文=鈴木栄一 写真=鈴木栄一、野口岳彦

勝負の第4クォーター、守備で流れを引き寄せる

11月4日、千葉ジェッツは敵地に乗り込んで栃木ブレックスと対戦。試合序盤からずっとリードを許す劣勢であったが、第4クォーターに23-12と見事なビッグクォーターを作り出し、76-69の逆転勝利を収めた。

この勝利の立役者となったのが、西村文男と阿部友和のベテランガードコンビ。西村が1番、阿部が2番ポジションとしてプレーし、特に激しいディフェンスで試合の流れを千葉にもたらしたのが大きかった。千葉といえば司令塔に日本代表の中心である富樫勇樹がいる。しかし、今回は第4クォーターの9分間とほぼすべての時間で西村がプレー。堅実なゲームメークとディフェンスに加え、残り5分半には同点においつく3ポイントシュートを決めるなど攻守に渡って躍動した。

「オフェンスがうまくいっていない分、ディフェンスで流れを変えたい。そういう意味でも、ディフェンスの素晴らしい阿部選手と一緒に守備で勢いをつけていこうと第4クォーターに入る前は話をしていました」

第4クォーターの猛攻について振り返る西村は、「相手は強豪の栃木なので、タフなゲームになることは分かっていた。最後にウチがきっちりと良いバスケができたのが勝因だったと思います」と試合を総括している。

「良いパフォーマンスを継続していきたい」

シーズン開幕直後から西村は、故障によるコンディション不良からプレータイムが増えない時期が続いた。しかし、ケガの回復に伴って出番も増えている。中でも10月25日のレバンガ北海道戦の最後に試してみて機能したツーガードで起用されるようになってきている。

本職の司令塔としてだけでなく、非凡な外角シュート力を持っていることで2番ポジションもこなせることが彼の強みだ。実際、27日、29日の琉球ゴールデンキングス戦では、富樫が1番、西村が2番を務めるツーガードシステムでプレーしていた。

「出るポジションによって意識することは違っています。先週、勇樹と一緒にプレーした時は2番なので、どちらかといえば良いシュートが打てるようにという意識。1番で出るときは周りの選手をどう生かすかを考えながらプレーしています」

このように、プレーするときの心構えを語る西村は、「ケガが長引いてしまった中、大野(篤史ヘッドコーチ)さんとよく話しをして少しずつプレータイムを伸ばしてもらってきています。信頼は少しずつ勝ち取っているとは思うので、良いパフォーマンスを継続していきたいです」と現状について言う。

勝敗を分ける第4クォーターの起用は『信頼の証』

『信頼』に関して言えば、ここ3試合続けて千葉は競った状態で第4クォーターを迎えているのだが、そこでの西村の第4クォーターにおけるプレータイムが以下の通りとなる。

・27日の琉球戦で10分
・29日の琉球戦で10分
・4日の栃木戦で9分

今、指揮官がどれだけ厚い信頼を西村に寄せているからは、この数字が何よりも示しているだろう。そして西村は、こうして第4クォーターで多く起用されていることに「その時、その時で勝ちに行くために必要な選手を選んで出してもらっていると思うので、責任が大きいです。うれしいことではありますが、先週は1つ落としているので、自分の中ではまだまだ」と語る。

リーグ有数の選手層を誇る千葉だが、西村の戦線復帰でさらにオプションが増え、戦術の幅が広がっていることは他チームにとって大きな脅威だ。しかし、本人は「自分の中でコンディションはマックスではないです。今日もミスも何個かあり、反省も多い試合でした。基本的に自分は試合で満足することはないです」と自分に厳しい。阿部とともに、常に自らに厳しいストイックなベテランガードのコンディションが万全となった時、千葉の強さはもう一つ上のレベルに達するはずだ。