トレイ・ヤング

8連勝で東カンファレンスの5位まで浮上

成績が振るわないことからヘッドコーチ交代に踏み切ったホークスですが、ネイト・マクミランを新ヘッドコーチに迎えてからは負けなしの8連勝となり、22勝20敗と勝率5割を上回りました。8連勝中には主力が欠場したラプターズ、レブロン・ジェームスがケガをしたレイカーズ、あとは勝率5割以下のチームとの対戦が続いたので、対戦相手との巡り合わせも大きいですが、一気に東カンファレンス5位まで浮上して注目を集めています。

連勝の最大の要因はケガ人が復帰して、分厚い戦力で戦えるようになったことにあり、トレイ・ヤングを除く選手のプレータイムは30分以下に抑えられています。過密日程の中でこれは大きなアドバンテージで、試合終了までエネルギッシュなプレーを続け、また集中力も途切れさせることなく勝ちきるようになりました。

加えて昨シーズンまで堅守のペイサーズを率いていたマクミランらしく、次第にディフェンスへの意識が高まっています。平均113点あった失点は、ここ8試合は平均100点を下回っており、特にトランジションを減らすことで安定感ある戦い方に変化してきました。若手が多くオフェンス志向だったことで、個人の判断で打ってしまいカウンターアタックを食らうことが多かったのが、オフェンスの終わり方が良くなったことで、ディフェンスへの切り替えもスムーズになりました。

また、ディフェンス力に定評のあるトニー・スネルが、相手エースに張り付く役割で重用されるようになりました。ウイングながらフットワークの良いスネルは、クイックネスに優れるガード相手にも守ることができ、抜かれても2人で平均3.4ブロックを誇るクリント・カペラとジョン・コリンズのリムプロテクトがあるため、積極的にプレッシャーを掛けています。またスネルは3ポイント成功率が57%とリーグで最も確実なシューターでもあり、ラプターズ戦では逆転ブザービーターで勝利を引き寄せました。ディフェンスのキーマンとしてだけでなく、オフェンスでもホークスのパスゲームでキーマンになっています。

ホークスのディフェンスが悪かった最大の理由は、ヤングが弱点になっていることでした。チーム全体のディフェンス意識が高まる中で、ヤングもディフェンスにエネルギーを注いでいますが、もともとヤングの問題はサイズとフィジカルにあり、ヘッドコーチ交代で改善するものではありません。

この問題についてはチーム全体が頻繁なオフボールスイッチで『ヤングを隠す』ことで、試合を重ねるごとに改善しています。相手エースやビッグマンとのマッチアップにしないことはもちろん、できるだけボールと逆サイドにいくように周囲が常にヤングのポジショニングを気にするチーム戦術を徹底してきました。そのためヤングがマークマンに打たれたフィールドゴールは2本近く減り、弱点が目立たなくなっています。

8連勝という結果は出来すぎではあるものの、ディフェンスを優先する選手起用で勝ち切れていることは、オフェンス一辺倒だったチームのイメージを大きく変えることになりました。これまではヤングのディープ3ポイントシュートが決まるかどうかで勝敗が左右されるようなチームでしたが、シュートが不調でもロースコアで勝ちきるようになっており、これはプレーオフを見据えた戦い方にシフトしたとも言えます。ペイサーズでのマクミランはディフェンス力がある反面、オフェンスパターンに乏しくプレーオフで勝てませんでしたが、イマジネーション溢れるオフェンスを構築できるヤングやコリンズとの相性は、お互いの弱みを補い合うことに繋がる可能性を秘めています。

トレードデッドラインに向けてコリンズを放出する噂が出ていますが、これだけ好調ならば方針も変更されるかもしれません。ここから西カンファレンスの上位チームと厳しいロードが続きますが、どこまで連勝が続くのか次第でホークスの未来も大きく変わってきます。