取材・写真=鈴木栄一 構成=鈴木健一郎

Bリーグは初年度の開幕前からSNSでの情報発信に力を入れる方針を明確に定め、各クラブもこれに歩調を合わせている。「勝負事には勝つ」が信念の島田慎二がクラブ代表を務める千葉ジェッツでは、TwitterやFacebookでのファン獲得にも力を入れてきた。島田自身や広報の精力的な情報発信にチームの好調も重なり、千葉は『SNSを活用した情報戦』でもリーグ屈指の存在となっている。ただ、SNSの情報発信は堅苦しくやればいいものではない。有益な情報を分かりやすく届けるために工夫をこらす日々。そんな中、不意に生まれたのが『ファンとの飲み会企画』だ。島田の発案から、ホームタウンプレーヤーである原修太を巻き込み、「面白そうだからやろう」の熱意で企画が動き出した。有益な情報をバスケットボールファンに提供するだけでなく、面白そうなことにはできる限り首を突っ込むのがモットーの『バスケット・カウント』も負けてはいられない。「面白そうだから取材しよう」の精神で、2人を直撃した。

【超緊急企画】密かに凌ぎを削る代表島田& #ハラーニくん のフォロワー数??両者が1月中に1万人に達したら何と抽選で1名様に島田&原選手と行くディナー権を進呈??その他ユニフォームや島田からのビッグギフトも検討中??

応募はジェッツ公式フォロー&このツイートのRTだけ? #拡散希望 pic.twitter.com/Pa7LWm5vLg

— 千葉ジェッツふなばし (@CHIBAJETS) 2018年1月18日

島田「援護射撃のおかげで達成できました」

──これまでもファンサービスは様々な工夫して実施してきたと思うのですが、飲み会となると聞いたことがないし、社長と選手という組み合わせもユニークです。企画の発端は何ですか?

島田 そもそも私の思い付きです。私のTwitterのフォロワーが伸びてきて7100ぐらい、原も同じくらいだと気づいて、「じゃあ原と私の競争にしたら面白いんじゃないかな」と。だからキリの良い1万人までフォロワーが増えたら何かしようと考えて。最初は私と原と、1名様を豪華ディナーにご招待ということでワッと盛り上がったんです。

そうですね。ツィートしてすぐに700人とか800人はフォロワーが増えました。社長のツィートに皆さんがコメントをくれて、その流れで「飲み会にして参加者をもっと増やしたほうが喜んでもらえるよね」という会話になって、30名様ご招待になりました。

島田 30人でワイワイ飲み会をしたほうが楽しいかも、とツィートしたら盛り上がっちゃって。飲み代も全部持つという話でまたワッとなって。それで盛り上がってフォロワーの数も増えていきました。

──期日である1月末の1日前に2人ともフォロワー1万人を達成しました。

島田 最後の3日ぐらいで伸び悩んで、この勢いじゃダメかなと思っていた時に麒麟の田村裕さんが入って来てくれたんです。それに対してツィートした「援護射撃ありがとうございます」がまた拡散されて。それに富樫(勇樹)が乗っかってきたり、いつも絡んでいるいろんな方々の援護射撃のおかげでフォロワー1万人を達成できました。

バスケが好きならこの方をフォローして欲しい!この方はバスケ界にさまざまな風を送り込み、あらゆる角度からバスケを盛り上げてくれます!ビジネスマンとしても成功の秘訣が日々の言動に現れています。勉強になると思いますよー! https://t.co/opxVPIu5Wh

— 麒麟田村裕 (@hiroshi93) 2018年1月28日

原「ギリギリに起きたのでTwitterを見る暇もなくて」

──原選手はどんな心境でフォロワー1万人到達を迎えましたか?

残り2日の時点で「これは行けそうだ」という感じでした。最後はなんか減ったり増えたり、1万人目を狙っている人がいるみたいで。社長には「私が1万人目のフォロワーです」という証拠動画があったり。1月30日の夜中に社長が1万人に到達したのは見ていたのですが、僕が到達したのは31日の早朝だったんです。トレーニングが朝で、ギリギリに起きたのでTwitterを見る暇もなくて。トレーニングが終わった時にみんなが盛り上がっていたので気づきました。

──自分のほうが先に到達したいという気持ちはありましたか?

