ルカ・パヴィチェヴィッチ

文・写真=鈴木栄一

過酷なレギュラーシーズン「よく戦った」と評価

4月21日、アルバルク東京はレバンガ北海道に81-74で勝利。これでレギュラーシーズンをBリーグ初年度から3年連続44勝16敗で終えている。とはいえ、今シーズンの道のりは過去2年間と比べても険しかった。プレシーズンの間、田中大貴と馬場雄大、竹内譲次の主力3選手が日本代表の活動でほぼチームから離れていた。さらに開幕直前にタイのバンコクで開催されたアジアチャンピオンズカップを戦って、ほぼ休みなしでシーズン開幕を迎えたからだ。

「開幕前の2カ月は、7カ月間のシーズンを乗り切るための準備として重要です。しかし、アジアチャンピオンズカップに出場したことで、エナジー、モチベーションなどあらゆる面で影響があった中での開幕でした。この7カ月の長い道のりに向けて大きなダメージを受けました」

このようにヘッドコーチのルカ・パヴィチェヴィッチは苦しい序盤戦を振り返る。実際、シーズン前半戦となる2018年を19勝10敗で折り返すも、そこから2019年に入ると立て直しに成功。指揮官も「シーズン前半に負けが多くなったが、中盤から後半にかけて選手だけでなくコーチングスタッフ、メディカルスタッフとチーム一体となってよく戦った。後半戦で負けたのは栃木戦、千葉戦のみで、その大半は惜敗だった」と評価するレギュラーシーズンの締めくくりとなった。

冒頭で触れた状況に加えて課題となったのは、前シーズンに優勝したからこそ、勝利へのハングリーさを高いレベルで維持することだ。「一般的に連覇は難しい。私はドック・リバースがNBAのセルティックスでリーグ優勝した後、どのようにチームをリフレッシュし、新たな優勝に向けて勝利への飢え、姿勢を取り戻すのか聞いたことがある」とパヴィチェヴィッチも語る。

それでも指揮官自身は、自らの経験でその対処を知っている。「私は現役時代、欧州チャンピオンズカップを3連覇している5人の中の一人だ。前年に勝ったことを引きずることなく、毎年新たなシーズンとして臨むことを意識していた。昨シーズンのことは昨シーズン。いかに自分たちの中で気持ちを引き締めて戦えるかが大事だ。ユーゴスラビアではハングリー精神を忘れたら選手はその場で下がってしまうと常に言われている。選手には常に『この精神をなくしてはいけない』と話している」

そして、「このチームでは、選手全員が高いモチベーションを持ってプレーしている。ハングリー精神を失うことはなかった」と、勝利への飢えの問題を乗り越えたと振り返る。

菊地祥平

菊地祥平「信じてやり抜くだけです」

連覇を目指して始まるチャンピオンシップだが、指揮官が強調するようにA東京にその意識はない。ベテランの菊地祥平も「連覇は考えていないです。ただ、優勝したいですし、テッペンに立つことしか考えていない」と言う。「地区1位ではなく、アウェーに乗り込んで戦うわけで、昨シーズンのチャンピオンと言うことはなく、1試合1試合を大事に、チャレンジャーとしてがむしゃらに戦うつもりです」と続ける。

新潟アルビレックスBBと激突するクォーターファイナルについても、あくまで自分たちのスタイルを貫くことを重視する。菊地はこう言う。「昨シーズンと同じ平常心で臨む。コーチ陣に戦略をお願いしていて、それを100%できれば僕たちは勝てる。そこを信じてやり抜くだけです。自分たちがやることをやって、(ダバンテ)ガードナー選手や(五十嵐)圭さんにプレーで上回られても、その時は仕方ないと切り替えてやるべきことを徹底的に続けていくだけ」

指揮官パヴィチェヴィッチも、タフな戦いになることは避けられないと覚悟している。「新潟は独自のペースでプレーするチーム。ガードナーというインサイドに軸となる選手がいるし、彼だけでなく、周りの選手を生かすシステムをコーチ陣が作り上げた。そして守備面も大きく改善されて勝つチームになった。相手にはホームのアドバンテージがある。メンタル、フィジカル面のタフさがまずは大事となる」

過去2シーズン、クォーターファイナルはすべてホームチームが勝利している。この流れが果たして今回も続くのか、チャレンジャーとして臨む王者がこのジンクスを打ち破るのか。来たるべき『長岡決戦』が今から待ち遠しい。