クリッパーズ

「君の好きなように決められるけれど、どこにも行くなよ」

今から6年前の2015年夏、フリーエージェントだったディアンドレ・ジョーダンは、マーベリックスとの4年契約に合意しており、あとは契約書にサインするだけの状態だった。

だが、それからほどなくして、彼はクリッパーズとの再契約に心変わりし、急転直下の残留となった。この背景には、クリッパーズのオーナーであるスティーブ・バルマー、当時のヘッドコーチだったドック・リバース、そして当時のコアメンバーだったクリス・ポール、ブレイク・グリフィン、JJ・レディックがジョーダンの自宅を訪ね、慰留するよう説得したと報じられた。

彼らの大胆な行動がソーシャルメディアを賑わせたのは記憶に新しい。その当事者であるグリフィンがレディックのポッドキャスト番組にゲスト出演した際、この件について触れた。

グリフィンは「すごく面白かった」と、振り返る。レディックによれば、クリッパーズ一行がジョーダンの自宅を訪ねる前日の時点で、残留は九分九厘決まっていたという。

レディックは「実は、前日にブレイクとDJは夕食に出掛けていた。翌朝にホテルで集合した際に、ブレイクから『DJは残留する気持ちを固めたけど、チームのみんなに集まってもらいたいみたいだ』と言われたんだよね」と笑った。

グリフィンとジョーダンは、ポールが上げるパスを豪快なダンクでフィニッシュするシーンが多く、『ロブ・シティ』という愛称で呼ばれていたチームのフロントコートでホットラインを形成していた。グリフィンは「あの時のように、みんなで誰かのために集まって、残留してもらうように話すのは良いことだと思った」と語った。

「DJは親友だし、『君の好きなように決められるけれど、どこにも行くなよ。契約にサインしてくれよ。君がいないチームなんて考えられない』と伝えたんだ」

クリッパーズは、2017-18シーズン途中にグリフィンをトレードし、そこから次々と主力選手が抜けて『ロブ・シティ』は解体された。ポール、グリフィン、ジョーダン、レディックも別々の道を歩んで今に至るが、2010年代を代表するチームに関するエピソードを当事者から聞けるのは、貴重な機会だ。