琉球ゴールデンキングス

文・写真=鈴木栄一

怒涛のスタートダッシュを決めたSR渋谷、耐える琉球

12月23日、琉球ゴールデンキングスが本拠地でサンロッカーズ渋谷と対戦。試合序盤にSR渋谷の猛攻を許し最大で19点のリードを許す劣勢となったが、後半はわずか21失点と立て直し71-59で逆転勝利を飾った。

第1クォーター、「昨日はボールを高い位置で持たされていました。それを、得点を狙える位置でパスを受けてアタックし、シュートまで持っていくか、キックアウトする。あとはスペーシングが良くなかったので、そこの確認をしました」と伊佐勉ヘッドコーチが語る前日の反省がうまくいったことでSR渋谷のオフェンスが機能する。最初の得点こそ琉球に決められたが、そこからはこのクォーターだけで12得点を挙げたライアン・ケリーを軸に怒涛の17連続得点をマーク。琉球がノーマークのシュートチャンスを作りながらことごとく決めきれなかったこともあり、第1クォーターはSR渋谷が24-8と大きくリードする。

第2クォーターに入ってもSR渋谷の流れは続き、残り約5分半には杉浦佑成のシュートで31-12にまで突き放す。琉球も終盤に橋本竜馬らの奮闘で盛り返すが、SR渋谷が13点をリードして前半を終える。

だが、第3クォーターに入ると、「前半、点が取れなかった時間帯は個人で打開しようとしていましたが、後半チームで攻めることを徹底できました」と佐々宜央ヘッドコーチが振り返るように、琉球がチームオフェンスを展開することで流れを変えた。

橋本竜馬

対策された並里&岸本から橋本への切り替えが転機に

その鍵となったのは、並里成、岸本隆一と攻撃の舵取り役が、彼らを熟知する伊佐ヘッドコーチの対策もあってリズムに乗れないことを受け、第3クォーターでは攻撃のコントロールを橋本竜馬に任せたこと。そして、「2番、3番が起点になって、どちらかというと昨シーズンのバスケットボールに近い形にしました」と佐々ヘッドコーチが語るように、田代直希、古川孝敏がアタックの仕掛け役になったことで、パスがよく回るようになる。特に田代はこのクォーターで9得点の活躍でチームを牽引すると、琉球は48-49と1点差に肉薄して第4クォーターを迎える。

こうなると試合の勢いは琉球のもの。第4クォーター早々に橋本の3ポイントシュートで勝ち越す。一方のSR渋谷は「ディフェンスで崩れた影響がオフェンスにも及んでしまいました。一人ひとりが自分でどうにかしてやろうという気持ちが強くて、個人プレーに走ったわけではないですが、ドリブルが多くなったりパスのタイミングが遅くなったりとちょっとずつズレてしまいました」と伊佐ヘッドコーチが振り返る自滅もあり、前半のようなオフェンスを展開できない。

その結果、琉球は残り約2分半にジョシュ・スコットが昨日に続き要所でオフェンスリバウンドからのバスケット・カウント。これで点差を2桁とした琉球が、同一カード連勝を飾った。

琉球の佐々ヘッドコーチは、劣勢となった時も「最大19点差まで開きましたが、アップテンポで24秒のショットクロックである現代バスケットボールにおいては30点差くらいまでいかないと試合は分からない」と焦りはなかったと言う。

田代直希

「ムーさんにお世話になった」田代直希の恩返し

それでも指揮官は、逆転勝利に手応えを感じつつも、第1クォーターの劣勢についての反省を強調する。「オフェンスのシュート自体は悪くなかったですが、ディフェンスで我慢しきれなかった。僕の考えでは、シュートが入らないクォーターがあったら、そういう時はディフェンスで20点以下に抑えないといけない」

さらに「第1クォーターの崩れは、しっかり反省してああいう状況にならないように。今はそこが自分の中で頭がいっぱいです。勝ったとはいえ、19点差をつけられたことを負けたかのようにしっかり受け止めて見返していきたいです」と勝って兜の緒を締めていた。

今回の対決は、SR渋谷の伊佐&山内盛久に琉球の並里&岸本という『沖縄対決』が大きくクローズアップされた。だが、この試合の後半だけで12得点を挙げて逆転勝ちの立役者となった田代も、特別な思いを抱いて臨んだ一人だった。

「ムーさん(伊佐)はプロ1年目の時にお世話になったヘッドコーチで、今でもちょくちょく連絡をくれて心配してくれます。そういった人の前で良いプレーをして恩返しをしたいと思っていたので、今は満足しています」

まさに選手としては最高の形で恩返しを果たした田代を筆頭に、並里、岸本というクリエイター2人の調子が悪く、さらにアイラ・ブラウンが欠場していても劣勢をひっくり返せる。琉球の底力が示された本日の一戦となった。