ルイス・ギル・トーレス

佐賀バルーナーズは前節にライジングゼファーフクオカに連勝し、その快進撃をなおも続けている。全日程の約6割を消化して、22勝15敗。プロリーグに参戦してまだ2年目、B3からB2に昇格したばかりのチームが西地区の勝率トップを走っているのだから驚きは大きい。マルコス・マタがケガで離脱した1月には6連敗を喫したが、彼の復帰からチームはまた勝ち始めている。最短でのB1昇格が視野に入りつつあるが、指揮官のルイス・トーレスは「試合ごとに」という言葉を繰り返しながら、目の前の課題に集中している。

「目指すのはB1ですが、B2でしっかり戦うことが先」

──チームは初めてのB2でここまで地区首位と結果を残しています。今のチームの出来をどう見ていますか?

ようやくチームとして機能し始めています。これまでに戦った37試合のうち17試合で外国籍選手を1人か2人欠きましたが、それでも我々のコンセプトはチームプレーであり、常に8人から9人の選手がしっかり戦う準備をしています。みんな自分たち個々のことよりチームを優先するフィロソフィを持っていて、ディフェンスがオフェンスより先に来るコンセプトが浸透してきました。

──「個人よりチーム」、「オフェンスよりディフェンス」。よく聞く言葉ですが、コート上で表現するのは簡単ではありません。

練習をどれだけ密度の濃いものにするかが大事です。私はスペイン代表のアシスタントコーチでもありますが、コーチとしての働き方はスペイン代表とここでは全く同じです。B2で1年目、プロとしてもまだ2年目のクラブで、チームとして難しい部分はたくさんありますが、ここまでは期待以上のパフォーマンスができています。ディフェンスでもオフェンスでも、毎日の練習をどれだけ濃いものにできるかが今後のカギになります。このクラブが私を迎え入れてくれ、スペインリーグは私の日本行きを許可してくれました。そうやって環境を整えてもらった中で、チームもこのレベルまで成長できています。

──それでも佐賀は2年目のクラブで、環境的にすごく恵まれているとは思いません。それは問題ではありませんか?

佐賀にはすごく良いプロジェクトがあります。8000人収容の新しいスタジアムができることを含め、環境面でB1に上がるプロジェクトが進められています。もちろん、チームには経験が圧倒的に不足していて、今シーズンに1部に上がるのは本当に難しいことだと思いますが、それでもこのシーズンを最後までしっかり戦い、昇格に挑戦するつもりです。

目指すのはB1ですが、B2でしっかり戦うことが先に来ます。スペインサッカーのアトレティコ・マドリーにチョロ・シメオネ(ディエゴ・シメオネ)という監督がいるのですが、彼がいつも言う「試合ごとに」という言葉を使わせてもらって、いつも目の前の試合に集中するように選手たちには伝えています。我々の目標は毎日ハードワークして、100%の力を出しきること。相手や自分たちにケガ人がいたりすることも含めて試合であって、勝利は多くの要素に左右されます。ただ、自分たちが100%のハードワークをしないことには勝利は見えてきません。今のところ、選手とスタッフの全員がそういう取り組みができていると思っています。

ルイス・ギル・トーレス

「最後まで戦い続けます、目標に対して100%で挑みます」

──バルーナーズをこう変えていきたい、さらには日本のバスケにこんな影響を与えたい、という思いはありますか?

まずは佐賀の選手たちをもっと成長させたい。毎日毎日、少しずつ良い選手になってもらいたい。日本の選手にはスキルがあるし、ハードワークができます。足りないのはプレーの状況判断ですね。どんなシチュエーションでも、その瞬間その瞬間で良い判断ができる。選手たちにその力をつけさせるのが今の私のチャレンジです。

選手個々の成長はチームの成長に繋がります。我々のチームで言えば、特にディフェンス面では日本の他のチームが持っていない、スペイン代表でやっている要素を取り入れています。オフェンスでもボールをシェアして、良いシュートを打てるポジションにいる選手が打つことを目標にしています。

国によってバスケットの要素は違うので、スペインのスタイルが優れていたとしても、そのまま取り入れれば上手く行くわけではありません。あるアイデアがあっても、日本人の選手に合わせて一部を変更しなければ機能しないこともあるし、すべてを変えなければいけないかもしれない。そこはチームの様子を見ながらですね。

そういう意味ではBリーグのコーチたちともコミュニケーションをたくさん取っています。日本に来る時には外国籍のコーチたちに連絡を取りました。ルカ・パヴィチェヴィッチとはミーティングをさせてもらい、フリオ・ラマスとは長い夕食をともにしました。彼らは私に日本のバスケットだけでなく、文化も説明してくれました。他のチームのコーチやGMとも連絡をとって、様々なことを教えてもらっています。

──ここから先、どれぐらい日本にいて、その間に何を成し遂げたいですか?

あと3年ぐらいは日本で働きたいと思っています。日本のバスケットには満足しているし、Bリーグが背負うバスケには将来性があると見ています。東京オリンピックが行われればスペイン代表のアシスタントコーチとして私は参加するでしょう。2023年のワールドカップも日本は共同開催の一角ですから、FIBAのバスケットにおいて中心的な場所になります。もともと私は日本が大好きで、文化も食事も好きです。日本食なら何でも好きですよ。寿司でもラーメンでも(笑)。日本のカルチャーも気に入っています。幸いなことに家族も日本での暮らしを好きと言っているので、まだまだ長い時間をここで過ごしたいと思います。

──それでは最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

我々は間違いなく最後まで戦い続けます、目標に対して100%で挑みます。私はB1に絶対に昇格できるとは約束できませんが、クラブ、スタッフ、選手が一緒になって最大限の努力をすることはお約束します。最後の日、最後の試合まで自分たちの目標達成のために戦います。それは皆さんに佐賀バルーナーズを誇りに思ってもらいたい、との思いもあります。そのために頑張ります。