カイル・ラウリー

東の首位争いを演じるシクサーズがトレードの有力候補

現地3月25日のトレードデッドラインまでに動く可能性のある、実現すればNBAの勢力図を変えるタレントの一人がカイル・ラウリーだ。このところ地元メディアはラプターズに彼を手放すつもりはないと報じ、ラウリーは「25日は僕の誕生日だ。他に何かあったっけ?」とジョークを飛ばし、「僕ももう30歳になるからな」と冗談を重ねた。しかしチームはキャバリアーズに敗れ、17勝25敗とプレーオフ進出ラインが遠のき、笑えない状況にある。

ラウリーは『チームの顔』で、2年前にNBA初優勝を果たした時の貢献は何物にも代えがたい。球団の誰もがラウリーを愛し、その貢献を尊重しているが、感情抜きに考えればどうなるか。実際には今週、30歳ではなく35歳になり、シーズン終了後にはフリーエージェントとなる選手をどう扱えばいいのか。

今もラウリーは年齢による衰えを感じさせないプレーを見せているが、35歳の選手に長期契約は考えづらい。来シーズン以降のラプターズはパスカル・シアカム、フレッド・バンブリート、OG・アヌノビーが核となり、ラウリーに多くを頼るわけではない。ここでラウリーをトレードする決断を下しても、優勝争いから離れるのは今シーズンだけで済む。むしろ、来シーズンからの再スタートに向けた戦力再編に、ラウリーのトレードはプラスに働く。

ラウリーはまだ高いレベルのプレーができるうちに2回目の優勝を追いかけ、ラプターズは次の世代のチームに必要な戦力か指名権を得る。ラウリーへの敬意はあってしかるべきだが、勝率5割に達する気配のない今のラプターズには余裕がない。

ラウリー獲得に強い意欲を持っているであろうチームの中でも、トレードを成立に至る現実味が最もあるのはセブンティシクサーズだ。『ビッグ3』を擁するネッツと東カンファレンスの首位争いを演じるシクサーズは、プレーオフでもネッツとぶつかることになりそうだ。試合を決める個人能力が問われるプレーオフを考えれば、ジョエル・エンビードにベン・シモンズに続く『3人目のスター選手』を獲得しない限り、ネッツを上回るのは難しい。ケビン・デュラントが長期欠場中のネッツも同じだが、シクサーズも現在はエンビードを欠いており、主力の誰かが万全でない時の『保険』も必要となる。昨シーズンのプレーオフ、シクサーズはまさにそれが原因で早期敗退となった。

シクサーズが出す交換要員はダニー・グリーン。さらにもう1人となればニック・ナース好みのディフェンスができるマティース・サイブルが考えられる。ラプターズの目線で見れば、それでラウリーを手放すのは割に合わない気がするかもしれないが、グリーンは不良債権ではなく優勝チームが欲しがる戦力で、さらなるトレードをまとめるのは難しくないだろう。年俸3000万ドルのラウリーには手が出なくても、その半分のグリーンを欲しがる上位チームは多い。

それだけのものが手に入るのであれば、ラプターズとしてはトレードを考えるのではないか。いや、感情抜きのビジネスとしてラウリーのトレードに踏み切らなければならないのではないか。果たして、ラウリーの35歳の誕生日に何が起こるのか。ラプターズは決断を迫られている。