最初に社長から連絡をもらった時は「一緒に行ければいいな」と思っていたのですが、社長が「原より先に到達したい」と言い出して、社長は有言実行の人なので、それをここで覆したいという悪い企みがありました(笑)。でも負けましたね。

島田 どっちかが到達すれば行くんですよね。私と原が両方1万人に到達しないと飲み会はないんですから。それも一つの煽りですよね。そもそも社長と選手が争っていること自体が笑っちゃうし、私は選手に本気で負けたくないと思っていて、それも滑稽だけど面白い。皆さんそうやって面白がってくれたからフォローしてくれたんですよね。

改めましてありがとうございました!
よりによって達成日に今回の相方とごはん。『なんて日だっ!!』笑
たくさんの飲み会??の申し込みお待ちしてます!!偶然ですが、今日で #千葉ジェッツの社長になって丸6年。いろいろありましたが、支えていただいた全ての皆様のおかげです。感謝申し上げます?? pic.twitter.com/mK0naeFW14

— 島田 慎二 (@SHIMADASHINJI) 2018年1月31日

島田「原だけにおいしい思いをさせてしまった」

──シーズン中にこれをやる、というのも面白いですね。

僕は結構昔からTwitterをやっていたので、3000人を増やすのが相当難しいのは分かっていました。社長はためになるツィートをしていますが、僕はしょーもないツィートしかできないですし(笑)。社長が提案してくれた企画で1万人の方が見てくれている状態になったので、そこはすごくありがたいです。僕はちょっと人見知りなので飲み会は不安なんですけど(笑)。

島田 私が相当頑張らないといけないと思っていますけど、ちゃんとしゃべってよ?(笑)

もともとそんなにしゃべるキャラではないので、最初はちょっと硬いかもしれません……。飲み会は実際のところどんな感じになるんですかね?

島田 応募が580人ぐらい来て、思いを書いてもらったんですが、結構皆さん本気度満載で書いてくれていました。いろいろな人がいて面白いですよ。ジェッツのブースターと他チームのファンと半々ぐらいです。遠いところでは北海道からも沖縄からも応募がありました。抽選の結果次第ですが、この飲み会のために飛行機で来る方も何人かはいると思います。今回は原派と島田派で半々ぐらいに分けました。島田派のほうが30代から40代と年齢層高めですね。

──SNSでの情報発信に力を入れている千葉さんですが、今回の企画で得られた新しい発見はありましたか?

島田 リーグとしてはSNSの有効活用を積極的にやっています。その中でクラブの公式フォロワー数はもちろん、選手のフォロワー数も見ています。ジェッツは単体でも選手の総計でもトップクラスです。選手でフォロワーが1万人を超えているのは富樫と西村(文男)と阿部(友和)。今回の企画で盛り上げたことで、原のフォロワーを増やすことができたのは発見ですよね。極端な話、この飲み会を「島田と石井(講祐)と原で飲み会」にしておけば、石井も1万人に行っていたと思います。そういう意味では原だけにおいしい思いをさせてしまったなと(笑)。

──原選手は今回フォロワーが一気に増えて、プレッシャーはありませんか?

プレッシャーは全然感じないんですけど、今回の企画をやる前からフォローしてくれていた人たちも含め、何もツィートしないのでは1万人の意味がないので、特にアウェーの試合後にはもっとツィートしたいと思います。ホームゲームであれば試合後にコーチが話したり、挨拶する機会がありますが、アウェーでは御礼が言えないので、ツィートでそれをやりたいです。

この時近くにいた私は「ちょ、いいすか?足…めっちゃやばいんで」と言われてストレッチのお手伝いをさせられましたが…よく見たら人にやらせといてなんてくつろいでやがるんだ…広報の仕事じゃないぞこれは?(?`H´?)? pic.twitter.com/8xIsthL858

— 千葉ジェッツふなばし (@CHIBAJETS) 2018年2月6日

原「毎日の練習が自分のためになっている」

──今回『おいしい思い』をした原選手は地元出身の選手です。ホームタウンプレーヤーがチームにもたらす影響力は大きいと感じますか?

