ピック&ロールを使ったクリエイト能力ではリーグ屈指の実力の持ち主
アルバルク東京は琉球ゴールデンキングスとの先出し開幕節で2敗を喫したものの、その後は4連勝を記録している。新加入選手を多く加えたチームは機能するまでに時間がかかるものだが、その時期を勝ちながら過ごしているのは間違いなく良い傾向だ。前節で対戦した信州ブレイブウォリアーズは攻守に隙のない難敵だったが、堅実な試合運びで7点差、12点差で勝利している。
新加入のポイントガードのジョーダン・テイラーは、チーム合流の遅れもあってスロースタート。日曜の信州との第2戦で初めてプレータイムが20分を超え、13得点3アシストを記録した。安藤誓哉が移籍した穴は田中大貴のポイントガード起用で埋めてきたが、テイラーが本格稼働することでチームはようやく本来想定していた姿となる。
テイラーは試合後、「バランスの取れた内容で、チーム全員で勝ち取ったものだと感じている」と満足気に試合を振り返った。
テイラーは昨シーズン、レバンガ北海道に加入してBリーグで初めてプレーした。この時も新型コロナウイルスの感染予防対策でチーム合流が遅れ、シーズン終盤にはケガもあってフル回転とはいかなかったが、得点力のあるポイントガードとして存在感を発揮し、平均24分の出場で14.6得点、5.0アシストを記録している。
ピック&ロールから判断力の良さとパスの精度、そして自らアタックしてコンタクトを受けながらでもシュートを決める能力は、日本人ポイントガードには真似が難しいもの。A東京の武器といえば田中大貴とアレックス・カークの連携による多彩な展開だが、ビッグマンはセバスチャン・サイズにライアン・ロシターと今まで以上にタレントが充実した。これに加えて起点となる選手としてテイラーが機能すれば、攻めのバリエーションが増えて相手にとってはより止めづらいものとなる。
ピック&ロールを使ったクリエイト能力ではリーグ屈指。その彼をA東京が獲得したのはベストとも呼ぶべき補強だ。テイラーも自分に求められる役割は自覚している。「北海道では得点を求められていたので、そのイメージが昨シーズンはありました。逆に今シーズン、アルバルクは能力の高い選手が集まっているチームなので、司令塔としてチームを生かして組み立てていきます。ポイントガードの役割を果たし、ファンの皆さんに周りを生かすプレーを見てもらいたい」と言う。
「自分がプラスアルファのポイントガードとして周りを生かす」
「ルカ(パヴィチェヴィッチ)ヘッドコーチはしっかり組み立てられたオフェンスを求めています。いかにそのレベルにたどり着けるか。相手のディフェンスの弱点を把握して、センター陣をどう使うか。田中選手もクリエイトするプレーヤーなので、息の合ったプレーをしていきたい。チームの遂行力のレベルを下げることなく、自分がプラスアルファのポイントガードとして周りを生かすようなプレーをしたいです」
帰化選手とアジア特別枠の活用が進んだことで、いわゆるビッグマン以外のポジションに外国籍枠を使うチームは増えてきた。その中でもリーグ屈指の戦力を誇る優勝候補に加わったことで、テイラーへの期待は非常に大きなものとなっている。
「自分の持ち味である周りを生かすクリエイティビティ、パスだけでなく自分のスコアも狙いつつ、しっかりとアシストに繋げる連携プレーをどんどん、そして高いレベルでやっていきたい。我々のチームには非常に能力の高い選手がいるので、自分も含めて周りの選手を生かして、チーム的にも一段階も二段階もギアを上げていって、最高のパフォーマンスをお見せしたい。それと同時に勝ちに繋げたら非常に幸いだと思う」
日本人のポイントガードにはない持ち味を見せたい、という気持ちも強く持っている。「日本人ポイントガードには富樫勇樹選手がいますが、僕の方が身長はあるので、自分のサイズに加えてクリエイティビティ、周りを生かすパッケージでチームに貢献して、勝利を重ねていきたい」
彼が意識していたのかどうかは定かでないが、名前を挙げた富樫とは今週末に対戦する。Bリーグでも屈指の実力を持つポイントガードがどんなマッチアップを見せるか、そしてチームメートを生かすプレーも含めた『パッケージ』として、どちらがチームの勝利に貢献できるか、楽しみな試合になりそうだ。