ザイオン・ウイリアムソン

ザイオンの家族が不満を持っている、との報道が相次ぐ

ザイオン・ウイリアムソンの周囲にいる人々は、ペリカンズに不満を抱いている。『NOLA』に『The Athletic』と複数のメディアが報じたことで、この問題は大きくなりつつある。オフの休暇に入っているザイオン本人の意向は分からないが、彼の家族はペリカンズが勝てないこと、将来の見通しも含めて「ここでプレーすべきではない」と考えているようだ。

ザイオンが半分しかプレーできなかった昨シーズンの成績は30勝42敗。彼がコンディションを取り戻し、戦力を整えて臨んだ今シーズンも31勝41敗と成績はほとんど変わらず、2年連続でプレーオフ進出を逃した。そして今はヘッドコーチのスタン・ヴァン・ガンディを1年で解任してゼロから再出発しようとしている。ブランドン・イングラムはオールスター選手へと成長し、10年に一人の逸材であるザイオンが加わってもなお、チームは勝てていない。

アンソニー・デイビスが愛想を尽かして出ていった時から、チームは本質的に変わっていない。トレードでレイカーズのヤング・コアを譲り受け、ザイオンがいるドラフトの当たり年にロッタリーで1位指名権を引き当てたが、それがチームの強さに繋がらない。

戦力均衡のためのルールが整備されているNBAではあるが、勝てるチームと勝てないチームの溝は大きい。勝利のカルチャーがあるかどうか、そして中長期を視野に入れた巧みなチーム編成ができるかどうかは、チーム成績に大きな差を生み出す。ザイオンの家族はペリカンズにその能力はないと見なし、他のチームに移籍させたがっている、と『The Athletic』は報じた。

しかし、1巡目指名でドラフトされた選手は少なくとも5年間はそのチームに縛り付けられる。ザイオンの家族が、あるいはザイオンが家族を通してペリカンズに圧力を掛けているのは、「自分をトレードで放出しろ」ではなく、「プレーするに見合うチームを作れ」ということだろう。

もっとも、チーム編成の責任を担うデイビッド・グリフィンは、かつてキャバリアーズのGMとしてレブロン・ジェームズの同じような、それでいて何倍も強烈な圧力にさらされてきた男だ。これで急に慌てふためくようなキャリアの浅いフロントではない。それと同時に、ペリカンズを勝てるチームに変えることがどれだけ難しいかも理解しており、若手を育てながらドラフトで良い選手を取っていく過程をもう1年か2年は続けたいはずだ。

だが、「それを待つのは嫌だ」というのがザイオンからのメッセージだろう。スティーブン・アダムズに2年で3400万ドル、エリック・ブレッドソーに2年で3750万ドルの高給を保証した結果として、ザイオンがルーキー契約であるにもかかわらずサラリーキャップに余裕がなく、ロンゾ・ボールやジョシュ・ハートが出ていく可能性がある。この状況がザイオンを憂鬱にさせていても不思議はない。この1年を振り返ってもジュルー・ホリデーのバックスでの活躍ぶりを見れば、彼を簡単に手放したことがいかに馬鹿げていたかが分かる。JJ・レディックをシーズン途中に手放したのも、プレーオフ進出を投げ出す行為だった。

ザイオンのような『超大物』は常に弱小チームからスタートするのがNBAの掟だ。しかし、彼がドラフトにかかる直前に両カンファレンスの最下位にいたニックスとサンズは今シーズンに飛躍を遂げており、自分の不幸を呪っても無理はない。ペリカンズとしては結果を出すことで彼の気持ちを変えるしかない。今オフは、ザイオンの意欲に火が付くようなチーム作りが求められる。