八村塁

八村、トーマス・ブライアントとダービス・ベルターンスとの3対1トレード

セブンティシクサーズの『ベン・シモンズ問題』はいまだ解決の兆しが見えない。昨シーズンのプレーオフで極度のシュート不振に陥り、それにより消極的なプレーに終始したことで、彼はファンやメディアから戦犯扱いをされた。それを球団やヘッドコーチが擁護しなかったとしてシモンズは不信感を持ち、オフの間を通じて連絡を絶った。開幕直前にチームに合流したものの、やる気のない態度を見せたことから練習から追い出されている。

チーム始動までには、プレシーズンゲームまでには、開幕までには……と言われ続けてきたが、開幕から1カ月以上が経過した今も、シモンズは1試合もプレーしていない。彼は「精神的にプレーする準備ができていない」という理由でいまだチームから距離を置いており、そんな彼を最初は擁護していたチームメートも、今では愛想を尽かした様子だ。

もはやシモンズにシクサーズで再びプレーする選択肢はないように思える。シクサーズはトレードを模索しているが、こちらも話がまとまらない。ダリル・モーリーGMがオールスター選手でなければ価値が見合わないとして、要求レベルを下げないからだ。彼が狙っているのはブラッドリー・ビールかデイミアン・リラード。ウィザーズもトレイルブレイザーズもヘッドコーチを交代させて再出発したばかり。勝てないチームに辟易していたエースがいよいよ退団を望めば、そこでトレードが成立すると考えた。

だが、トレイルブレイザーズはチャウンシー・ビラップスの下でまとまり、勝率5割とまずまずのスタートを切った。ウィザーズに至ってはラッセル・ウェストブルックとのトレードで加入した戦力が見事にチームにハマり、東カンファレンスのトップグループに食い込む大健闘を見せている。

シモンズ抜きのシクサーズも10勝9敗と、ケガ人や新型コロナウイルスの影響で選手を欠く不利な状況がありながらも粘り強い戦いで結果を残している。ただ、もはや戦力と見なせないシモンズのトレードをいつまでたっても成立させられず、最悪のケースとして来年2月のトレードデッドラインを過ぎるようなことになれば、選手たちが球団に不信感を抱くのは避けられない。

これでモーリーGMが折れて、オールスター選手ではなくてもチームの適切な補強になるトレードを考え始めれば、選択肢は広がる。その一つとして噂されるのが、ビール獲得はあきらめてもウィザーズとの交渉をまとめることで、そこに八村塁の名前も含まれている。八村とトーマス・ブライアント、ダービス・ベルターンスという3対1のトレードだ。

シモンズは前向きにプレーする気持ちさえ取り戻せば、いまだオールスター選手として活躍できる。シュート力の不足に目をつむれば、NBA屈指のディフェンダーであり、自らの個人技でズレを作り出してチャンスメークのできる司令塔だ。今のウィザーズではスペンサー・ディンウィディーがポイントガードを務めているが、ここにシモンズが並べば層は厚くなる。昨シーズンまではディフェンス軽視の文化にあったウィザーズにおいて、シモンズの守備力はとりわけ魅力的だろう。

ウィザーズにとっては、ウェストブルックのトレードが大成功となり、ここで再び上手く交渉をまとめられれば、NBA優勝が狙えるところまでチーム力を高められる。ビールとの契約交渉の観点からしても、ここで意欲的なチーム強化の姿勢を見せることはプラスに働く。

シクサーズからしても『ベン・シモンズ問題』を解決しなければ先に進めない状況で、今シーズンまだプレーしていない八村とブライアント、高額年俸と活躍が見合っていないベルターンスの獲得はリスクだが、八村とブライアントは、とにかく負荷の大きいエンビードとトバイアス・ハリスのコンディションをプレーオフまで良好に保つ助けとなるし、センターのジョエル・エンビード中心のチームにとって優れたシューターは何人いてもいい。

八村は2019年のNBAドラフトの1巡目9位でウィザーズに指名されてから、この2シーズンは常にスタートで起用されてきた。平均30分のプレータイムを得て、13.7得点、5.8リバウンドと結果も出している。それでも今シーズンは出遅れ、開幕から絶好調をキープするカイル・クーズマの控えに回ることになるだろう。仮にシクサーズ移籍が決まってもトバイアス・ハリスの控えとなるが、プレーの幅を広げる意味でハリスから学べることは多い。先発から控えに回れば『格落ち』にも見えるが、勝てないチームで先発で出続けるよりも、勝てるチームのローテーションプレーヤーとして存在感を出す方が彼にとってプラスになることも十分に考えられる。

NBAの移籍市場はダイナミックに、そしてドラスティックに動く。八村も例外ではなく、ひとたびその波に乗れば立場は目まぐるしく変わることになる。『ベン・シモンズ問題』がどんな波を巻き起こすのか、引き続き注目を集めることになりそうだ。