「チームのみんなが自分を必要としてくれている」
『FIBA女子アジアカップ2025』の準決勝、女子バスケットボール日本代表は準決勝で中国と対戦した。ホームの大声援を受ける開催国を相手に、持ち味の3ポイントシュートを47.1%の高確率で沈め、アップテンポな自分たちの攻めを最後まで貫くことで90-81で勝利。白熱した点の取り合いを制し、2大会ぶりのアジア女王の座を懸けてオーストラリア代表と決勝を戦う。
試合の出だし、日本代表は中国のパスがよく回る組織的なオフェンスを止めるのに苦しむ。しかし、第1クォーターだけで21得点という田中こころのオフェンス爆発で食らい付き、前半を中国の51-49と互角の展開で終える。そして後半、日本は前半に26本中13本成功と高確率で決めた3ポイントシュートの勢いを維持し、宮澤夕貴の連続得点で9点リードと突き放しにかかる。
第4クォーターに入って確率が落ちたところで中国の追い上げを浴び、残り5分半には4点差にまで詰め寄られたが、この勝負どころで全員が高い集中力を維持し、ディフェンスリバウンドを取り切って相手の流れを断ち切る。最後はトランジションから田中が連続得点を挙げて、激闘に終止符を打った。
試合を通じて34本中16本成功(47.1%)の3ポイントシュートを中心に90得点を奪ったオフェンスが効いたのと同じく、サイズでは圧倒的に不利でもリバウンドで35-40と健闘し、勝負どころのディフェンスで踏ん張れたことが大きな勝因となった。時に220cmのチャン・ツーユーのサイズに圧倒されながらも、勢いに乗らせなかったことが大きい。
グループフェイズの3試合ではツーユーは平均14.3得点、フィールドゴール21本中17本成功とシュートを打ったらほぼ入る状況だった。しかし日本戦では17得点を挙げるも14本中7本成功とオフェンスの影響力を削ぎ、逆に機動力のなさを突いて優位を作り出した。
コーリー・ゲインズヘッドコーチは、「彼女がフロアにいる方が、日本は良いプレーができました。彼女はディフェンスの戻りが遅く、速攻からオープンシュートを作ることができました。彼女の得点力は脅威ですが、こちらが攻める時のメリットは大きかったです」と振り返る。
「このために私は代表に来ているようなものです」
この『ツーユー封じ』の功労者は渡嘉敷来夢だ。ゲインズは次のように渡嘉敷のディフェンスを称える。「最初は人数をかけていましたが、相手に対応されたので1対1で任せると伝えました。彼女のおかげでゴール下を守りきれました。彼女はすべてを尽くし、素晴らしいディフェンスをやってくれました」
試合後、渡嘉敷の第一声は「これですよ。このために私は代表に来ているようなものです」と胸を張った。「とにかく押して、相手を嫌がらせる自分の仕事ができたと思います。相手の圧力はかなり強かったですが、220cmでもシュートを打つ時、守備の手が顔の前からなくなるのを待っているのでボールにさわれました。それを嫌がっていたので、意地でもやり続けたのが良かったです」
今大会の渡嘉敷はシュートタッチに苦しんでいるが、チームが最も必要とするインサイドの守備でしっかりと仕事を果たしている。「世界の強豪との対戦となれば、5番ポジションは大きい選手ばかりで、そこを守り切れるのが自分の強みです。やられたところもありましたが、チームのみんなが自分を必要としてくれていることで頑張ることができています。これが自分のいる意味で、少しはチームを救えた部分だと思います」
ゲインズヘッドコーチは試合後、男子代表のトム・ホーバスヘッドコーチから祝福の電話を受け、「あと1試合残っている」と言われたと明かす。渡嘉敷も「これで優勝ではないです。オーストラリアにはグループフェイズの時、第2クォーターまでは勝っていました。決勝では40分間、自分たちのバスケを全員でやりたいです」と気を引き締める。
グループフェイズでは67-79で敗れており、この時はオフェンスリバウンドで8-18と大差をつけられた。この課題解消には、渡嘉敷の身体を張ったディフェンスが不可欠だ。