谷口歩&葉山隆誠

中部大学第一は新型コロナウイルスの影響を大きく受けた。愛知県は感染者数が多く、自粛期間を終えた後も練習を何度も中断せざるを得なかったし、県外との強豪チームとの遠征も11月下旬まで解禁されなかった。愛知県予選を免除されてウインターカップ出場権を得たが、それは実戦経験を積めないマイナス要素も抱えていた。それでもキャプテンの葉山隆誠、2年生ながら去年から試合に出ている谷口歩を始め、選手たちは不安を払拭して、間もなく始まる今年の集大成の大会、ウインターカップに集中している。決勝で敗れた2年前のリベンジを誓う葉山、そんな3年生を決勝に連れていきたいと語る谷口。上下関係ではなく信頼関係を築く中部大学第一のキーマンに、ウインターカップへの思いを聞いた。

「しっかり中部第一のバスケをして決勝まで行けるように」

──まずは2人の自己紹介からお願いします。

葉山 浜松学院中学出身の葉山隆誠です。中学の時に全中に出て、高校でアンダーにも入らせてもらえました。外のシュートが得意で、高校の練習試合では1試合で最高8本決めたことがあります。

谷口 西福岡中学出身の谷口歩です。得意なプレーは、自分ではそう思わないのですが周りからは速いと言われるので、スピードを生かしたドライブで切って、葉山さんとかノーマークのシューターを見つけてパスしたり、ドライブでそのまま行くプレーです。

──谷口選手から見た、葉山キャプテンの良いところと、もうちょっと頑張れよってところを教えてください。

谷口 あまり表に出さないんですけど、意外と負けん気が強くて、スイッチが入ると熱くなる男です。プレーの面では本当に大事な場面でシュートを決めてくれるので助かります。頑張ってほしいのは、他人のせいにしないことですね。

葉山 僕はもともとチームをまとめる側じゃないんです(笑)。むしろチームでふざけていて、まとめる人の後を付いていく感じなんです。でも3年になってキャプテンをやらせてもらって、まとめる側の考えを持つように意識するようになりました。

──谷口選手の良いところ、もうちょっと頑張ってほしいところはどこですか?

葉山 谷口の良いところは、スイッチが入るとすごく努力家なところ。プレー面ではスピードがあって結構ドライブも行けるので、自分の武器を生かしてプレーしているのが良いですね。ダメなのは自己中心的なプレーになる時があること。そういう時に落ち着いてしっかり周りを見て、人に合わせてプレーすればもっと良くなると思います。

谷口 本当にその通りで、中学までは自由にノビノビやっていました。高校に入って厳しく細かく指摘してもらうようになりました。指摘されてイライラすることもあるし、それが顔に出てしまうこともあるんですけど、あとで言われたことを振り返ってありがたみを感じています。指摘されない選手もいるから、言ってもらえる自分は幸せ者ですよね。小学校からの癖もあるのでなかなか改善できず、直せばもっと良い選手になれると思うんですけど、そこの階段のもう一段を登るのに苦労して今に至る感じです。

──葉山選手はすごく負けん気が強いと聞きました。

葉山 小さい時から負けず嫌いで欲張りだったし、勝負事だったら何でも勝ちたい性格でした。それで中学校も強いチームに行きたいと思い、浜松学院中学を選びました。高校も強いところに行きたくて、中部第一を選びました。

谷口歩&葉山隆誠

「練習の質を上げて、ウインターカップで出せれば大丈夫」

──常田健コーチに話を聞いたのですが、中部大学第一は他のチーム以上にコロナの影響が大きかったそうですね。

葉山 緊急事態宣言が出て練習ができない時は、いざ大会ができるとなったときに準備ができていないといけないと考えて、自主的に走ったり、自重でできるトレーニングをしたり、自分でできることはなるべくやっていました。今はちょくちょく練習試合に入れてもらってその少ない練習試合で自分たちが練習してきたことをどれだけやれるかとか、そういうところに着目して質の良い練習をして、それをしっかり試合で出せるようにやっています。

谷口 自粛期間中、僕は福岡に帰ったんですけど、本当にどこの体育館も使えなくてずっとバスケができませんでした。だから学校に戻って体育館でシュートを打てることのありがたみがすごく分かりました。他県の予選をライブ中継で見ていると、正直ちょっと不安な気持ちになりました。特に福岡第一と大濠の試合を見ると、公式戦に慣れているのは大きいと思います。でも葉山さんが言った通り、僕たちはそれだけ練習の数が多いので、そこで質を上げてウインターカップの大きな舞台で練習してきたことを出せれば大丈夫だと思います。

──11月下旬から対外試合を再開させて、今はウインターカップに向けて追い込みの時期です。チームの出来はいかがですか?

葉山 試合ができてうれしかったです。県外の強いチームと試合をして、自分たちが今どのぐらいのレベルにいるのかが分かったし、課題もたくさん見つかりました。最近はアクションディフェンスをやるよう言われていて、リアクションで後手後手になるのではなく、自分たちから攻めのディフェンスをするよう意識しているのですが、初めての相手だと全然できなくて、それを改善するためにアクションを増やすということを今やっています。中部第一はディフェンスからのブレイクを中心にやっているので。

──高校バスケ界だとディフェンスからのブレイクで頂点に立つのが福岡第一です。ライバルとして意識する相手だと思いますが、福岡出身の谷口選手にとっては、西福岡中の先輩や同期がそこで活躍しています。そこは意識しますか?

