会は、どの選手にも貴重な経験となったはず。結果は大会成績ではなく、参加選手がそれぞれのチームに戻ってBリーグでのパフォーマンスをどれだけ向上させられるかで判断すべきだ。それはきっと「パッとしなかった」とは真逆の結果になるはずだ。新シーズンのBリーグで結果を出した彼らが、A代表の確かな戦力へと成長するのを楽しみに待ちたい。2018/07/22日本代表