ハイテンポなバスケットが落とし穴にはまる
栃木県の県南体育館で行われた栃木ブレックスとサンロッカーズ渋谷のプレシーズンゲーム。中盤まで接戦が続いたが、最後は栃木ブレックスが突き放して84-66で勝利した。
立ち上がりはサンロッカーズ渋谷がシンプルかつスピーディーな攻めで4-0とスタートダッシュに成功する。しかし、栃木ブレックスはジェフ・ギブスのリバウンドを中心としたディフェンスで相手の流れを止めて、自分たちのバスケットを展開する。
ここでチームに勢いを与えたのは田臥勇太だ。ドリブルで切れ込むと見せ掛けてゴール下で竹内公輔がフリーになる瞬間を逃さずパスを出し得点を演出。さらには大胆なカットインからファウルをもぎ取り、フリースローをしっかりと沈める。残り5分17秒、田臥が相手守備陣の裏を突くバウンズパスで熊谷尚也の得点をアシストして15-8、ブレックスファンの大歓声の中でサンロッカーズ渋谷がたまらずタイムアウトを取る。
満原優樹とアイラ・ブラウン、2人のビッグマンを代表に出しているサンロッカーズ渋谷はリバウンドで劣勢だったが、ジャック・カディームの投入で高さのハンディを補うと、その後は一進一退の攻防を繰り広げる。両チームとも激しいディフェンスの応酬となり、第2ピリオドは10-11のロースコアで推移。前半は36-29と栃木ブレックスの7点リードで折り返した。
第3ピリオドになると試合は激しく動き始める。サンロッカーズ渋谷はハイテンポなオフェンスをベースに、広瀬健太が多彩なプレーで変化を付けて次々とチャンスを演出。猛烈なペースで追い上げ、広瀬のバスケット・カウントによる3点プレーで40-43と3点差まで追い上げる。だが、サンロッカーズ渋谷の勢いが最高潮に達したところで落とし穴が待っていた。
攻め急いでミスが出始めると止まらないのがハイテンポなバスケットの怖いところで、ターンオーバーを連発してしまう。逆に栃木ブレックスはこの勝負どころでオフェンス、ディフェンスともに冷静さを保ち、相手のミスを逃さず突いていく。第3ピリオドのラストプレー、落合知也が反転しながらのジャンプシュートを沈め、栃木ブレックスが58-45とリードを13点にまで広げた。
最終ピリオド、田臥とギブスがコートに戻った栃木ブレックスがさらに一伸び。トミー・ブレントン、須田侑太郎がタフショットをねじ込むビッグプレーも飛び出して、粘るサンロッカーズ渋谷を突き放した。最終スコアは84-66、地元ファンを満足させる内容と結果で、栃木ブレックスが勝利した。
新加入の竹内公輔「すべてにおいて良くなっている」
敗れたサンロッカーズ渋谷のヘッドコーチ、BTテーブスは「良いディフェンスからファストブレイクに持っていく、栃木のディフェンスの前にそれがやらせてもらえなかった」と試合をこう振り返る。一方の栃木ブレックスを率いるトーマス・ウィスマンは、「前半にシュート成功率が低く、得点が伸びない中、ディフェンスでターンオーバーに持ち込んだり、オフェンスリバウンドで攻撃機会を持つことができたり、得点以外で良いパフォーマンスが出せた」と、決して簡単ではなかった試合できっちり勝利したチームのプレーを称えた。
ゲームハイ(タイ)の13得点を挙げた遠藤祐亮は「激しいディフェンスの練習を試合に出せたことが結果に繋がったと思います」と試合を振り返る。「シーズン開幕に向けてもっと精度を高められるよう準備します」
新加入の竹内公輔は21分強のプレーで12得点。試合を重ねるごとに新しいチームのバスケットに順応している手応えを感じている。「以前は意思疎通ができなくて、くだらないターンオーバーもありましたが、毎日の練習で『ここはこう動いてほしい』という会話をしていますし、今日の試合の中でも『さっきのプレーはこうしよう』みたいな声がいっぱい出ています。すべてにおいて良くなっています。現時点では100点ではありませんが、プレーオフまで完成度をずっと高めていきたいです」
次はいよいよ開幕戦。竹内はプレシーズンをこう振り返る。「京都に負けたことが良い教訓になりました。プレシーズンであっても、ホームである限りは負けちゃいけないという文化がこのチームにはあるので」
栃木ブレックスが目指すのはBリーグ初代王者のタイトルだ。2週間後に控えた開幕への意気込みを、竹内はこう語る。「バスケ界がこの上なく注目されているのを感じます。開幕戦はホームでの開催です。ブレックスアリーナでまだ試合をしていない僕には、アリーナがたくさんのお客さんで埋まる姿が楽しみです。開幕2連勝できるように、もっともっと高めていきたいと思います」