島田 あると思います。別にホームタウンプレーヤーだから原が今回の企画に参加したわけじゃなく、たまたまフォロワーが私と同じくらいだったのと、原と私の組み合わせというギャップは楽しんでもらいやすいと思ったからです。選手は結果を出すことで評価されるわけで、我々もホームタウンプレーヤーがいないといけないと考えているわけではありません。一番良いのはチームに必要な選手がたまたま地元出身であること。そういう意味で石井や原はベストです。お客さんを入れるために地元の選手を集めるような感覚は、優勝を狙う今のジェッツにはありません。にもかかわらず、契約選手12人のうち2人のホームタウンプレーヤーを抱えられるというのはありがたいです。

僕はミニバスや中学校の頃に行ったクリニックで拓大の池内泰明さんに教わって「ああいう選手になりたい」と思いバスケを頑張って続けました。自分の場合は特に、強い高校や大学に行っていたわけではないので、そういう意味ではこの船橋出身のプレーヤーが活躍することが、小さな子供たちに勇気を与えられると思っています。

──加入3年目のシーズンも終盤ですが、『ジェッツの末っ子』はそろそろ卒業ですか?

優しい先輩方が可愛がってくれるので、プライベートでは今のままでいいと思っています。下が入って来たとしても、学生時代から僕は先輩面ができないというか、後輩とも友達みたいな感じになると思います。でもバスケの面ではもっと成長して、今の課題である状況判断やバスケIQを向上させて、良い意味で若手らしくないプレーヤーになりたいです。現状に不満があるわけではないですが、中心選手としてやっていたほうが絶対に楽しいですし、点を取るのがバスケの醍醐味でもあるので、そういう選手を目指して大野(篤史)さんの下でバスケを学んでいます。そうやって、いずれはこのチームの中心選手になりたいです。

島田 そうなってほしいし、そうなってもらわないと困ります。今はスタメンなわけだから。多少の遠慮はまだあるかもしれないし、役割もあるでしょうが、原には2桁得点をコンスタントに取る選手になる資質があると思います。もともと大学時代は点取り屋で、プロに来て考えるバスケをやって、昔にないところが伸びている一方で、本来の良かったところが影を潜めているのかもしれない。本来持っているものとプロになって吸収したものをうまく混ぜて、ここからチームの中心になるのはもちろん、日本でもトップクラスの選手に成長してほしいです。

そうですね。プロに入って、強いチームはディフェンスをしっかりやることを学びました。そういう意味で昨シーズンはディフェンスとリバウンドにフォーカスして、ハードにプレーすることを学びました。昨シーズンはそこだけを頑張っていれば許されていたのを、今シーズンは大野さんと話して、もっともっと成長するために厳しく指導してもらっています。本当に毎日の練習が自分のためになっていると思います。

#Bリーグバレンタイン ジェッツの末っ子 #原修太 選手?鋼の肉体で魅せるアグレッシブなプレーとオフコートでの少年のような振る舞いのギャップにウホッ詳しくは▼https://t.co/wyvloZUgK4 pic.twitter.com/KfJOKG7rFp

— 千葉ジェッツふなばし (@CHIBAJETS) 2018年1月29日

原「飲み会でのファッションは龍猛さんに相談します」

──原選手はプレーで頼もしいのはもちろんですが、プレー以外でも『愛されキャラ』として幅広い層から人気がありますよね。自分の人気についてはどう感じていますか?

ゴリラキャラが定着してからは、いろんな方々が気さくに声をかけてくれますね。特に子供は「あ、ゴリラだ」みたいな感じで来てくれます。大人の方にゴリラと言われるとちょっと複雑だったりするんですけど(笑)。それでも広報が写真を撮ってツィートしてくれるからこそファンの方が反応してくれるので、これからもっとサービス精神旺盛になれるよう意識したいです。

──人気選手になって、プライベートでも『見られている意識』があったりしますか?

