田中大貴

課題のリバウンドは解決できず

7月11日、バスケットボール男子日本代表は沖縄での強化試合3連戦の最後の相手フィンランドと激突し、71-76で敗れた。

日本はハンガリーに勝った後、ベルギー、フィンランドと2試合続けて競り負けたが、これはあくまで強化試合であり、結果に一喜一憂するべきものではない。問われるべきはその内容であるが、オリンピックで歴史的1勝という壮大な目標を達成するためには、不安を感じざるを得ないのも事実だ。

特に課題となっているのはリバウンドで、ベルギー戦は1-15、フィンランド戦は6-16とオフェンスリバウンドの差が目立った。八村塁が加入することでインサイド陣のリバウンド力は強化できる。ただ、オリンピックの対戦相手スペイン、アルゼンチン、スロベニアのインサイド陣が、ベルギーやフィンランドよりも格上であることも間違いない。

リバウンドで劣勢になることは失点に直結するだけでなく、オフェンス面についても悪影響を及ぼしている。敗れた2試合とも、日本代表はトランジションに持ち込む機会が少なかった。

司令塔の田中大貴は語る。「リバウンドを一発で取れなかったりしている状況が結構多く、それで良い流れでオフェンスに入れていないと思います。しっかり守って良い形でリバウンドが取れれば、そのままの流れでオフェンスに入れます」

また、「ポイントガードとして出る時間帯は、もっと試合の流れを読んでプッシュしていけたらいいと思います。そこは自分にとってこの3試合で感じました」と自身の課題についても言及している。

このリバウンドを改善するのに何が必要となるのか。渡邊雄太はゴール下でのサイズ、フィジカルで劣るのを補うためにチーム全員で取りに行くことが求められると考えている。

「相手がどんどん飛び込んでくるのに対し、一人で身体をぶつけても自分達の方がコンタクトは弱く、背もないです。そこで、ガードも加わって二人で封じ込めに行ったりする。それこそラプターズでは結構やっていて、フレッド(バンフリート)、カイル(ラウリー)はそういう部分で相手のビッグマンを抑えてくれています。味方のビッグマンがゴール下で頑張っても取りきれない部分ではガード、フォワードの選手たちがしっかり中に飛び込んで一緒にボックスアウトすることは大事です」

田中大貴

「塁、雄大とは、まだ一緒に練習もしていないです」

こうした状況でキーマンとなるのは、192cmとポイントガードでは世界を相手にしてもサイズ負けせず、さらにタフなディフェンスに定評のある田中だ。

代表は田中、富樫勇樹、ベンドラメ礼生と3人がポイントガード登録されているが、今回の3試合とも20分以上のプレータイムを記録したのは田中のみ。司令塔の軸となっているのは、田中であることがあらためて実証された。

だからこそ、いよいよ八村塁、馬場雄大が合流する中、渡邊と合わせた海外組をうまくフィットさせ、チームオフェンスを機能させるために田中の舵取りは重要となってくる。田中は馬場とはアルバルク東京で2年一緒にプレーし、八村とも2019年ワールドカップで共に戦っている経験はあるが、それでもオリンピック本番までの短い期間で、最適解を見つけるのは簡単ではない。それは本人も折込済みだ。

「塁、雄大とは、まだ一緒に練習もしていないですし、新たなセットも入っています。彼らがどういう状況なのかも含め、コミュニケーションを取りながらやらないといけないです。個人的に実戦はあと数試合組まれていますけど、それ以外の練習もすごく大事になってくると思います」

日本代表の軸となるのは海外組だろう。それでも、攻守ともに安定感のある田中の役割は、スタッツに出てこない部分も含めて大きなものだとあらためて感じさせられた。そして、男子日本代表の現在地を知れた今回の強化試合3連戦だった。