Bリーグ

子供たちに「Bリーグの選手になりたい」と思ってもらうために

12月4日、Bリーグは茨城ロボッツと西宮ストークスに対し、規約違反による制裁を科したことを発表した。いずれも外国籍選手が日本入国から14日間の待期期間を取るべきところ、チームの練習に参加していたことが違反と見なされたものである。

最初に問題が発覚したのは茨城だった。9月5日に入国した選手が2週間を待たずして公開練習試合に出場していることが問題ではないかと、リーグ宛てに問い合わせのメールが届いたのがきっかけだ。

リーグ関係者によれば、問い合わせがあったのは10月19日で、10月28日に裁定委員会で茨城への処分が決まっている。外国籍選手の入国に関して連携していたスポーツ庁に報告するとともに、同じようなケースがないか全チームにヒアリングを行ったところ、西宮から違反の申し出があった。西宮は外国籍選手を14日間待機させる旨の行動計画書をリーグに提出していたが、実際はチーム練習に参加させていた。こちらも調査の上、12月2日の裁定委員会で処分が決まり、茨城と合わせて12月4日に発表されている。

14日間の待機要請は、あくまで政府から日本へ入国した人への『要請』で、違反があったとしても行政処分には当たらない。Bリーグの処分としては、今回は『Bリーグ規約第3条、遵守義務第2項』が適用され、両チームは譴責(始末書の提出)という制裁が科された。

この処分は規定に則って決められているが、島田チェアマンは会見で「政府関係者の皆様のご尽力で、特例で緩和処置をしてくださり、リーグ戦が行えている。大変遺憾であり、二クラブには猛省してもらいたい。皆様の信用を裏切ったことは本当に重く責任を感じるし、リーグの代表者して深くお詫びしたい」と話し、今後同様の事案があった場合は、規約を見直をしてでも処分を重くしていくことも検討している。このコロナ禍において『社会的規範の遵守』はこれまで以上に世間から厳しい目で見られていることに、Bリーグとして危機感を持って取り組む必要がある。

これはBリーグの存在意義の話で、ただスポーツの興行をしてエンタテインメントを提供する団体ではなく、地域の人々に「クラブがあって良かった」と、また子供たちには「Bリーグの選手になりたい」と思ってもらうこと。ところが、リーグ、クラブ、選手が『社会的規範の遵守』ができないようであれば、その根底が揺らいでしまう。

茨城のケースでは、クラブとしては当該選手の入国にしても公開練習試合への出場にしても情報をオープンにしており、悪意があったものではないが、問題の認識が甘かったと言わざるを得ない。12月22日には緊急で実行委員会を開催し、クラブ代表者にあらためてことの重大性を説明するとともに、リーグとしては処分を重くすることで『社会的規範の遵守』への意識をこれまで以上に高めてもらうことを検討している。またもう一つが研修と啓発を地道に積み重ねていくことで、年明けには全選手を対象にしたeラーニングによる研修を行う。

問題は新型コロナウイルスの対応に限らない。昨年には複数のクラブで明るみになったパワハラの問題は、より根が深いと言える。Bリーグは先日、『暴力・暴言・ハラスメント 追放プロジェクト』を設立した。通報相談窓口が新設されたことで、相談段階の問い合わせが入っているそうだ。立て続けにパワハラ問題が明るみに出た中で、暴力を振るったり恫喝するようなステレオタイプな行為はなくなっているだろうが、そこには至らない行為の中で、どこからをパワハラと見なすかの線引きは難しい。そのためBリーグでは、他競技のパワハラ問題を手掛けた実績のある弁護士に加わってもらい、通報や相談に対しては両者の意見をフラットに聞いて対応していくとのこと。

こうした一つひとつの積み重ねが、まだスタートして5年のBリーグの信用を築いていくことになる。もともと様々な問題を抱えていたバスケ界を少しずつ良いものへと変革していく。これもまたBリーグの一つのチャレンジだ。