ハーパージャン・ローレンス・ジュニア

明成に競り負け、福岡第一の3連覇の夢は潰える

「エースとしてチームを勝たせられなくて、本当に悔しいです」

ハーパージャン・ローレンス・ジュニアはそう声を絞り出した。ウインターカップの男子準々決勝、3連覇を目指した福岡第一は、仙台大学附属明成との接戦を61-64で落としていた。

試合は接戦ながら福岡第一がリードする展開。それでも第3クォーターに200cmの留学生プレーヤー、キエキエトピー・アリのファウルトラブルとなり明成に追い上げられていた。山﨑一渉のバスケット・カウントで逆転を許した第3クォーター残り1分、ハーパーのスイッチが入る。ドライブで切った松本宗志からのパスを受けて3ポイントシュートを沈めて再び逆転に成功。ワンパス速攻で早田流星の得点、自らプッシュしてアリの得点を連続アシスト。さらには相手ディフェンスが集中するペイントエリアに強引に自ら仕掛けたハーパーは、シュートをねじ込んだ。

それまでは明成のプレッシャーに押されていたが、クォーターをまたいで攻守のインテンシティを一段階も二段階も引き上げることで、ディフェンスから走る福岡第一のバスケをハーパーが作り出していたのが大きかった。この一連の攻勢を「そこは全部プライドで押し切りました」とハーパーは言う。

その後にアリが5つ目のファウルで退場となったが、その直後は代わりに入ったニャン・アマドゥ・マクターが奮闘。1年生のマクターにアリのようなスキルは望めないが、ゴール下で身体を張ってリバウンドを押さえた。ハーパーは前からプレッシャーをかけて明成ディフェンスの核である一戸啓吾をファウルアウトに追いやる。ここでも吠えたハーパーの活躍で、依然として福岡第一が試合の主導権を握っていた。

ハーパージャン・ローレンス・ジュニア

「エースとして任せてもらった、期待に応えたかった」

流れが変わったのはその直後、強引に仕掛けたハーパーが身体を流しながら放ったシュートの着地で足を痛めてからだ。第3クォーター終盤にもハーパーは接触を受けてコートに倒れ込んでいた。左足を引きずりながら、いつも勝ち気で前向き、コート上で弱音を吐かない男が、苦しそうな表情を隠せずにいた。

「ケガがあったんですけど最後の試合なので気にせず、自分の今の全力を出そうと思ったんですけど、なかなか自分の思うようなプレーができませんでした。もう限界だったんですけど、自分の中学のコーチが今病気をしていて、ここにも来れなくて、自分がボイスメッセージや手紙を送って優勝して恩返しすると言っていたんですけどできなくて、本当に申し訳ないです」

足の踏ん張りが効かなくなったハーパーは、自ら仕掛けるのではなく周りを使って攻めようとするが、これが機能しない。それ以上に前からのプレッシャーディフェンスが弱まり、明成のオフェンスが息を吹き返した。1点ビハインドで迎えたラスト1分、タイムアウトの後にハーパーは自分を奮い立たせて再びアタックに行く。しかし、強引に行ったドライブ、体勢不十分なまま放った3ポイントシュートはいずれも決まらず。3点ビハインドで迎えた最後のポゼッションでは、マクターとのピック&ロールからの展開で早田にコーナースリーのチャンスをお膳立てするも、決まれば同点のこのシュートはリングに嫌われた。

「先生にお前が攻めろと言われて、エースとして任せてもらったので、自分がここで1本決めようと思ったんですけど外してしまって、本当に井手口(孝)先生に申し訳ないです。プレッシャーがあったのは周りに期待されているからだと思っていたので、期待にも応えたいと思ったんですけど、ベスト8で負けてしまって悔しいです」

そう語るハーパーの頬を涙がつたう。負けた直後は茫然自失ながらも泣くことはなく、涙を流す後輩たちを気遣っていたが「我慢していたんですけど、やっぱり悔しくて我慢できなかったです」と涙をこぼした。