谷口 超えるつもりです。確かにスピードや破壊力は誰が見ても福岡第一や大濠がすごいと思いますが、自分たちは全体的に身長が高いのでスピードでは負けるかもしれないけど、そこは身長でカバーできます。ディフェンスからすれば小さい選手よりも大きい選手に走られた方が嫌だし、そこを突いていけば福岡第一にも負けないブレイクが出せると思っています。

──今回は常田コーチのご指名で2人を取材しているのですが、谷口選手は取材を受けたがっていたと聞きました。

谷口 チーム内で他の選手が取材を受けていると「なんで俺じゃないんだ」と注目されないことに悔しい気持ちがありました。監督が選んだというのは初めて聞いたんですけど、うれしいです(笑)。

葉山 僕は「なんで谷口なんだ?」と思いました(笑)。でも、僕も3年生になってキャプテンになるまでそんなに取材を受けたことはなかったので、取材慣れしてるわけじゃないです。

──2人と話していると、先輩後輩の上下関係を感じません。普通に仲が良い印象ですが、普段からこんな感じですか?

葉山 僕は上下関係よりみんなと仲良くやりたいタイプです。プレー中はカッとなって厳しく言ってしまうこともあるんですけど、それは上下関係とか関係なしにどんどん言っちゃっているだけです。普段は仲良くやっています。

谷口 バスケをやっている時はちょっと怖いというか、すごく言ってきますが、メリハリがちゃんとしています。プライベートになると全然違う感じで、すごく話しかけてくれます。

中部大学第一

「試合に勝つことが、感謝を伝えられる一番の方法」

──勉強とバスケの学校生活を離れたところでの楽しみは何ですか?

葉山 僕はお風呂が大好きなのでシャワーの時間ですね。

谷口 ご飯を食べるところが寮から離れているんですけど、僕は最近サイズアップも兼ねて、ご飯を食べてから寮に帰った後に近くのコンビニでいっぱい買って夜に食べるのにハマっています。僕は結構渋くて魚が好きなんですよ。自分でご飯を炊いて、コンビニで買ったおかずと一緒に食べます。一日に4食か5食か、学校でもちょこちょこ食べてます。

──組み合わせが決まりました。初戦から北陸と当たる厳しい組み合わせです。どんな印象を持ちましたか?

葉山 いきなり強いチームと当たるのは意外でしたが、そこに照準を合わせていかなきゃいけないので気持ちが引き締まりました。目標は日本一ですし、一番意識するのは福岡第一です。僕が1年生の時にウインターカップの決勝で福岡第一に負けて3年生が悔しい思いをしました。僕はずっとベンチでしたけど、練習からすごく頑張っている3年生に勝ってほしかったです。みんな負けてすごくヘコんでいて、僕も悔しかったし、そのリベンジをここでやりたいです。

谷口 僕の目標は福岡勢を倒すことなので、大濠と福岡第一は意識します。去年まで河村勇輝さんとやりたかったけどできなかったので、今年は東山の米須玲音さんとやりたいです。僕が1年生の時にマッチアップしたんですけど、その時は本当に手も足も出ませんでした。次はバチバチできるように頑張りたいです。

──新型コロナウイルスの影響もあって大変な1年を締めくくる大会となります。支えてくれる家族も大変だったと思います。

葉山 僕はここに来ると決めた時に、母から「レギュラーになれなくてもいいから、がむしゃらに3年間頑張ってきな」と背中を押されました。いざ入ると本当に先輩たちのレベルが高くて圧倒されたんですが、1年生からAチームにちょくちょく入れてもらって、それで少しずつ成長できました。母は土日とか空いた時間に食べ物や欲しいものを届けてくれたりして支えてくれているので、本当に感謝しています。

谷口 僕も母には本当に感謝です。自分は母子家庭で、僕は小、中、高とすべて全国レベルの学校に行かせてもらっています。遠くに行けば行くほどお金もかかるのに、気にせずに自分の行きたいところに行けと言ってくれます。お母さんは全然忙しくないよと言うんですけど、夜遅くまで一生懸命働いていることを忘れずに日頃からやるようにしています。試合に勝つことが、感謝を伝えられる一番の方法だと思うので、福岡第一だったり大濠だったり、強いチームに勝って感謝の気持ちを伝えたいです。

──ウインターカップへの意気込み、どんなところを見てほしいかを教えてください。

葉山 個人ではディフェンスと3ポイントシュートを。チームでは5人で守って5人で攻めるところを見てほしいです。

谷口 僕はまだ自分の代でもないですし緊張はしてないですけど、とりあえず今の3年生が大好きなので決勝まで行かせたいです。それは僕の力だけじゃ無理なので、コートに立つ5人がしっかり中部第一のバスケをして決勝まで行けるように頑張ります。