八村塁&ラッセル・ウェストブルック

レブロンの負担を軽減するチームメート、という意味では突出した存在

ラッセル・ウェストブルックのレイカーズ移籍。衝撃のトレードの噂が出てから一日が経過し、ウィザーズとレイカーズからは何の発表もないものの、『Southern California News Group』によれば、カイル・クーズマの契約条項に絡んでサラリーキャップで不利にならないよう、両チームは8月6日まではこのトレードを公表できないそうだ。

それでもレブロン・ジェームズが、自分とアンソニー・デイビス、パープル&ゴールドのジャージーを来たウェストブルックが並ぶ画像をInstagramに投稿したこと、またウェストブルックがTwitterに「ワシントンDCのみんなに感謝している。素晴らしい組織の一員になれて良かった」とのメッセージを投稿したことで、公表されたのと同じことになった。

トレードの噂が本当かどうかの次には、レブロンとデイビスにウェストブルックが加わるトリオは機能するのか、が話題となる。レイカーズファンの意見はネガティブなものが多く、キングスのバディ・ヒールドがよりチームに適していたという声もある。ウェストブルックはジャンプシュートの確率が悪く、3ポイントシュートの確率は30%前後。レブロンとデイビスのためのスペースメークには向かない。オンボールで良さを発揮する選手で、それだけに長くボールを持ちたがり、同じタイプのレブロンとは噛み合わないとも見られている。

だが、本当にそうだろうか? カイリー・アービングとケビン・デュラント、ジェームズ・ハーデンのトリオは見事に機能した。ネッツが示したのは、選手間の相性よりもタレント力の総量が大きければ問題は乗り越えられる、ということ。それならば、ネームバリュー的にレブロンとアンソニーと並べて『ビッグ3』と呼ぶには弱いヒールドよりも、ウェストブルックが正しい選択だ。

アウトサイドのシュート力は確かに課題だが、ウェストブルックの長所に目を向ければ、見るべきものは多い。ディフェンスリバウンドを取って一気にスピードアップし、一直線にリムまで到達する圧倒的な躍動感。勝利への執着心。常にエネルギッシュで、得点もリバウンドもアシストもやってのける『ミスター・トリプルダブル』は、レブロンの負担を軽減するチームメートという意味で他に類のない働きができる。

そして何よりレイカーズに必要なのはプレーオフを勝ち抜く力で、相手の長所をとことん消す戦術勝負になった時、それを打ち破る個人技を持つ数少ないプレーヤーの一人がウェストブルックだ。デイビスがレブロンのパートナーである理由は、ただ能力があるからではなく、『レブロンの分まで勝敗の責任を背負う』覚悟があるからだ。どれだけ才能があり、サイズに恵まれた選手でも、その強いメンタルがなければレブロンと並び立つことはできない。ウェストブルックはビッグマッチの『これを決めれば勝てる』というシーンで、躊躇なくアタックに行ける、オールスターの中でも一握りのタフな精神力の持ち主だ。

このトレードが失敗に終わるとしたら、それはプレースタイルが噛み合うかどうかではなく、ウェストブルックがレブロンに遠慮して縮こまったプレーをしてしまう時だ。だが、ウェストブルックのそんな姿は想像できない。レイカーズは今この時点で持つ選択肢の中から、最も力のあるカードを手に入れたのだ。