Bリーグはレギュラーシーズンの3分の2を消化したところで中止となった。これからポストシーズンに向けて緊張感が高まる状況で急に試合がなくなったことで、選手たちはモチベーションを向ける先を失い、気落ちしているに違いない。特に、今シーズンに調子を上げていた選手はなおさらだ。ここではプレータイムを指標として、今シーズンに大きなステップアップを見せていた選手のパフォーマンスを振り返る。
リバウンド力を生かしつつハンドラーとしても成長
今シーズンのサンロッカーズ渋谷は徹底したタイムシェアと前線からの激しいディフェンスを武器に天皇杯を制した。シーズンは中止となったが、27勝14敗と激戦の東地区で上位を保ち、初年度以来のチャンピオンシップ進出もほぼ手中に収めるなど、大きく飛躍した。
今シーズンからSR渋谷に加入した渡辺竜之佑は出場した38試合中10試合に先発し、平均14.6分のプレータイムを獲得。チームの誰もがローテーションに欠かせない戦力である中で、彼も重要な役割を担った。
SR渋谷はセバスチャン・サイズ、チャールズ・ジャクソンの両外国籍選手が平均4オフェンスリバウンドを超えるなど、リーグトップのオフェンスリバウンド力を誇っている。渡辺も彼らの約半分のプレータイムながら平均1.4リバウンドを記録しており、これは日本人選手の中でリーグ4位の数字だ。
11月17日の京都ハンナリーズ戦ではシーズンハイとなる7本のオフェンスリバウンドを獲得。京都の浜口炎ヘッドコーチをして「渡辺君のオフェンスリバウンドのセンス。これはどのチームも注意してますが、その中で取るのは素晴らしい」と言わしめた。また、チームメートも渡辺のオフェンスリバウンドに感化され、より意識するようになったと口を揃える。
それでもオフェンスリバウンドはもともと定評のあった部分。今シーズンに最も伸びたのはアシストだ。昨シーズンは11.7分のプレータイムで0.5アシストだったが、今シーズンは2.8アシストと急増した。
琉球ゴールデンキングスに所属していた2シーズン目は4番を任され、昨シーズンの新潟アルビレックスBBでは3番でプレーしていた。そのため、「ポイントガードをここ何年かやっていなかったので、最初はドリブルをつくのもぎこちなく、自信がなさそうだった」と伊佐勉ヘッドコーチも語っていたが、試合を重ねるにつれボールハンドラーとしてのプレーに深みが増し、アシストを量産するに至った。
徹底したタイムシェアができるということは、それだけ選手層が厚いことに直結する。オフェンスリバウンドという自分にしかない武器を生かしつつ、ハンドラーとしても成長したことで、渡辺はSR渋谷になくてはならない存在となった。