前半はスタートからエンジン全開の東芝神奈川ペース
NBLプレーオフファイナルの第1戦が大田区総合体育館で行われた。東芝ブレイブサンダース神奈川(レギュラーシーズン3位)とアイシンシーホース三河(同4位)、両チームともにセミファイナルで上位チームを破るアップセットを果たし、士気高くこの決戦に臨んだ。
立ち上がり、篠山竜青が橋本竜馬の激しいディフェンスを振り切ってドライブで切り込む果敢な攻めを見せ、東芝神奈川に流れを引き寄せる。桜木ジェイアールからボールを奪ったジュフ磨々道がワンハンドダンクを決め、ニック・ファジーカスと辻直人が連続3ポイントシュートを決めるなど、東芝神奈川の攻撃力が爆発。第1ピリオドで27得点を奪う最高のスタートとなった。
オフェンス以上に機能したのがディフェンスだ。圧倒的な高さと強さを誇るアイシン三河のキーマン、アイザック・バッツを巧みなスクリーンでリバウンドの落ちるエリアから追い出したのが大きい。主にマークを担当したのはニック・ファジーカスだが、常に他の選手もフォローに回り、連携の良さを見せた。
第2ピリオドも流れは東芝神奈川。藤井祐眞、山下泰弘、永吉佑也、栗原貴宏、ブライアン・ブッチと、ベンチスタートの選手がコートに立っても、しつこいディフェンスとリバウンドを制する意識は変わらず、やや点差を詰められはしたものの、アイシン三河に本来のバスケをさせなかった。36-28というスコア以上に、東芝神奈川の積極性と試合運びの良さが目立つ前半だった。
積極性を取り戻したアイシン三河が怒涛の反撃を開始
迎えた後半、アイシン三河が反撃に出る。ハーフタイムの指示について、鈴木貴美一ヘッドコーチは試合後にこう語った。「リバウンドは気持ちの部分が強いです。シュートが入らない時こそリバウンドを頑張らないといけないのに、シュートが入らないことのほうに気が行っていた。まずはディフェンスから入ろう、またボールが止まって人を探すようなシーンが多かったので、そこを変えようと声を掛けました」
東芝神奈川の激しいディナイディフェンスは前半と変わらなかったが、後半になるとアイシン三河が運動量を増やし、人もボールも激しく動くバスケを展開する。同時にリバウンドを外国人選手に任すのではなく、コートにいる5人で狙うように意識を引き締め直した。
リバウンドが取れるようになると、得点源のバッツがゴール下で強さを発揮し始める。前半は4得点3リバウンドと完璧に封じ込まれていたバッツが、第3ピリオドだけで10得点4リバウンドと復調し、チームに勢いを与えた。また、桜木のハイポストを多用してインサイドで積極的な仕掛けを繰り返した結果、残り6分10秒のところで東芝のチームファウルが5に到達した。
アイシン三河はなおもインサイドを執拗に攻め、フリースローで点差を詰めていく。バッツがバスケット・カウントによる3点プレーを決めたところで38-40と詰め寄る。しかし東芝神奈川にはまだ「外」があった。辻とファジーカスに3ポイントシュートを連続で決められ、49-54と5点のビハインドで第3ピリオドを終えた。
エドワーズが豪快なプレーで逆転劇の火付け役に
そして迎えた第4ピリオド。アイシン三河はまた一つギアを上げる。逆転劇の火付け役となったのはギャビン・エドワーズだ。状況が悪くても強引に仕掛け続けることで東芝神奈川を揺さぶり、そしてディフェンスでは誰よりも体を張って奮闘した。
残り6分6秒、そのエドワーズがディフェンスリバウンドを奪ってからの攻めでバッツが得点を奪い、56-56とついに追い付く。さらには比江島慎のシュートが外れるも、オフェンスリバウンドを取ったエドワーズが自ら決めて58-56、この試合で初めてのリードをもぎ取る。残り3分31秒には、この試合で初めてとなるファストブレイクの好機、柏木真介のレイアップがこぼれたところをエドワーズがプッシュして60-58とした。
終盤の勝負どころ、アイシン三河はコートに立つ5人全員が研ぎ澄まされていた。比江島が相手シュートをブロックしてそのまま攻撃に転じ、ファウルでもらったフリースロー2本を確実に決める。今度は金丸晃輔のスティールからエドワーズがパワースラムでゴールを揺らし、64-59と一気に突き放す。
東芝神奈川は、この試合で当たりに当たっている辻がその後も3ポイントシュート2本を決め、1ポゼッションゲームで食い下がるも、終盤のアイシン三河は一度手にしたゲームの主導権を引き渡しはしなかった。残り14秒、エドワーズがこの試合15点目となるジャンプショットを決め、その直後に篠山が放つ3ポイントシュートを叩き落とすブロック。粘る東芝神奈川を下した。
金丸「アイシンらしいバスケットをやれば結果は付いてくる」
最終スコアは70-65、アイシン三河が初戦を取った。相手の強みをしっかりと受け止め、そして差し返して勝つ「王者のバスケ」を初戦で見せられたことは大きい。試合後の鈴木ヘッドコーチは苦しい状況から逆転勝ちできた理由について、「シーズン中に痛い思いをしたことで、体で覚えたからです」と説明した。
「我々がリードしていて、ウチのバスケットをしていたら勝てるというゲームを、レギュラーシーズン後半に落としてきた。1位か、そうでなくても2位でシーズンを終えたいと思っていたのに、ことごとく負けてしまった。我々は(昨シーズン)勝ったチームなので、どこか驕りが出てしまいがち。そこを失敗することで体で覚えたんです。そこが最大のポイントだと思います」
試合後の比江島と金丸も、勝利に驕ることなく、なおかつしっかりと手応えを得られたことが表情からありありと見て取れた。比江島は言う。「明日からも油断はできませんが、今日の反省を生かして最初からディフェンスでプレッシャーをかけて主導権を握れるように。それができれば勝てると思います」。金丸もこうコメントした。「やることを変える必要はないと思います。アイシンらしいバスケットをしっかりやれば結果は付いてきます」
終盤に失速した東芝神奈川。特に第4ピリオドはターンオーバーを連発したことで、完全に流れを相手に持っていかれてしまった。その原因を北卓也ヘッドコーチは「ファジーカスと辻ばかりの攻めになってしまい、ディフェンスで的を絞られた」と分析する。バッツ対策については「高さについては対応は悪くなかった。横の動きに弱いので、そこをうまく突きたい。またもっとファウルをもらい、ファウルトラブルを狙ってもよかった」と、次戦に向けて修正点は見いだしている様子。
ファイナル第2戦は明日。今日と同じく大田区総合体育館で、15時試合開始となる。