ユスフ・ヌルキッチ

「こういう気持ちになったのは、キャリアを通じて初めて」

トレイルブレイザーズのユスフ・ヌルキッチは、この1年で様々なことを経験した。

左足開放骨折から復帰間近というタイミングで新型コロナウイルスの影響でシーズンが中断し、昨夏の『バブル』でのシーズン再開とともに復帰を果たしたものの、母国ボスニアで新型コロナウイルスに感染して入院していた祖母が他界。訃報を聞いた直後はプレーすることをためらいながらも、チームのためにと奮起し、グリズリーズとのプレーイン・トーナメントを制する原動力となった。昨シーズンは健康安全プロトコルによりトレーニングキャンプ合流が遅れたことを始め、ケガの影響もあって37試合の出場に留まり、思うような結果を残せなかった。

それでもヌルキッチは、高いモチベーションを持って新シーズン開幕へ向けた準備を進めている。『The Athletic』の取材に応じた彼は、ブレイザーズの新たな指揮官に就任したチャウンシー・ビラップスとの面談が大きな刺激になったと語る。

「デイム(デイミアン・リラード)と出会ったことを除けば、ビラップスの就任は僕の人生で起こった最高の出来事だ。彼は思ったことを正直に伝えてくれる。僕にとっても、そのほうがありがたい」

ケガが続いたことでブレイザーズの構想に含まれているのか不安もあったというヌルキッチだったが、「チャウンシーがヘッドコーチになり、彼とアシスタントのロイ・ロジャーズと話をしたら、何の不安もなくなった。僕はブレイザーズのために力を尽くす」と吹っ切れた様子。ヌルキッチは今シーズンが契約最終年で、来年のオフにフリーエージェントになる。一般的に、契約最終年を迎える選手は、次の大型契約を勝ち取るため、過去最高のパフォーマンスを見せる傾向がある。ヌルキッチも「自分の将来を初めて自分で決められる」と今シーズンへの意気込みを語ったが、彼を突き動かしているのは金ではなくビラップスだ。

「契約最終年に結果を残す選手は多いから楽しみだけど、僕にとっては、チャウンシーの存在ほどバスケットボールに集中して取り組める要因ではないね。彼の言葉を聞き、彼がやろうとしているバスケを知ったら、この上なくモチベーションが高まるんだ」

ビラップスのバスケはいまだ明らかになっていない。それでも選手はチームから求められたと感じた時に最大限の力を発揮するものだし、ヌルキッチはすでにその状態にあるようだ。

「就任以来、チャウンシーとは頻繁に話している。彼は僕を信頼してくれている。こういう気持ちになったのは、キャリアを通じて初めてのことだ。ブレイザーズにトレードされた時にも似たようなフィーリングはあったけれど、今の方が強い。信頼してもらえて、チームがやろうとしているプレー、それに必要とされている実感もあって、最高の気分だね」

ヌルキッチはすでにポートランドに戻り、今月末から始まるトレーニングキャンプに向けて動き出している。ビラップスの下でキャリアイヤーを送れるかどうかに注目したい。