ルカ・ドンチッチ

NBAオールスターのスターター選出を巡る議論に奮起?

マーベリックスは開幕から調子が上がらず、1月下旬には6連敗を喫した。しかし、その後は9勝3敗と結果を出している。クリスタプス・ポルジンギスがケガから復帰し、コンスタントにプレーできるようになったことが大きいが、それでも最大の要因はエースのルカ・ドンチッチがこれまで以上のパフォーマンスでチームを牽引していることだ。

2月最後の試合となったネッツ戦で115-98と完勝した時には、ジェームズ・ハーデンが『スペシャル・ワン』との表現でドンチッチを称えた。これにドンチッチは「彼は僕がずっと見てきたプレーヤーだ。そう言ってくれたことに感謝したい」と答えている。

NBAオールスターの投票では、わずかな差でデイミアン・リラードを抑えてドンチッチがスターターに選ばれたことに異論が続出した。この騒ぎを受けてドンチッチは「正直に言えば、僕よりリラードが相応しいと思う」とコメントしている。

投票結果でどちらが上かを語るのはナンセンスだが、ファンにとって格好の議論の対象であることも確かだ。この時、リラードを推す人たちの根拠は「チームを勝たせているから」だった。その時点でマブスは13勝15敗と負け越しており、西の上位に食い込むブレイザーズとは差があった。

ただ、ドンチッチはその時点で「僕よりリラードが相応しい」と認めはしても、選手としての実力で他の誰かに劣るとは思っていない。会見でのコメントは常に優等生のそれだが、コート上で見せる闘志は誰よりも旺盛だし、プライドも高い。昨シーズンの表彰でシーズンMVPの候補に入らなかった時には明らかに怒っており、だからこそMIP賞へのエントリーに対しては無視を決め込んだ。ドンチッチは1年目には新人王に、2年目にはオールNBAのファーストチームに選ばれたが、階段を一歩ずつ上っていくつもりはない。彼は常に『今、勝ちたい』と思っているのだ。

まだ22歳の若さだとしても、順番を待っていたらあっという間に年齢を重ねてしまう。NBA3年目の彼は積み上げた経験や実績ではなく『今』で判断されたがっている。NBAオールスターのスタートを巡る議論は、彼の負けん気に火をつけた。そこからチームは4勝1敗、ブレイザーズがこの間に4連敗を喫したこともあり、両チームは2ゲーム差まで接近している。

ヘッドコーチのリック・カーライルは先日、ドンチッチのメンタリティをマイケル・ジョーダン、レブロン・ジェームズ、ラリー・バード、コービー・ブライアントの名前を挙げて「ルカは彼らと同じだ」とコメントしている。「どんな状況にあっても最大限に集中できる。30年以上バスケを見てきても説明するのは難しいが、試合が接戦になればなるほど、重要な試合であればあるほど、チームが勝つために必要なことに集中して完璧なアシストをしたり、とんでもないシュートを決めたりする。つまりルカは非常に希少な存在なんだ」

これこそがドンチッチが求めている評価であり、それを得るためには努力を惜しまない。まずはヨーロッパで成功を収め、NBAでも高い評価を勝ち取ってもなお努力し続けられる秘訣を問われて、ドンチッチは「僕はバスケットボールが好きすぎて、プレーすることを努力だと思ったことはないよ。毎日毎日、バスケがやりたくてたまらない気持ちで練習場や試合会場に来るんだ」と語っている。彼の成長はまだまだ続くだろう。だが、彼がすべてを勝ち取りたいのは3年後や5年後ではなく『今』なのだ。