入団当初は髪型を気にしていませんでした。興味がなくて、物欲もないし。表参道の美容院に行く人なんかを見ると「なんでそこまでするんだろ?」と思っていたんです。だけど龍猛さんや富樫とか文男さんから「もうちょっとどうにかしたほうがいいよ」と言われて、確かに見られる仕事ですし、自分も変わらなければいけないと思って最近は美容院に行くのですが、興味がないので全部「お任せでお願いします」です。服装も龍猛さんが「参考にしろよ」と雑誌を見せてくれたり、午前中練習で午後に何もない時には龍猛さんが付き添ってくれてホテルの近くにショッピングセンターで買い物して。そこで阿部さんが急に乗り気になってすごくいっぱい買ってたりして。そうしていると服にも興味が出てきますね、まだ少しですけど。

──飲み会でのファッションに期待してくれ、という前振りですね(笑)。

ちょ、ちょっと龍猛さんに相談します(笑)。

島田 普段はジャージでいいけど私服は最低限は気を遣ってもらいたいですね。文男みたいにこだわれとは言わないけど。選手は身体つきが良いからジーンズとTシャツでもカッコいいはずだから、爽やかだったら良いんじゃないですかね。

例の千葉ジェッツ、1万人フォロワー獲得達成で飲み会企画。あれから6時間、島田代表9801フォロワー(+236)、原選手9563フォロワー(+261)。「やると言ったら絶対にやる」という島田代表の言葉そのまんまに推移してますねえ!(ついでに過去記事を宣伝っと・笑)https://t.co/x0dUp0iHz0

— バスケット・カウント (@basket_count) 2018年1月30日

島田「原ちゃんポーズでファンを沸かせてほしい」

──島田さんは原選手のファンへの対応とかキャラクターをどう見ていますか?

島田 そこはあまり意識していません。人それぞれなので。どちらかと言うと試合でシュートを決めた時にポーズを取るとか、そういうのをやってほしいです。原と言えば末っ子キャラはいいとして、アグレッシブで闘争心溢れるディフェンスで、そこに加えて得点を決めた時には原ちゃんポーズみたいな何かでファンを沸かせてほしいです。何か考えて、飲み会でお披露目しよう。バック転とかでいいんじゃない?

ちょっと練習しようかな(笑)。でも、試合中にパフォーマンスができるくらいの余裕がないといけないですよね。決めても次がディフェンスだと戻らないといけないので(笑)。

島田 飲み会企画までに考えてお披露目するのはどう?

──この記事でファンの方々に募集して、飲み会で決定してお披露目しましょう。

島田 いいですね。選手入場の階段の上でのポーズと、得点を決めた時のポーズ。これを皆さんからアイデアを募集して、3月20日の飲み会で発表します。飲み会に来てくれた方が最初に見るということで。その次のホームゲームが三遠戦だから、そこでお披露目しましょう。三遠戦はちょうどホームタウンふなばしDAYだから、そこで船橋出身の原がやるのはバッチリだね。

記事でもお伝えしたとおり、千葉ジェッツの愛され末っ子キャラにして地元船橋出身の原修太選手が『原修太ポーズ』のアイデアを募集します。「#原修太ポーズ」のハッシュタグとともに、ツィートでも動画でも詩でも、体裁は問いませんのでお寄せください!https://t.co/xkXZ6Y4wqk pic.twitter.com/Yks3O3ILjE

— バスケット・カウント (@basket_count) 2018年3月9日

写真=Getty Images

──最後に、飲み会に向けての意気込みをお願いします。

しゃべりでは社長に勝てる気がしないので、どうにか作戦を練って、社長派の15人を原派に変えます!

島田 良い意気込みだね。それ、お言葉を返すようですけど、原派を島田派に変えるよう頑張りますよ。