ヤニス・アデトクンボ

ネッツはアービングを失うとともに、シリーズの主導権も失うことに

バックスとネッツによるカンファレンスセミファイナル第4戦は、ホームのバックスが107-96で勝利を収め、これで2連敗からの2連勝で通算成績をイーブンに戻した。

第2クォーター残り6分、ケビン・デュラントがディフェンスの注意を引き付け、ゴール下に空いたスペースに飛び込むカイリー・アービングに絶妙なタイミングでパスを送る。遅れたドリュー・ホリデーがカバーを指示し、ヤニス・アデトクンボが戻るが、アービングはそれより早くジャンプシュートを決めた。しかし、その着地がアデトクンボの足に乗ってしまう。コートに倒れて悶絶した彼はプレーを続けられず、足を引きずりながらロッカールームへと下がった。

この時点で40-44とネッツの4点ビハインド。両チームともに激しいディフェンスで相手に簡単なシュートを打たせない展開で、個人技でこじ開けられるアービングを欠いたことでネッツは苦しくなった。ジェームズ・ハーデンはハムストリング痛での欠場が続いており、ケビン・デュラントに負担は集中した。マークを担当するPJ・タッカーだけでなく、他の選手もデュラントへのディフェンスを強める。デュラントは42分プレーして28得点13リバウンド5アシストと孤軍奮闘を続けたが、他に2桁得点を挙げたのは17分しかプレーしていないアービングだけと、バックスのディフェンスの前に沈黙した。

バックスは2点シュート41本に対して3ポイントシュート47本の試投と、コートに立つすべての選手が積極的に3ポイントシュートを狙っていった。成功率は34.0%と高かったわけではないが、堅実なディフェンスから攻めへの切り替えがスムーズになり、ドライブからのキックアウトをしつこく繰り返すことでネッツをディフェンスで消耗させた。特にデュラントはシュートチェックにリバウンドでの負担が大きく、ここで疲弊させたと言える。

そして、ネッツのキーマンであるデュラントをさらに疲弊させたのはPJ・タッカーのタフなディフェンスだ。このシリーズで常にデュラントをマークし、やられている時間帯も多いが、不屈の闘志でデュラントに立ち向かい続けている。ネッツの指揮官スティーブ・ナッシュは「あれはバスケットボールの範囲を超えている」と、ファウルすれずれのレベルでフィジカルで削りに来るディフェンスに苦言を呈しているが、それがバックスにとってプラスに働いているのは事実だ。

アデトクンボは34得点12リバウンドを記録。3ポイントシュートは5本中1本成功、フリースローは10本中5本成功とシュートタッチは必ずしも良くなかったが、ドライブからのキックアウトでチームオフェンスを作り出し、リムプロテクターとしても存在感を発揮。コートに立っていた間の得失点差+29が、試合への影響力の大きさを表している。

ネッツは最初の2試合でバックスに何もさせず完勝を収め、スウィープでシリーズを突破しそうな勢いがあった。しかし第4戦を落とすとともにアービングを失い、シリーズの主導権も失った。アービングはX線検査で異常は認められなかったものの、中1日でホームに戻って迎える第5戦に出場できるかは微妙なところだ。ハーデンが近く復帰するとの見方もあるが、すでに再発させているだけに判断は慎重にならざるを得ない。

ナッシュは試合後に「偉大なプレーヤーを失った試合で苦戦するのは仕方のないこと。ただ、それを抜きに考えてもウチのプレーはそれほど良いものではなかった。こういう試合はレギュラーシーズン中にも経験しているし、そこでは対処できていた」と語る。

「カイリーの状態は明日また確認したい。今はただ第5戦でプレーできることを願うだけだ。ケビンの負担が大きいのは確かに心配材料で、すべてのポゼッションで彼に頼ってしまう部分がある。これまでやってきたように誰かのケガは他の選手がステップアップして、チームで埋めたい」