パスカル・シアカム

ドラフト1巡目4位で、同じポジションのスコッティ・バーンズを獲得

カイル・ラウリーを放出したラプターズだが、フレッド・バンブリート、パスカル・シアカム、OG・アヌノビーと優勝経験のある選手が新たな核となるのは明確で、再建ではなく彼らがリーダーとしてステップアップすることで、再び強いチームを作ろうとしている。

その状況でチームで最高のタレントであるパスカル・シアカムの移籍の噂が再三浮上するのは不思議な気もするが、優勝した3シーズン前からパフォーマンスを落としていること、昨シーズンにヘッドコーチのニック・ナースと衝突したこと、そして今年のドラフトで1巡目4位を使い、シアカムと同じプレースタイルのスコッティ・バーンズを獲得したことが理由となっている。直近ではウォリアーズとキングスが彼の獲得に動いていると複数のメディアが報じた。

『The Athletic』はシアカム自身は移籍を望んでおらず、マサイ・ウジリ球団社長がシアカムに「トレードには出さない」と伝えたそうだ。またボビー・ウェブスターGMは「シアカムについて具体的なトレードの話は行われていない。それなのにシアカムのトレードが話題になるのはおかしな話だ」と語っている。

それでも、3年1億500万ドル(約110億円)とラウリーに代わって最も高給取りとなったシアカムだけに、その扱いは慎重にならなければいけない。この契約が中長期的な視野でチーム構築を妨げるのであれば、早めに手を打つ必要がある。昨シーズンのシアカムはアシスト能力こそ伸びて、コートのあらゆる位置からプレーメークできる選手となったが、本来の持ち味であるインサイドでの身体能力を生かしたパワフルなプレー、そして彼を特別な存在とした3ポイントシュートの精度は影を潜めた。

27歳の彼に多くの伸びしろがないと判断すれば、トレードを検討することになる。ウジリはトレードに出さないことを約束したかもしれないが、デマー・デローザンの例がある。チームの核だった彼に「トレードには出さない」と約束しておきながら、ウジリはそれを反故にした。ラプターズに長年貢献してきたデローザンへの酷な仕打ちは批判されたし、彼自身もデローザンを裏切ったことを気に病んだが、その結果としてカワイ・レナードがやって来て、チームは優勝を手にしている。

もっとも、コロナ禍でのシーズンはすべてが特殊で、とりわけラプターズにとってはトロントに戻れずタンパを仮の本拠地として戦う難しさがあった。このシーズンだけでシアカムほどの素材に見切りを付けるのは難しいのも間違いない。スコッティ・バーンズは注目に値するタレントだが、シアカムほどのタレントに育つかどうかは少なくとも1年か2年は見てみる必要がある。ラプターズ首脳陣が本当にシアカムのトレードを検討しているとしても、その判断は非常に難しいものになりそうだ。