ホークス

ルー・ウィリアムズの加入、『一歩引く』ことを覚えたヤング

ホークスは14勝20敗の時点で就任3シーズン目を迎えていたロイド・ピアースを解任。その後、暫定ヘッドコーチとして指揮を執るネイト・マクミランの下で、チームは15勝5敗と素晴らしい戦いぶりを見せている。

指揮官交代からの8連勝は、ヘッドコーチ解任がカンフル剤となったこと、また対戦相手に恵まれた感もあったが、その後も好調をキープできているところを見ると、その勢いは本物だ。ここまで復調できた要因はどこにあるのだろうか。

まずはトレイ・ヤング。これまでホークスのオフェンスを一人で引っ張っていた感のあるヤングは、『一歩引く』ことを覚えた。得点が29.6から25.4へと落ちているが、これは昨シーズンよりシュートアテンプトが約3本減った結果。指揮官交代以後はシュートアテンプトが1桁の試合もしばしば見られるようになった。エースの負担が減ったことの効果は、試合終盤の勝負どころで彼が余力を残していることだ。体格的にディフェンスに難があるヤングを長くコートに立たせて、終盤にアタックに行く力が残っていないとなれば、ネガティブな部分がより多く試合で出ることになる。今はそれが逆になった。

ボグダン・ボグダノビッチの復調も、ヤングが『一歩引く』ことに支えられている。ホークスに来て、ボグダノビッチはスペースでパスを待つようになったが、彼は自ら仕掛けて持ち味を発揮するタイプ。ホークスのプレーメーカーがヤングであることに変わりはないが、自分を起点とするプレーが増えたことでボグダノビッチがリズムをつかみやすくなったのは間違いない。

ラジョン・ロンドとのトレードで加入したルー・ウィリアムズの存在も大きい。クリッパーズにキャリアを捧げるつもりだったルーは、トレードが決まった際に「引退も考えた」と発言したが、加入早々からセカンドユニットのプレーメーカーとして持ち味を発揮している。ピック&ポップで3ポイントシュートを楽に打てるようになったダニーロ・ガリナーリに息を吹き返させ、ルーキーのオニエカ・オコングの身体能力を引き出してもいる。1巡目6位指名を受けたルーキーのオコングは器用さには欠けるが、ピック&ロールからのアタックに強さを見せる選手で、ハンドラー次第で生きる。ルーとのコンビネーションで持ち味を生かすことが、クリント・カペラをベンチで休ませる余裕を作り出してもいる。

カペラはリムプロテクターとしての存在感をより強め、14.1リバウンド、4.7オフェンスリバウンドはともにリーグトップ、2.2ブロックはリーグ3位とスタッツは申し分なく、スクリーンからのダイブを相手にケアさせることで、シューター陣にスペースを与えている。その彼にとって怖いのはスタミナ切れとファウルトラブルで、そのリスクをチームで上手く分散できている。

ルーはディフェンス面ではやや不安を抱えるが、先発を外れてセカンドユニットに戻ったスネルがカバーできている。こうして様々なチーム内の好循環が生まれている。

ケガ人続出がなければ、前半戦にあれほど苦しむことはなかったかもしれない。だが、それがなければマクミランに指揮を託すことも、ルー・ウィリアムズの加入もなかっただろう。追い詰められた場面からのV字回復で、ホークスは大きく羽ばたこうとしている。ホークスが劇的に強くなった要因は一つではない。ケガ人が戻り、チームスタイルと自分の役割に折り合いを付けた選手たちがヤングとカペラの負担をシェアできるようになった。様々な要素が噛み合って今がある。

現在は4位につけているが、今シーズンは東カンファレンスの競争が突如として激化している。上位のシクサーズ、ネッツ、バックスは優勝候補であり、3位バックスと4位ホークスは4.5ゲーム差。一方で5位以下のヒート、ホーネッツ、セルティックス、ニックスまでわずか1.5ゲーム差でひしめいており、余裕はない状況だ。今後さらに化けるか、落ち着くか。ホークスから目が離せそうにない。