第1戦とは打って変わって川崎が追いかける展開が続く
10月17日、川崎ブレイブサンダースはホームで広島ドラゴンフライズと対戦。35点差で圧勝した前日と違って終盤まで一進一退の攻防となるが、最後は34得点を挙げた大黒柱のニック・ファジーカスを軸に要所を締めることで82-80で競り勝った。これで川崎は5勝1敗としている。
出だしは互角の戦いとなったが、試合開始5分で広島はアイザイア・マーフィーが得意のドライブからゴール下でコンタクトを受けながら決めきると、さらに3ポイントシュートも沈める活躍を披露。さらに岡本飛竜の激しいディフェンス、古野拓巳の3ポイントシュートと控えガード陣の奮闘が光り、広島が26-22とリードする。
第2クォーターに入っても広島の流れは続き、岡本のスティールからの速攻が決まる。前日は川崎の徹底マークで沈黙したエースのグレゴリー・エチェニケもドライブからバスケット・カウントを決めてリードを広げていく。さらにベテランの朝山正悟が代名詞の3ポイントシュートを連続で決め、オフィシャルタイムアウトまでに13点のリードを奪う。ただ、ここから川崎もパブロ・アギラールの活躍で追い上げを見せるが、広島が44-38とリードを維持した。
第3クォーター序盤、川崎はアギラールが3つ目のファウルを喫し、早々に先発のビッグラインアップを解かざるを得なくなる。広島はその隙を突くようにエチェニケ、ジャマリ・トレイラーを軸に得点を重ねていく。しかし、川崎は辻直人が得意の3ポイントシュートを沈めこのクォーターだけで11得点を挙げる活躍で牽引し、62-62と追いつく。
第4クォーター、広島はトーマス・ケネディの長距離砲が効果的に決まり、オフィシャルタイムアウトを5点リードで迎える。しかし、ここからエチェニケがファウルを重ねてしまい残り3分半には痛恨のファウルアウトに。ここから川崎は、よりインサイドを強調したオフェンスを展開。ファジーカスを筆頭にビッグマンが着実に得点を重ねることで粘る広島を振り切った。
「最後はビッグラインアップで押し戻してくれた」
連勝を5に伸ばした川崎の佐藤賢次ヘッドコーチはこう総括する。「ジョーダン(ヒース)がコンディション不良で出られないことでインサイドが手薄になり、エチェニケ選手をどう止めるのかの部分で後手に回って勢いを持っていかれてしまいました。また、2戦目で相手のディフェンスはエナジーが高く、フルコートで当たって来る中で、ウチがやりたいことをやられてズルズルといってしまった。ただ、ハーフタイムでそこを修正してなんとか最後は勝ちきれて良かったと思います」
この試合、川崎はヒースの欠場に加え、ビッグマンがファウルトラブルに陥ることで昨日の大勝を導いたビッグラインアップを思うように展開できなかった。ただ、「最後はビッグラインアップで押し戻してくれたのが良かったです」と指揮官が語るように、今日もここ一番ではこの布陣が大きな威力を発揮した。
また、前日の6得点に対し、20得点を取られたエチェニケ対策にしても及第点を与えている。「インサイドでポジションを取られてしまうと、なかなか1人では止められない。チームで守るように準備をしましたが、外からアタックするなどいろいろなバリエーションで点を取られてしまいました。ただ、彼の特徴であるオフェンスリバウンドは2本に抑えられた。そこは40分集中できたのは良かったと思います」
当然、いろいろな課題もあり、「選手の起用法、ファウルマネジメントについては真摯に受けとめて反省したい」と佐藤ヘッドコーチは特に自身に厳しい目を向ける。ただ、どんな内容でも1勝に変わりはない。特にコロナ禍で今後、どんなリーグ状況になるか分からないだけに「何よりも、今シーズンは昨シーズン以上に勝つことが大事。長期的なプランはありますが、何が起こるか分からないシーズンを戦っている中で勝ち切れたことは本当に良かったです」と安堵した表情を見せていた。
「川崎さんをここまで苦しめたのは自信を持って良い」
一方、広島の堀田剛司ヘッドコーチは、「勝てるゲームを落としてしまったと感じています」と第一声を発した後、前日の大敗からしっかり立て直した選手たちを称えた。「昨日の大敗でメンタルコントロールが難しいですが、今日の試合に向けてしっかり調整して良いエナジーを出して戦ってくれたと思います」
敗れたとはいえ、目立ったのはガードの岡本飛竜だ。開幕から3試合連続でほとんど出番なし。さらに昨日も10分半の出場時間はあるが、それは大量リードを許し試合の趨勢が決した後でのものだった。それが今日は第1クォーター途中からコートに立つと、いきなり前から激しく当たってスティールを奪うなど守備でチームに流れをもたらし、攻撃では積極的なドライブを披露。16分半の出場で6得点5アシスト2スティールを記録した。
この岡本の奮闘は、敵将の佐藤ヘッドコーチも「第2クォーターの最初、岡本選手がディフェンスでエナジーを出し、彼にターンオーバーを奪われてスタートしました。『岡本選手が出てからやられているよ。戦術どうこうではなく、目の前の相手との一つひとつのバトルに勝たないとうまく行かないよ』という話をしました」とハーフタイムに言及するインパクトだった。
そして堀田ヘッドコーチは岡本、そして古野と司令塔の2人を同時起用する2ガードに手応えを得たと語る。「岡本選手はディフェンスのインテンシティが高く、そこで貢献してくれました。古野選手はシュート力があり、2ガードとして今後はあるなと感じました」
「チャンピオンチームのレベルにいる川崎さんをここまで苦しめたのは自信を持っていいです」と指揮官が締めくくったように、広島にとっては敗れた中でもポシティブな要素は少なくなかった。ただ、同時に勝負どころでエチェニケが不用意な連続ファウルで退場。さらに残り10秒、4点差で負けている場面でクイックシュートを打つことができず、ブザービーターを放って試合終了など、接戦を勝つために必要な試合運びに大きな拙さを露呈した。
これで広島はアルバルク東京、川崎と優勝候補との対戦を4連敗で終えた。ただ、シーズンの早い段階で激突することで、今後の大きな糧となる貴重な経験を積めたことは間違いない。これをしっかり生かすことで、まだまだここから巻き返していくことは十分に可能だ。