18点ビハインドからの猛追で会場は興奮のるつぼに
4月8日、川崎市とどろきアリーナで川崎ブレイブサンダースvs横浜ビー・コルセアーズの第1戦が開催され、川崎が77-69で勝利した。
とどろきアリーナはこの日が声出しの解禁日。中地区首位攻防戦となった『神奈川ダービー』は最大18点ビハインドから1ゴール差にまで肉薄した横浜BCの奮闘で大熱戦となり、雨の中を詰めかけた5079人の観客が解禁初日から大声を上げざるを得ないような内容となった。
ドラマは最終クォーターに待ち構えていた。16点ビハインドで第4クォーターに入った横浜BCは、ハンドラーを担ったデビン・オリバーを起点に反撃の足がかりを作ると、残り4分13秒、川崎のタイムアウト明けに仕掛けたオールコートプレスからボールをインターセプトした須藤昂矢がシュートを決め、1桁差とする。
長谷川技のフリースローとニック・ファジーカスのフローターシュートで川崎に再び2桁差とされるも、横浜BCはあきらめない。森川正明が1on1からのレイアップシュート、森井健太のアシストからの3ポイントシュート、須藤のスティールからの3ポイントシュートと1分足らずで8得点を挙げて、残り2分20秒で5点差とすると、1分22秒、オリバーの3ポイントシュートでついに2点差。アリーナ内は横浜BCファンの歓喜と川崎ファンの悲嘆が入り混じった。
残念ながら以降は得点を奪えず、最後の望みをかけたファウルゲームにも失敗したが、最後までハドルを組み、ルーズボールを追いかけた横浜BCの戦いぶりは、地区首位攻防戦を繰り広げるチームにふさわしいものだった。
横浜BCは、2日の滋賀レイクス戦で負傷した河村勇輝に全治4週間程度という診断が出た。クラブ初となるチャンピオンシップ出場に向けた時期、若きエースガードの戦線離脱は大きな痛手だが、5日のサンロッカーズ渋谷戦に勝利し、この試合も最後まで勝敗が分からない展開に持ち込んだ。
試合後、青木勇人ヘッドコーチは前半に犯した14のターンオーバーを敗因に挙げながらも「川崎さんの得点をトータル80点以下、3つのクォーターで20点以下に抑えた。ディフェンスはこの状況でもプラン通りしっかりできたところがたくさんある」とコメント。チームハイの20得点を挙げた森川も「(点差が開いた)3クォーターの出来はすごく悔やまれるけど、4クォーターにあれだけエナジーを出して点差を縮められたことはプラスにとらえている」と振り返った。
「やっと横浜BCが神奈川のバスケの盛り上がりにからめるところまで来た」
前述の活躍を見せた森川はもちろんのこと、オリバーはダブル・ダブル、森井は10 アシストという素晴らしいスタッツを記録した。須藤は藤井祐眞へのディフェンスと勝負どころでのスティールとリバウンドで流れを呼び寄せ、赤穂雷太も川崎のベテラン勢に臆せず立ち向かった。青木ヘッドコーチには「河村の離脱がチームの奮起を促したか?」といった主旨の質問がいくつか飛んだが、彼はこれらをやんわりと訂正し、彼らが元々備えている力について強調した。
「河村選手が注目されがちなんですが、ウチのチームはそれぞれが自分の仕事にプライドを持ち、それを全うしているチームだと思っています。河村選手がいなくなったから彼らが良くなったというよりは、より輝いて見えるようになったのではないかなと」
世間はどうしても、河村という非常にキャッチーな存在を横浜BCの主役ととらえるが、青木ヘッドコーチは「全員が横浜ビー・コルセアーズの主人公としてそれぞれのストーリーを戦っている」と表現する。「自分がどの場面でどういうリーダーシップを発揮するかを常にみんな考えてプレーして、生活して、戦ってくれていると思っています。今日も崩れそうな時間帯もあったんですけど、その中でも選手たちがハドルを組んで話し合ってるのを見た時に『これなら行ける』と思いました」
Bリーグ開幕以降、川崎の一方的な展開で終わることがほとんどだった神奈川ダービーだったが、今シーズンは違う。青木ヘッドコーチは「やっと横浜BCが神奈川のバスケの盛り上がりにしっかりからめるところまで来た」と感慨を語り、森川も「首位を争うヒリヒリした状況での試合。プレッシャーも感じるけど、むしろ楽しんでいるし、すごい雰囲気の中でプレーできてあらためて幸せだなと思った」と言う。
今シーズンの両者の対戦成績は、天皇杯を含めると2勝2敗の五分。さらにチャンピオンシップ初戦で再度顔を合わせる可能性も高い。「明日に繋がる負け」(森川)を生かし、横浜BCがバウンスバックを果たせるかに注目だ。