篠山竜青

「58失点にプライドを持って良い」

3月3日、川崎ブレイブサンダースは水曜ゲームで宇都宮ブレックスと対戦。ともに持ち味の堅守を発揮しロースコアの展開になったが、勝負どころの遂行力で及ばなかった川崎が54-58で敗れた。これで連勝が7でストップしてしまった川崎にとって当然のように敗戦は悔しい結果だが、一方で少なくない収穫が得られた試合でもあった。

先週末の試合前ウォーミングアップで腰を痛めたニック・ファジーカスが欠場する中、第2クォーター中盤にはマティアス・カルファニが負傷退場してしまう。本来なら帰化枠のファジーカスと外国籍2人を同時起用するビッグラインアップをここ一番で使うサイズのアドバンテージを強みとする川崎だが、ライアン・ロシター、ジェフ・ギブス、ジョシュ・スコット、竹内公輔とリーグ随一のインサイド陣を擁する宇都宮相手に残ったビッグマンはジョーダン・ヒース、パブロ・アギラールの2人のみ。後半には外国籍1人起用にせざるを得ない時間帯もあったが、それでも佐藤賢次ヘッドコーチが「リバウンドで互角、ルーズボールの気持ちでも負けていなかったです」と語ったように、ゴール下の肉弾戦で五分に渡りあったのは大きな収穫だった。

この試合で11得点5アシストと攻撃を牽引した篠山竜青はこう振り返る。「今日はニックが出られないことが試合前に分かっていて、その中でどれだけディフェンスの質を高めて、我慢強くやれるのかがポイントだったと思います。58失点に抑えられてチームとして我慢できたところもありました。ただ、個人的には簡単なドライブを何本か許してしまったり、オフェンスに関しては相手のディフェンスが徹底的にスイッチするのに対し、ニック選手がいない中でどう対応するかがスムーズにできなかったです」

さらにキャプテンは、指揮官と同じく「ディフェンスで手応えをつかめた部分はあります」と続ける。「ニックがいない分、『ディフェンスで』という気持ちをみんな持っていました。それに加え、J(ヒース)、マティ(カルファニ)、パブロはすごくディフェンスが良い選手で、ニックがいない中で質の高いディフェンスを継続できるのは、逆に武器になると自負して試合に臨みました。58失点にプライドを持って良いし、もっと自分たちの大きな武器にできるポイントだとあらためて感じました」

篠山竜青

「天皇杯に向けてもっと上げていく感覚は得られた」

言うまでもなくファジーカスは川崎の大黒柱で、絶対的な得点源である。この試合のロースコアもミスマッチを的確に突き、個で打開できるファジーカスの不在が大きく響いたのは間違いない。ただ、ファジーカス抜きの布陣となることでインサイド陣の機動力、アスレチック能力が増し、よりタフな守備ができることも事実だ。だがこれは、川崎にとってファジーカスの使い方を再考しないといけないといったネガティブなものではない。35歳のベテランであるエースの体力回復を図りつつ、激しいディフェンスによって試合の流れを変えられるオプションへの自信を深めることができたのは少なくない意味を持つものだ。

また、篠山は第4クォーターに9得点と追い上げを牽引した自身のパフォーマンスについて語った。「ベンチスタートになってからは、先発の藤井(祐眞)選手がボールハンドラーとして出だしからプレーを作る分、自分が出た時はどちらかというとボールを散らして厚みを出せればいいと意識しながらここ最近は戦っていました。とはいえ、最低限、もっとスコアにかかわらないといけない。そしてニックがいない、途中からマティも出られなくなり、吹っ切れてやれた部分もありました。彼らが帰ってきても今日のような姿勢を崩さずにいたいです。2月に入ってアシストはすごく伸びていたと思いますが、得点では最後の勝負どころで決めきるためにも数を打っていくことを意識していきたい。そういう意味では良いきっかけにできたと思います」

この試合、川崎にとって3位から7位までが団子状態である東地区の上位争いから抜け出すチャンスを逃す黒星となった。ただ、同時にチームの底上げへの確かな道筋も見えたのではないだろうか。

「これから天皇杯に向けてもっと上げていく感覚は得られたと思います」と篠山が語った手応えをより確固たるものとするため、新潟アルビレックスBBを迎える週末のホームゲームは連勝で締めくくり天皇杯へ弾みをつけることが求められる。