ゴラン・ドラギッチ

34歳の司令塔は、2年3740万ドルで契約延長に合意

ヒートの方針ははっきりしている。昨シーズンのチームを維持し、NBA優勝という目標にもう一度挑むことだ。昨シーズンはファイナルにたどり着いた時点でケガ人続出で、レイカーズと互角に渡り合うことができなかったが、チームの実力そのものには自信がある。できるだけ選手を入れ替えず、もう一度チャレンジするために、フリーエージェント市場では主に再契約に動いた。ゴラン・ドラギッチとマイヤーズ・レナード、そして大ベテランのユドニス・ハズレムがすでに残留を決めている。

ドラギッチにとっても、今回の決断は簡単だった。彼はオンラインで行われた記者会見で「僕の中でヒートに残りたいという気持ちは明らかだったし、家族もそれを望んでいた。だから球団がオファーを出してくれて本当にうれしかった」と話す。

ハードワークを前面に押し出すヒートにおいて、スキルとIQの高いドラギッチがもたらずアクセントは貴重なものとなっていた。それでもすでに34歳のベテランで、チーム内ではジミー・バトラーに次ぐ高給取りでもある。1920万ドル(約21億円)の年俸から低く抑えられた、その先のフリーエージェント戦線も見据えた単年契約を提示されてもおかしくなかったが、ヒートは彼に最大限の敬意を込めて2年で3740万ドル(約40億円)のオファーを出した。

もともとヒートへの忠誠を誓っていたドラギッチは、これで気持ち良く新たなシーズンを迎えられる。それでも、彼が最初に取り組むのはリハビリだ。レイカーズとのファイナル初戦で左足底筋膜断裂の大ケガを負ってから2カ月弱。このケガは完治させるのが難しく、状態を慎重に見ながらコンディションを上げていく必要がある。

「今は痛みもないし、普通に歩くことができる。それでもMRIやいろんな検査をこれからやらなければいけない。ハードな練習をした時に足にどんな反応があるか、その様子を見るしかない」

そう語るドラギッチの言葉からすると、12月からのトレーニングキャンプでフルメニューをこなすのは不可能だろうし、開幕に間に合わない可能性も高いが、これはもともと織り込み済みだ。

チームは新戦力としてエイブリー・ブラッドリーとモーリス・ハークレスを獲得している。彼らについてドラギッチは「これまでに対戦した経験があるから分かるけど、タフなディフェンダーだ」と彼らへの信頼を寄せる。特にブラッドリーは、ドラギッチがコンディションを戻すまでポイントガードとしてタフに戦ってくれるだろう。

ドラギッチはレギュラーシーズンにはセカンドユニットの司令塔かつ得点源として活躍したが、プレーオフになると相手の対策のその上を行くバスケットIQと勝負強さを買われて先発へと役割を変えた。「僕はどちらでも構わない。コーチが必要とすること、チームが必要とすることをやるつもりだ。コーチは僕がどんな形でチームに貢献できるかちゃんと分かっている。起用法がどうなるにしても問題にはならないよ」とドラギッチは言う。

何が起こるか分からないNBAでは、ヒートもまだ動く可能性はあるが、チームの形はライバルに先んじて出来上がりつつある。新シーズンは東カンファレンスで警戒される存在になることは間違いないが、彼らは自信を持って開幕を迎えられるはずだ。