田渡凌

4年目のBリーグは新型コロナウイルスの感染拡大により、シーズンが途中で中止となった。練習施設が使えずに自宅隔離を続けるなど、選手たちの生活も一変している。そんな中、選手たちは少しでもファンを喜ばせようとSNSを通じ様々な投稿を行っている。中でも田渡凌が投稿した『エアロビチャレンジ』は再生回数100万回に迫る勢いで、彼自身も「もはや最近テラハの田渡よりもエアロビの田渡になってきてる気がする」とのツィートを投稿している。この時期だからこそやるべき発信についてどう考えているのか、田渡に直撃した。

「顔を見せることが大事だと思ったのがきっかけ」

──田渡選手が発信した『エアロビチャレンジ』の反響がすさまじいことになっています。そもそも、なぜこのような行動を起こしたのでしょうか?

1990年代にアメリカでエアロビクスが盛り上がって、その時の大会の動画を見たことがあって、それがバカ面白いんです。いつかやろうと思っていたんですが、新型コロナウイルスの影響でシーズンが中止になって、家でできるエクササイズに良いんじゃないかと思いました。

──ここまでバズると思っていましたか?

自分でも面白いとは思っていましたし、友達も面白がるとは思ってましたがここまでとは(笑)。ウィザーズのマスコットも真似してくれたのはすごいと思いました。

──エアロビック競技者の方からも反応ありましたね。

そうですね、オフも長いのでその方からエアロビを習おうと思います。正直、エアロビックは競技じゃなく、おじさんやおばさんがやるエクササイズだと思っていたので、それを知るきっかけにもなりました。バスケもまだマイナースポーツですが、あまり知られていないスポーツを僕が面白くやることで注目されることがあるならもっとやりたいという思いにもなりました。

──自宅で楽しみながらできることを模索した結果、多くの人に思いが伝わったということですね。

子供がやったり親子でやってくれたり、実際そういうのを見るとうれしいですね。暗いニュースばかりですが、「少し笑顔になれました」とかコメントも多くいただいて、予想もしなかったですけど良かったです。

使命感とまでは思っていませんが、自分がどういう人間かは分かっています。他の人にない経験をしてきて、ユニークな人間だとも思っていますし、テレビ番組にも出て発言力があるというのは分かっているので。

新型コロナウイルスの感染が拡大する前はそういう発信をしたことがなかったんですけど、無観客試合が決まった時にやり始めました。僕たちはお客さんの前でプレーして喜んでもらって、僕らも元気をもらってという関係です。それが今シーズンはもうできなくなってしまい、ファンの前に出て顔を見せることが大事だと思ったので。それがきっかけなんです。

──そういうことだったのですね。『ボールを繋げ』の動画も好評ですね!

あれは僕が編集したんですよ(笑)。僕一人でやったとしたら、横浜のファンとかBリーグのコアファンは見てくれると思うんですけど、他のチームの選手と一緒にやったら他のクラブのファンも見てくれると思ったし、Bリーグ全体が盛り上がると思ったので。とにかく、ファンが何をしたら喜ぶかを考えています。

田渡凌

「『考えること』自体が大事」

──現在、様々な人たちの行動が制限されています。田渡選手は留学先で体育館が使用できない時に努力したエピソードを投稿しましたが、バスケができない子供たちにアドバイスをお願いします。

ケガ予防のためにストレッチをしてみたり、筋トレをしてみたり、やれることは限られてくると思います。それでも、自粛期間が終わって練習が始まった時に周りと差をつけられるという自信を持ちながらトレーニングをしてください。良い意味で勘違いすることが大事で、「意味があるかな」って思いながらトレーニングをやると身にならないことが多いです。

──目的意識を持ってやることがいいということですね。

そうですね、あとは時間があると思うのでNBAでもいいし、Bリーグでもいいし、映像を見てイメージトレーニングをしてください。僕らが子供の時と比べるとYouTubeだったり、スキルを知るツールがたくさんあるので。特に小学生や中学生はトレーニング知識もあまりないと思うし、僕らがそういう人たちのツールになるべきだとも思います。

SNSで「何をやればいいですか」と聞かれることが多いのですが、僕は何ができるかを毎日考えています。それを考えることがやはり大事だと思いますね。留学した時も今何ができるかをめちゃくちゃ考えて、それが今の自分の思考力に繋がっています。最初は難しいと思いますけど、とにかく『考えること』自体が大事なので、チャレンジしてみてください。