八村塁&スコット・ブルックス

「上手く行かなかったとは言わない。ただ、前に進むべき時なんだ」

ウィザーズは過去5シーズンで指揮を執ったスコット・ブルックスとの契約延長をせず、新ヘッドコーチを探すことを発表した。両者は新契約についての協議を行っていたが、合意には至らなかったと『ESPN』は報じている。

ブルックスは在籍5シーズンで、初年度こそカンファレンスセミファイナルに進んだものの、それ以降はファーストラウンドを突破できず、過去3シーズンは負け越した。タレントを育て上げる手腕には評価があるものの、特にディフェンス戦術の構築や勝つための選手起用といった点では批判されることも多かった。

トミー・シェパードGMはシーズン終了直後の会見でブルックスの契約については触れず「彼はこの困難なシーズンにあって、チームをまとめる意味で素晴らしい仕事をしてくれた」と語っていたが、今回の決定を受けて苦しい胸の内を明かしてもいる。

「個人的には非常に難しい決断だった。スコッティはこれまで仕事をしてきた中でも最も素晴らしい人物であり、親友だ。でもこのビジネスでは能力と結果が求められる。友情より優先しなければならない」

シェパードGMが言うように、ブルックスはユーモアのある人格者であり、個性的なNBAプレーヤーたちを束ねて一つの方向に向かせる能力は非常に高かった。特にこのコロナ禍での2シーズン、ジョン・ウォールのトレード要求はあったものの、健康安全プロトコルでまともに戦えない時期が長く、成績が上がらない中でもチームに不協和音が出なかったのは、ブルックスの統率力と人間性によるものが大きいはずだ。

シェパードGMは言う。「上手く行かなかったとは言わない。ただ、前に進むべき時なんだ。過去のことは変えられない。未来のこと、我々がどこに向かっているかに集中しなければならない」

一つ気になるのがラッセル・ウェストブルックの受け止め方だ。サンダー時代に長く一緒だった2人の結び付きは強く、シーズン終了の会見でウェストブルックは逆転でプレーオフ進出に至ったチームの健闘を評価した上で、ブルックスについても「彼の手腕は疑いようがない。あくまでフロントやオーナーが決めることではあるけど、彼が出ていく理由はどこにも見当たらない」と語っている。

NBAのヘッドコーチは入れ替わりが激しい。ブルックスより在任期間が長いのはスパーズのグレッグ・ポポビッチを始め6人しかいない。ウィザーズがスコット・ブルックスの退任を決めたのと時を同じくして、ペリカンズはスタン・ヴァン・ガンディを1年で解任することを決めた。これでNBAではウィザーズとペリカンズ、トレイルブレイザーズ、セルティックス、マジック、ペイサーズが新たなヘッドコーチを迎えて新シーズンに臨むことになる。