ベンドラメ礼生

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

主力選手3人が欠場、難しい敵地でも屈せず

秋田ノーザンハピネッツがサンロッカーズ渋谷を秋田県立体育館に迎えた第1戦。不利が予想されたSR渋谷だが、全員が粘り強いバスケットを展開し、秋田のアグレッシブなバスケに大苦戦しながらも後半に流れをつかみ、75-68で勝利した。

SR渋谷は前日に、広瀬健太、山内盛久、盛實海翔が今シーズンはもう出場しないことを発表。特別指定ながらローテーションの一角に食い込んだ盛實も含め、主力選手が3人揃って抜ける戦力ダウンは計り知れない。チャンピオンシップ進出の可能性が少なくなっている状況も含め、モチベーションを保つのは簡単ではない。

一方の秋田はB1残留へ向けてチーム一丸。2日前には全体勝率1位の千葉ジェッツを相手に堂々の戦いを演じ、ラスト30秒までリードして2点差での惜敗。負けはしたがパフォーマンスは上々で、この時は休養した中山拓哉も復帰し、万全の状態となっていた。

その秋田が前半はペースを握る。序盤こそ差が付かなかったが、第2クォーターのオフィシャルタイムアウト明けに攻守がガッチリと噛み合う。SR渋谷の攻めの核となるロバート・サクレ、ライアン・ケリーをペイントエリアから締め出すと、前節に千葉にも引けを取らなかったトランジションオフェンスから得点を重ねる。オフィシャルタイムアウト以降は失点ゼロ、9-0のランで33-25と秋田がリードして前半を折り返した。

中山拓哉

水曜の千葉戦に続き大健闘の秋田、あと一歩及ばず

秋田の強烈なプレッシングに苦しんだSR渋谷は、ケガ人続出で9人で選手起用も難しく、このまま秋田の勢いに飲み込まれてもおかしくなかった。それでも第3クォーターに盛り返したのだが、そのきっかけを作ったのはベンドラメ礼生だ。前半は3得点0アシストと精彩を欠いたが、後半最初のプレーでドライブでゴール下まで突き破って得点を奪うと、トランジションから伊藤駿のイージーシュートをアシスト、ケリーの3ポイントシュートを挟んで再び伊藤のミドルジャンパーをアシストしてチームを逆転へと導いた。

タイムアウト明けには正面からの3ポイントシュートをねじ込んで37-33。その後も積極的なプレーでオフェンスを演出し、残り2分40秒にはまたもドライブで秋田ディフェンスを切り崩してバスケット・カウントをもぎ取る。手の付けられない絶好調ぶりのベンドラメは第3クォーターだけで10得点3アシスト、この活躍に引っ張られたSR渋谷は27得点を奪った。

最終クォーター、秋田はオフェンスの核となっているジャスティン・キーナンにボールを厚めて追い上げを見せ、残り1分を切ってボールを運ぶケリーに白濱僚祐がプレッシャーをかけてターンオーバーを誘発。これで得たポゼッションで成田正弘がSR渋谷ディフェンスを切り裂いてレイアップまで持って行くビッグプレーで68-72、残り45秒で4点差まで詰め寄った。

それでもSR渋谷は精神的に余裕をもって時間を進め、一方の秋田は逆転への強い意志がミスに繋がり痛恨のターンオーバーを犯してしまう。ベンドラメからボールを奪った成田が、慌てて前へ送ろうとしたボールをベンドラメに奪い返されて万事休す。

千葉、SR渋谷と大健闘しながらも惜敗が続く秋田。残留プレーオフを見据えれば、ここで上位相手に良いパフォーマンスを見せることの意味は大きいが、今はとにかく内容よりも結果が欲しいところ。9人のSR渋谷がよりキツいであろう明日の第2戦では連敗を止めたい。

SR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチは「会場に飲み込まれず、自分たちのバスケを見失うことなく戦えたこと」を勝因に挙げる。不利な条件ばかりが揃った中での堂々の戦いぶり。ベンドラメの活躍は光ったが、出場した9人の選手がそれぞれの役割を果たせたからこその勝利だった。