ブレイク・グリフィン

アクシデントを乗り越えられるチームに必要な戦力

ブレイク・グリフィンは契約を1年半残してピストンズを離れる。彼がチームから離れてからの2週間でトレードはまとまらず、残る契約をピストンズが買い取る形(バイアウト)で両者は合意に至った。グリフィンは近日中にフリーエージェントとなる。

2009年のNBAドラフト全体1位でクリッパーズに指名されたグリフィンは、リーグ屈指のスター選手へと成長したが、2017年にピストンズにトレードされてからはケガに苦しめられてきた。爆発的な運動能力、特に彼の代名詞である豪快なダンクを可能にする跳躍力は失われ、クリッパーズ時代に結んだスーパーマックス契約に見合う選手ではなくなっていた。契約最終年の来シーズンの年俸は3890万ドル(約41億円)にもなる。この契約を引き受けてトレードに応じるチームが現れなかったのは無理もない。

今シーズンは20試合に出場して平均12.3得点、5.2リバウンドと、スタッツは全盛期から半減している。ただ、昨シーズン途中に膝の手術を行った後、かつてのパフォーマンスを取り戻すために積み重ねた努力は姿はピストンズの誰もが認めるところ。指揮官ドウェイン・ケイシーも「私が出会った中でも最も真剣にバスケに取り組む選手の一人」と称賛を惜しまなかった。身体能力で相手を圧倒し、豪快なダンクを連発する姿は望めないにしても、ハンドラーもできる器用さがあり、スクリーンから様々なオフェンスを作り出す力は計算できる。

彼の望みはNBA優勝を目指して戦うことであり、年俸や契約期間といった条件は大幅に譲歩するだろう。全盛期を過ぎていても経験豊富なパワーフォワードであり、チームリーダーでもある彼を必要とするチームは少なくないはずだ。アンソニー・デイビスがケガをした途端に勝てなくなったレイカーズ、ジェイ・クラウダーの穴が予想以上に大きかったヒート、フロントコートのタレントが不足するウォリアーズ、ルカ・ドンチッチは高値安定でもクリスタプス・ポルジンギスの状態に左右されるマーベリックス、クリッパーズへの帰還……。

その中でも最も有力なのは、カイリー・アービングとケビン・デュラント、ジェームズ・ハーデンを擁するネッツだ。ネッツは『ビッグ3』の力だけで勝つわけではないスタイルを模索している。3人に交互に休養を与えてもチームの総合力を落とさないことで、ポストシーズンに何らかのアクシデントがあっても乗り越えられるチーム作りだ。そのためには、実績のある選手は多ければ多いほどいい。

そのネッツでインサイドを任され奮闘するディアンドレ・ジョーダンは、全盛期を取り戻したかのようなプレーを見せている。スタッツではクリッパーズ時代と比べると大きく見劣りするが、その献身的なプレーはチームに欠かせないもの。同じくかつてクリッパーズで活躍したグリフィンが同じような働きを見せれば、チームの総合力は大きくアップする。

どれだけプレーできるか不透明なグリフィンとの契約は大きな賭けとなるが、これだけの選手を破格の契約で獲得できるチャンスは滅多にない。彼を『優勝のためのラストピース』と見なして獲得するのは、どのチームだろうか。