バスケットボール

決勝進出の両校も試合を辞退して『4校優勝』で大会に幕

8月21日に大会最終日を迎えた全中(全国中学校バスケットボール大会)だが、男子は最終日に予定されていた準決勝と決勝を消化することができなかった。準決勝では八千代松陰(千葉)と白新(新潟)、本山南(兵庫)と西福岡(福岡)の4チームが戦う予定だったが、八千代松陰と本山南が新型コロナウイルスの影響により棄権を余儀なくされた。これは前日までに行われた試合の対戦チームから新型コロナウイルスの感染が疑われる症状が出たためだ。

こうして準決勝の2試合がいずれも成立しなくなり、白新と西福岡が不戦勝で決勝へ。しかし両校ともに棄権を選択し、決勝も行われなかった。その後、4校の優勝という結果が伝えられた。

西福岡の関係者は、この日の出来事をこう振り返る。

「第1試合の開始時間である9時20分が過ぎても連絡がないまま待機していました。そのうちに、正式な通達ではないですが状況が漏れ伝わってくるわけです。西福岡vs本山南だけでなく、もう1試合も成立しそうにない。本山南と八千代松陰は体育館にも入れずバスで待たされている、泣きじゃくっている子もいる、という話も聞こえてきました。そんな子供たちの気持ちを考えると……。正直、不戦勝で決勝に進めるとなれば選手たちに『ラッキー』という気持ちが出てきてもおかしくありません。ですが、相手の気持ちを考えずに喜ぶのはスポーツマンシップに反する、落ち着いて決定を待とう、と伝えました」

「そして、白新の先生と相談しました。残る2チームの選手たちの気持ちを考えると、ここで自分たちが決勝をやって勝っても『やった、優勝だ!』と喜べるのか。最初は試合をやりたい気持ちでしたが、決勝をやるのが正しいのかどうか。試合のできない2チームが納得できる結論はないものかと大会本部に申し出て、再度検討をお願いしました。こうして結果的に4校が棄権という形になりました」

こうして西福岡と白新の棄権を受け、大会本部は4チームの優勝とすることを決定した。

西福岡中

「区大会から始まってここまで来て、優勝できたことが素晴らしかった」

選手たちに試合をしたかったという思いがあったのは間違いない。西福岡の選手たちは、棄権することを伝えられると悔し涙を流したそうだ。ただ、本山南も八千代松陰も自分たちのチームから感染者を出したわけではなく、「自分たちが棄権しなければいけないチームになっていてもおかしくなかった」と諭され、次の言葉を投げ掛けられると状況を受け入れたそうだ。

「今年は全国でいろんな競技のいろんな大会が中止になり、この全中も中止になるかもしれないとずっと言われていた。最終日がこんな形で終わって残念だけど、みんなこの先も高校でもバスケを続ける。その時に、この時のことが良い経験になるかもしれない。区大会から始まってここまで来て、優勝できたことが素晴らしかったと思おう」

振り返れば去年は大会自体が中止となり、選手たちは全中のコートに立つことができなかった。今回は最後までとは行かなくても試合を戦い、優勝チームを決めることができたのは幸いだったとも言える。それでも、スポーツの舞台が新型コロナウイルスに振り回される状況はまだしばらく続きそうだ。