「まだ目標を『優勝』と言っていいのか分からない」
今シーズンのシーホース三河は浮き沈みが激しい。司令塔の橋本竜馬とエース比江島慎、長らくチームの主軸を担った2人が退団し、生まれ変わったチームは開幕から5連敗。その後に7連勝と持ち直したものの、直近の1カ月は2勝5敗と負け越し、19試合を終えて9勝10敗と負け越したままリーグの中断期間を迎えた。常に優勝候補と見なされる強豪としては、当然ながら満足できないここまでの出来となっている。
スコアラーとしてチームを引っ張る金丸晃輔は、慌てることがプラスにならないことを理解し、「まだ目標を『優勝』と言っていいのか分からないです。まだ直せるところはいっぱいあるので、その段階です」とチームの現在地を語る。
試合を重ねるごとに修正を繰り返して、少しずつチーム力を高めていくしかない。そうするうちに新加入選手は環境に馴染み、既存のメンバーとの連携を築いていく。新加入の生原秀将、グラント・ジェレットのチームへのフィット感を金丸はこう語る。「生原はみんなの助言も聞き入れてパス回しを意識して、最初よりリズムやコントロールが良くなってきた感じはあります。グラントは最初は空いたら全部打っちゃう感じでしたが、打ってもいいけど打つまでの過程を大事にしたい、という僕たちの話をちゃんと聞いてくれて変わりつつあります」
勝ち星が思うように伸びないことにストレスがないはずはないが、「まだ伸びしろばっかりなんで」と金丸は笑みを見せる。
「とりあえずローポストに、は勝てない展開」
失敗もまたチームの糧となる。それを今の金丸は痛感するとともに、その過程も大切にしたいと考える。「僕たちが何をしたらチームがうまく行かないのか、こうやってしまうとダメになる、というのが明確になってきました。一つこれがダメというのは、コールバックをやっている時なんです。ハーフコートにゆっくりボールを持ってきて、コールして、はいやります、というバスケットをやっているともうダメ。勝てないんですよね。速い展開になるとチームとしても良い感じになって、天皇杯の試合みたいになるんですけど」
三河は一般的にはハーフコートバスケットを得意とするチームだと認識されており、桜木ジェイアールのポストからの展開は大きな武器だ。それでも、そこに頼ってしまう、そればかりになってしまうことでチームは停滞すると金丸は言う。「彼に入れる時は速い展開で決まらない時、落ち着かせる意味でボールを入れるべきです。毎回入れているとダメです」
開幕から5連敗と7連勝のアップダウンを、金丸はこう説明する。「開幕から、最初やろうとしていたバスケットがうまく行かずに5連敗して、インサイドに入れて落ち着かせることで勝てるゲームは勝てました。ある程度は勝てた、という感じなんですが、次は入れすぎて重たいバスケットになる感じになりました。うまくそこを織り交ぜていければ良いんですけどね」
頭では理解していてもインサイドに頼ってしまう、それが三河の抱える今の難しさだ。「ディフェンスが厳しいチームを相手にすると、煽られるのでとりあえずローポストに入れてしまう。そういうのが見られたんですよね。そうなると勝てない展開になってしまいます」
「誰かが爆発して勝つ、だけでは難しい」
そんな状況でも、桜木の個人技で押し通して勝った試合はある。またチームとして流れが良くない中でも金丸が異常なまでのスコアラーぶりを発揮して圧倒した勝ちもある。「誰かが爆発して勝つ、そういう日があっても良いと思うんですよ。でも、それだけでは難しいじゃないですか」と金丸は言う。
「チームとしてオフェンスをやった結果として、誰かのそういう爆発に繋がるのであれば良いです。だから、誰かに頼るのではなく、一人ひとりが何をやらなきゃいけないのかを認識すればもっと良くなります」
そうやって積み上げる過程を、三河は一歩ずつ進んでいる。ただ、勝率5割前後をずっとウロウロしているつもりもない。「試合の中で気づいたこと、うまく行かないことを、試合中にもっと話して、試合中に解決できればと思います。そういう面が出てきてほしいです。試合後に時間が空いちゃうと難しい部分があるので、試合中にアジャストすることです」
コミュニケーションを取って、チームで問題を解決していく。それができるようになってきたのも開幕からここまでのポジティブな変化だと金丸は言う。「僕も含めて、気付いた人が上下関係なしに言っていく必要があるし、最近はそういう空気があります」
金丸によれば『遠慮のないコミュニケーション』が取れるようになってきたとのこと。だからこそ、伸びしろがある分だけ伸びていける感覚でいられるのだろう。「本当にまだまだですよ」と金丸は言うが、その表情は明るい。金曜ナイトゲーム、三河vsライジングゼファー福岡からリーグは再開となる。金丸のプレーと三河の成長を楽しみに待ちたい。
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— バスケット・カウント (@basket_count) 2018年12月6日