試合終盤はファジーカス抜きのディフェンス重視メンバーで挑む
川崎ブレイブサンダースは3月27日、ホームで名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦し、103-95の激しい点の取り合いを制した。これで川崎は前日(84-89)の雪辱を果たし、ともに地区3位同士となる上位対決は1勝1敗で終わっている。
試合は序盤から川崎は藤井祐眞、名古屋Dは齋藤拓実の司令塔を軸にバランスの取れたオフェンスを展開し、互いに高確率でシュートを決めることで終盤まで一進一退の攻防が続いた。ただ、その中でも最後に勝敗を分けたのはリバウンドだった。
川崎の大黒柱はもちろん、ニック・ファジーカスで、今シーズンも彼がここ一番の勝負どころでコートに立ち続けてきた。しかし、今日はタフな日程が続くことでプレータイムのシェアが必要という背景があるにしても、第3クォーター終了時点で19得点を挙げていたファジーカスが第4クォーターで出場したのは3分17秒のみ。残り6分43秒でベンチに下がった後、コートに戻ることはなかった。藤井、篠山竜青、長谷川技、パブロ・アギラール、ジョーダン・ヒースのラインナップで川崎は最後を乗り切った。
その理由を佐藤賢次ヘッドコーチはこう語る。「第3クォーターの最初からずっとニックを引っ張っていました。そのあと、J(ヒース)とパブロが一緒に出ている時、ウチのディフェンスの強度が一番上がる時間帯です。試合中、何をやられていたのかを見るとトランジション、リバウンドでした」
「特にリバウンドを徹底的に狙われていました。(オヴィ)ソコ選手は、ニックがオフェンスリバウンドに飛び込んで取れなかったところを狙ってそのままアタックをしてくる。それにディフェンスでこちらがタフショットを仕向けても、ソコ選手がリバウンドで思い切りよく飛び込んできて、やられていました。それを抑えることができれば、勝つ道が見えてくると思いました。戻すタイミングもずっとコーチ陣と話していましたが、ディフェンスの部分を優先しました」
勝利という結果が示すように、指揮官のこの選択が的確だった。そして守備重視の布陣となれば欠かせない長谷川は、3点リードの残り1分半、値千金の3ポイントシュートを沈め攻守で大きなインパクトを残した。
「僕たちのやりたい、やらなければいけないバスケができれば結果はついてくる」
この試合、長谷川のスタッツは14分29秒で4得点1リバウンド3スティールと、これぞ守備職人のらしさ全開。そしてプラスマイナスで、ゲームハイの17だったことは、彼の数字には現れない貢献度の大きさを示している。
「ミーティングで話した『自分たちが何をしなければいけないか』を入りからしっかり遂行できました。その結果として最後、勝利することができたと思います」
こう総括した長谷川は、自身のプレーを次のように振り返る。「正直、最後の3ポイントシュートはおまけみたいな感じです。僕の仕事はディフェンスからリズムをつかんで、相手を勢いに乗せないこと。そこは試合の入りからハードにできたと思います」
おまけと謙遜する決勝弾だが、あの勝負どころで自分にシュートチャンスが来る予感はあった。「来るだろうなとは予想していました。相手の守備のローテーションが結構早いので、あのボールの展開だとコーナーは最後、空くだろうとイメージはしていました」
そして、ファジーカスを起用しない中、接戦を勝ち切れたことへの手応えを続ける。「最後のメンバーはディフェンスが持ち味、足が動きます。途中、リバウンドやディフェンスがルーズなところがあった中、ニック抜きのメンバーで勝ち切れたのはステップアップできたと思います」
川崎の次戦の相手は、敵地に乗り込んで西地区2位の島根スサノオマジックと再びチャンピオンシップ圏内のチームとの対戦となる。ただ、「相手がどこかではなく、僕たちのやりたい、やらなければいけないバスケができれば結果は必ずついてくると思います」と長谷川は、あくまで自分たちのプレーに集中する。
100点を超えるハイスコアリングゲームとなったが、それでも勝ち切れたのは、ここ一番でチームの根幹であるディフェンスで踏ん張れたから。また、ファジーカスが絶対的な大黒柱であることは間違いないが、それでも彼がいないからこその強みで難敵の名古屋D相手に勝ち切れたのは、チームとして大きな収穫と言える。
「今節も昨日やれなかったことを今日できて一歩前進しています。また成長できました」と佐藤ヘッドコーチが語るように川崎として実りのある週末となった。そして、守備強化のラインナップにおいて、ここ一番でのコーナースリーを含め長谷川の存在が大きいことを証明した一戦となった。