田中大貴

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

過密日程の中で接戦をモノにし、饒舌だった田中

10月6日、アルバルク東京はサンロッカーズ渋谷との試合で開幕戦を迎えた。新外国籍選手であるライアン・ケリーの巧みなプレーに苦戦するも、チームケミストリーの高さで上回り、ホーム開幕戦を白星で終えた。

この初戦、田中大貴は13得点5アシストで勝利に貢献した。「自分自身もそうですけど、チームメートを見ても結構タフで難しいシチュエーションでした。苦しい試合になりましたけど、みんなで勝ち取った、大きな勝ちだと思います」と試合を振り返った。

「個人的に1本良い形で決まると乗ってくるので、そういう時はガードに話をして、自分からボールを要求してやるようにしてます」と言うように、第2クォーターは田中のピック&ロールで攻め立てた時間帯があった。ディフェンスが出てきたらパスを選択、スペースが空いたらドライブ、シュートと的確な状況判断を下した。このクォーターだけで8得点3アシストと得点に直結するプレーを見せ、「今日の試合はあの時間帯が一番良かった」と田中も言う。

試合後、ルカ・パヴィチェヴィッチは、コンディションも含めたチームの完成度を「40%」と評した。それでも苦しい試合をモノにできたのは昨シーズンのリーグを制した土台があったからに他ならない。そんな指揮官の評価を聞くと、「どんなに良くても100%って言わないでしょう」と田中は笑い、「40%は褒め言葉だと、みんなもそう思ってます」と語った。

田中大貴

左ハムストリング筋膜炎により第2戦を欠場

試合を終えた田中は饒舌で、記者陣の笑いを誘うようなコメントを何度も発していた。だがそれと同じくらい、コンディションについてネガティブな発言が多いのが気になった。アジアチャンピオンズカップ準優勝で得たものを聞かれると「自信より疲労のほうが大きい」、元NBAプレーヤーのライアン・ケリーとのマッチアップに対しては、「正直、今のコンディションではやりたくないです」といった答えが返ってくる。

「精神的にも肉体的にもキツい状況で、見えないところで身体が疲れていたりする。最後のほうは足が重かったですし、自分ではコントロールできない部分はある」と身体の疲れを連想させる言葉を多く使用した。

田中は基本的に、自身のプレーや試合内容についてコンディションを言い訳にしない。だからこそ、この初戦を終えた直後のネガティブな発言には違和感があった。すると翌日の第2戦、メンバー表に名前はあったが、田中がコートに立つことはなかった。『左ハムストリング筋膜炎』による欠場と発表された。

6日間で5試合という過密日程に加え、フィジカル色の強いアジアチャンピオンズカップを終えたばかりというタイミングでの開幕戦は、オーバーワークだったということだろう。ましてや、今シーズンのBリーグは平日開催が増え、昨シーズン以上に選手にかかる負担は大きくなる。11月30日にカタール戦、12月3日にカザフスタン戦と、ワールドカップ予選のWindow5も控えており、日本代表の主力である田中としては、そこにピークを持っていく必要もある。

過密日程に対し、「やるときはやる、休む時は休むというメリハリをしっかりつけていきたい」と話した田中が、今週末のシーホース三河戦に出場できるかどうかはまだ分かっていない。

選手、クラブ、日本代表の3者にとってプラスとなる起用法を見いだすのは簡単ではないが、代表選手に限らずプレータイム過多になりそうな外国籍選手も含め、シーズンを通したコンディション調整、ケガの予防が成績を大きく左右する要素になりそうだ。