田臥勇太

40歳の田臥「感謝の気持ちでいっぱいです」

左膝半月板損傷で長期欠場が続いていた宇都宮ブレックスの田臥勇太が、11月14日と15日の広島ドラゴンフライズ戦で昨年11月以来、1年ぶりとなる実戦復帰を果たした。第1戦が3分、第2戦が4分とプレータイムは短く、本人もまだこれから試合勘を取り戻さなければいけない段階ではあるが、短い時間であっても、その『唯一無二の存在感』を示した。

土曜の試合では大量リードの状況で投入されたため、さほど目立ったプレーはなかった。それでも試合後の会見では「本当にたくさんの方の協力のおかげでこうして試合に出ることができて、このような状況の中でバスケができることに感謝の気持ちでいっぱい。ファウル一つでも楽しかったり(笑)、ここからまたチーム全員で戦っていきたい。今日は何より勝てたことがうれしいです」と、いつも以上に柔和な表情で語っていた。

田臥の真価が垣間見えたのは15日の第2戦だ。この試合では立ち上がりから広島の勢いに飲み込まれ、第2クォーター序盤に田臥が投入されてすぐにトーマス・ケネディのジャンプシュートが決まり16-32と大量ビハインドを背負う状況。それでも、この次のポゼッションで田臥がゆっくりとボールを前に運ぶだけで、バタバタしていた宇都宮は落ち着いた。わずか4分の間に12-2のラン。田臥自身はシュートを放っておらず、アシストもなし。それでも田臥が入っただけでチームは本来の姿を取り戻した。

田臥がコートに立っていた間に速攻からパスを呼び込んでの3ポイントシュート、得意のステップでペイントエリアに侵入してのフローターを決めてチームを勢いに乗せた比江島慎は、「僕も待ち望んでいましたし、ファンの人が何より待ち望んでいたと思います。田臥さんが入るだけでチームに落ち着きをもたらしてくれますし、コントロールもしっかりしてくれるので、チームに必要なものをもたらしてくれます」と頼れるキャプテンの復帰を歓迎する。

田臥と長くプレーする渡邉裕規も「良くない状況で出た中でも流石のゲームコントロール。出ると周りのみんなが落ち着く。やっぱり安心感があります」と、その存在感に脱帽した様子だった。

2試合の『慣らし運転』を終えて、リーグは約2週間のブレイクに入る。この間に田臥はコンディションをまた高めるだろうし、この週末に得た実戦の感覚は試合勘を取り戻す助けになるはず。もともと安定感のある宇都宮は、田臥の復帰でさらに盤石となる。長くコートから遠ざかる間に40歳となったが、『田臥勇太は健在』を十分に示すパフォーマンスだった。